男の泣けるバラード
北海道では5月に見頃を迎えるライラック。
そんな花をタイトルに掲げる「追憶のライラック」は、ハナレグミの永積タカシとのコラボ曲となっています。
朴訥とした永積タカシの歌声に、東京スカパラダイスオーケストラが抑揚を与えている世界観が秀逸です。
センチメンタルな歌詞を徹底解剖!
男の恋愛は別名保存
鍵をかけてしまいこんでた思い出を
開いて出かけてみたんだ
風に吹かれ歩いて空を見上げたら
新たな未来が巡るよ
返事も出来ない問いかけを僕にしてた
君が終りがどこだか解っていたのか
出典: 追憶のライラック/作詞:谷中淳 作曲:沖祐市
歌詞の冒頭ですでに「君」が思い出の存在=別れた後のことだと分かります。
女の恋愛が上書き保存なら、男の恋愛は別名保存などとよく言いますが……この「僕」も大切に鍵をかけて保存していたようです。
別名保存で鍵までかけて、上書き消去で忘れる気は毛頭なさそうです。
よほど「君」との思い出が恋しいのでしょうか、何度でも思い返してみるくらい一途な想いが感じられます。
男と女のすれ違い
「君が終わりがどこだか解っていたのか」のフレーズから、この別れを切り出したのは「君」側であると解釈できます。
二人はマンネリな関係に陥っていたのでしょうか。
「君」の胸にはいつしかこの恋にピリオドを打つ決心がついていた。
でも一方的な別れ話ではなかったようです。
「僕」に対する問いかけの中身は何だったのでしょう。
女性目線で恋愛を考えてみるといくつか想像できますね。
- いつもそばにいて欲しい
- 私だけを見ていて欲しい
- あなたと気持ちも時間も共有したい
いつだって愛する人の一番でありたいと願うのは女性のサガではないでしょうか。
でも男性にとって愛する女性は必ずしも「一番目」とは限らないのもまた、男性のサガです。
男はカッコつけたい生き物
何度も
「寂しいときだけそばにいてくれ」と
わがままな僕を抱き締めて
優しく笑った君を思い出し
涙を流していた
出典: 追憶のライラック/作詞:谷中淳 作曲:沖祐市
「寂しいときだけそばにいてくれ」のフレーズは、男性ならとても共感できるのではないでしょうか。
一方で女性サイドに言わせれば聞き捨てならない酷いセリフです。
悪気はないけれど……
基本的に男は群れたり連んだりを好みません。
悩み事を抱えてれば黙るし、行き先も言わず出かけたまま平気で帰ってこないし。
別に好き勝手をやっているつもりはないのです。
孤独に過ごす時間を使って、目の前にある課題の突破口を探っているだけなのです。
それは自身のメンタルを回復する時間であり、次へ進む活力を蓄える時間でもあるのです。
自分の失敗を他人に相談したり愚痴ったりなどカッコ悪くて出来たことじゃないのです。
だから恋人を放置しているつもりはありません。
一週間音信不通になったとしても、ちょっと考え事しているだけのつもりなのです……。
それでも「寂しいときだけ」などと何度も言える「僕」はかなり自由奔放な男のようです。
女目線でぶった斬るならロクデナシな「僕」を笑って抱きしめる「君」は相当な包容力のある女性だったのでしょう。
「笑顔」の思い出にすがりながら
時を止めて記憶の中の幸せに
ふたりの全てを浮かべた
これから見つけるどんな美しいものも
敵わないほどの夢を見ていたんだね
出典: 追憶のライラック/作詞:谷中淳 作曲:沖祐市
「君」に去られた「僕」は回顧にひたっています。
奔放人な「僕」にとって、人肌恋しいときに隣にいてくれる「君」は最後に駆け込む安全地帯だったのでしょうか。
それもいつでも無条件で優しさを傾けてくれる女です。
世界一有名な微笑みとされる「モナ・リザ」の絵画を、レオナル・ド・ダヴィンチは死ぬまで手放さなかったと言われています。
あのダ・ヴィンチでさえその微笑みを生涯手放さないのですから、この「僕」だっていつも笑顔でいてくれる「君」と別れるなんて露ほども思っていなかったことでしょう。
「僕」にとって「君」の笑顔はモナ・リザ級に美しかったことを失ってから悟る。
無条件に愛してくれる「君」との別れは自分を全否定されるレベルの出来事だったのかもしれません。