東日本大震災では大地震に加えて、津波が発生しました。泥というのは非常に重い言葉です。
さらに台風や豪雨による土砂災害も各地で起きています。泥まみれになった方々へのメッセージ。
美しいという表現が涙を誘います。
何と声をかければいいのか、とまどうまわりの方にとっても、励みの言葉になるでしょう。
やっぱり願いだった
迷子になっている
ゆれるかげ
夜更けのベル
真夜中のワーニングベル
ああ気づけば途切れて
誰かが最後に遺したフレーズ
読まれぬまま 流れるメール
誰かが最後に あれから迷子に
そう 見逃される 無数のトレイル
出典: きみはうつくしい/作詞:七尾旅人 作曲:七尾旅人
早口のラップ調で語られる部分。
災害に遭われた方々のほかに、その大変さをまわりで見守る方々も実は苦しいわけです。
大地震のあとには必ずといっていいほど余震があり、夜中に警報で目を覚ますこともあります。
「きみはうつくしい」が作られた背景によると、七尾旅人さん自身も迷子になっているようです。
大変な出来事は年月が経つと薄らぐのではなく、逆につらさが増すという側面もあるでしょう。
まわりの人々は忘れがちになり、当事者はいつまでもその時から前に進めない状態……。
ただ、まわりの人の中にも当事者のことを思い煩い、行き場がわからなくなる人がいます。
七尾旅人さんもそのひとり。人の命には光と影の両面があり、そのはざまで揺れているようです。
そう思いたい
どこに居たって同じさ
いつまでたっても暗がり
なにをしたって同じで
やり損ね ぎりぎり
気づけばもう引き返せぬ場所
永遠に無駄に見えるトライアル
でも ありえない言葉も
ありにできる
望めない景色も やがて見える
そう思いたいから
出典: きみはうつくしい/作詞:七尾旅人 作曲:七尾旅人
どんなに頑張っても暗いトンネルの中にいるようで、出口の光が見えてこない時があります。
これは人生終わったな……そう感じることもあるでしょう。そこであきらめるか、どうか……。
七尾旅人さんの切実さが伝わってきます。疲れ果て、限界……それでも!と言いたいのでしょう。
無駄なあがきでも、少しずつ積み重ねればいつかは出口にたどり着くはずと思いたいわけです。
残念ながら失われた命がよみがえることはないでしょう。その意味では無駄なのかもしれません。
それでも!という思いが刺さります。
残された人の思い
生きましょう
息することをやめないで
きみがいなけりゃおれは
生きてくことをやめないで
きみがいなけりゃまるで
出典: きみはうつくしい/作詞:七尾旅人 作曲:七尾旅人
生きることをやめないで欲しい……七尾旅人さんは切実に訴えかけています。
確かに「きみはうつくしい」という楽曲には災害という大きなテーマがあります。
ただ、平和な日本で災害に遭わずに暮らしていても、困難に出くわすことはあるでしょう。
そうした方々にとっても、熱く心を揺さぶられるメッセージではないでしょうか。
絶望的な状態の時はまわりが見えなくなるかもしれません。しかし、残された人も大変です。
だからというわけではありませんが、どうして自分がいるのに……と思う人もいるということ。
いつかは小さな変化があったかもしれない、生きているだけで美しいという願いが切ないです。
ずっと見守る
荒れ野…
太陽が ぎらぎらと
この荒れ野を照らす時
ずっと見ていたいさ
ここで 眼の前で
出典: きみはうつくしい/作詞:七尾旅人 作曲:七尾旅人
荒れ野とは災害に遭った土地のことを表しているのでしょう。ずっと見守るという宣言です。
実際に七尾旅人さんは数々の被災地に行かれ、様々なアクションを起こされています。
そんな時に思うのは、どこでも変わらず、太陽が大地を照らしているということなのでしょう。
この太陽のおかげで、少しずつでも荒れ野が健やかな土地へと戻っていくのではないでしょうか。
偉大なる小さな変化というのは、人間の内面でも、地球の大地でも起こり得ると考えられます。
泥まみれの人も土地も美しい……そう思いたい、ということかもしれません。