あの日の自分が持っていたもの
今夜ノスタルジアで会おう いつかの少年みたいな笑顔で
全力で駆け出したゴールなきサバイバルゲーム
出典: 今夜、ノスタルジアで/作詞:TAKURO 作曲:TAKURO
「今夜ノスタルジアで会おう」というタイトルだけを聞くと、ノスタルジアというお店や場所で待ち合わせなのかなと思います。
しかし、この曲の中の「ノスタルジア」は自分の記憶の中にある懐かしい思い出です。
いつも過去を振り返って思い出に浸っているばかりでは前に進めない。
でもたまには、がむしゃらに駆け抜けた日々を懐かしむ日があってもいい。
だから今夜はノスタルジアで、童心にかえって無邪気な笑顔を思い出そうという気持ちが表現されています。
「全力で駆け出したゴールなきサバイバルゲーム」はミュージシャンを目指し始めて間もない時代です。
走り出した自分は、右も左もわからなかったけれど、とにかく全力だった。
ゴールも知らぬまま全力で駆け出した過酷なサバイバルゲームをただひたすらに生き延びてきた自分への誇りが感じられます。
全力で駆け抜けた日々
今夜ノスタルジアに酔おう 人情なんて捨ててしまえよ
強気だったお前をこの夜に探している
出典: 今夜、ノスタルジアで/作詞:TAKURO 作曲:TAKURO
主人公のミュージシャンは、普段過去の栄光に浸らないようにしているのかもしれません。
華麗なキャリアに酔ってしまうと向上心が削がれてしまいます。
普段は自分のキャリアを振り返って酔わないようにしているけれど、今夜は「ノスタルジアに酔おう」という気分です。
「人情なんか捨ててしまえよ」というのは、優しさと成功の狭間で揺れた過去の自分への言葉です。
そして今も人情を完全には捨てきれない今の自分自身へのメッセージとも解釈することができます。
何も分からないまま駆け抜けた青春の、若さゆえの無知や強気を懐かしく思い返しています。
その気持ちが「強気だったお前をこの夜に探している」という歌詞で表現されています。
理想と現実
突きつけられる現実
語り合った友の言葉に 疲れ切った男の悔しさが滲んでた
「愛すべき家族はもはや理解不能の他人の集まり」と嘆いてる
出典: 今夜、ノスタルジアで/作詞:TAKURO 作曲:TAKURO
自分も友人も年齢を重ね、成功と引き換えに徐々に若さは失われていきます。
「語り合った友」とは、かつて共に音楽を志した同志なのでしょう。
いつか熱く夢を語り合った友人には、夢破れた悔しさと隠し切れない疲労の色が浮かんでいました。
友人は仕事だけではなく家庭でも居場所を見つけることができず、嘆いています。
若かりし頃描いた理想とはかけ離れた現実を主人公は目の当たりにするのです。
もう戻る事のできない過去
昔に戻って綺麗な夕日に手を振ってみたけれど どこか違って
酔いどれの帰り道 世の残酷さに吐く
出典: 今夜、ノスタルジアで/作詞:TAKURO 作曲:TAKURO
ノスタルジーに浸り、過去の何も知らない故に純粋だった自分に戻り眺める夕日は、あの頃とはどこか違って見える。
懐かしんでももう戻る事のできない、気付けばこんなに遠いところに来てしまったという感傷に浸っています。
友人とお酒を飲み突きつけられた現実は受け入れ難いものでした。
「世の残酷さに吐く」という歌詞は現実を受け入れ消化することができないことの比喩とも考えられます。
過去を抱いて未来へ
戦いは続いていく
今夜ノスタルジアで会おう 冷え切っちまった絆を抱いて
自分じゃ止められない白旗なきロンリーウォー
出典: 今夜、ノスタルジアで/作詞:TAKURO 作曲:TAKURO