マルチに才能を発揮するみゆはん

シンガーソングライター・MV監督・声優・デザイナー・アーティストプロデュース。
どのような肩書きを付けて呼べば良いのか分からないほどマルチな活動をみせるみゆはん。
そんなみゆはんが2021年7月に発表した新曲が”鳴り止まない着信音の中で”。
この曲は2012年からテレ朝系の深夜に放送されているmusicる TVの2021年8月度のEDに採用。
彼女はこの楽曲について、あるメンヘラ女子をモデルにしたと語っています。
また、”メンヘラに対する接し方を変えて欲しいわけではない”。
ただ”こんな人もいるんだよっていうのを知って欲しかった”。
そんなメッセージが込められているそうです。
多彩な彼女の心の内側を素直に描いた作品。
今回は心の中に切り込むようなこの楽曲の歌詞の意味について解説をしていきます。
是非最後までお付き合いください!
天と地の境目とは
私はまだ生きている
身体はとっくに限界なのに
ねぇ、なんで私はまだ生きているの
薬をかき混ぜる水の音
絡みついたものが溶けていく
出典: 鳴り止まない着信音の中で/作詞:みゆはん 作曲:みゆはん
とても静かな歌い出しが特徴です。
歌詞が始まると時折風鈴の音のようなSEが聞こえてきます。
季節は夏なのでしょうか。
つぶやくような歌声が何か訴えたげにも聞こえます。
歌詞に”身体はもう限界”とあるように精神的な辛さがあるのでしょう。
”まだ”生きてるということは心情的には死んでいてもおかしくない、という気持ちが読み取れます。
また薬をかき混ぜていることから、何か薬を服用しているのでしょうか。
水と混ざるという表現から粉薬のようなものと思われます。
薬が水に溶けている様子を自分の状況と重ね合わせているのでしょう。
まるで自分のしがらみも薬と一緒に水に溶けているような、そんな感覚を味わっているのです。
歌詞の中では”絡みついたもの”と表現されていますが、実際彼女に何が絡みついているのでしょうか。
精神的に病んでいる状況からして、良いものとは考えられません。
家族なのか友達なのか。
続きの歌詞でさらに読み取っていきます。
もう疲れたという言葉
雲の中に入っていくような
天と地の境目
起こさないでね もう疲れたから
出典: 鳴り止まない着信音の中で/作詞:みゆはん 作曲:みゆはん
雲の中に入っていく。
天と地の境目とありますが、本来雲は空にあります。
生きている人間からしてみたら、雲の中に入るとはある程度の高度があることを指すでしょう。
しかしここではあえて”境目”という言葉を使っています。
きっと生と死の間という表現を天と地という言葉にいい換えているのです。
そこから考えると雲の中とは恐らく天国のこと。
いま、そこに向かう途中。
つまり境目に自分がいる。
そんな心情なのではないでしょうか。
そしてもう疲れて起こして欲しくない、と続きます。
現在は身体が本当につらい状況なのでしょう。
寝たままでもう起きたくはない。
つまり、彼女は目を閉じたまま、もう開けたいと思っていないのです。
もしからしたら、先ほど服用をほのめかしていた薬とは目を閉じるための薬でしょうか。
そして絡みついているもは彼女を取り巻くすべてのもの。
この世界そのものだったとしたら。
少し怖ささえ感じる歌詞です。
弱く儚い自分
ああ、なんて弱くて儚い生き物だ
もう私の名前は呼ばれない
さよなら 何もかもさよなら
出典: 鳴り止まない着信音の中で/作詞:みゆはん 作曲:みゆはん
曲はサビへと入っていきます。
曲調は静かなままなのに歌声は力強く、聞く人にメッセージを伝えてくるのです。
歌声とは逆にここでは自分を弱く儚い”生き物”と表しています。
自分を客観視、つまり俯瞰(ふかん)的に観察をし憐れんでいる、そんな印象を受けます。
そして気になるのは”もう私の名前は呼ばれない”という部分。
もうおしまい、もうやるしかない。
”もう”とは物事が確定的、決定的になった際に使う言葉です。
つまり彼女の名前を呼ぶ人間はかなりの確率でいないという状況。
そして次に彼女は、何もかもから”さようなら”をしています。
状況としては、自分自身を憐れみながらこの世界にお別れを告げているのです。
こうなるとだれも手を差し伸べることはできないでしょう。
しかし、そうなると気になることが1つだけ出てきます。
”もう”呼ばれないということは、その前は彼女の名前を呼ぶ人がいたということです。
それは一体だれなのでしょうか。
飲み干した全てとは
最後の舞台はカラオケボックス
一人でこもったカラオケボックス
それが私の最後の舞台
2杯目のドリンクを頼んで
あなたに最後の電話をかけた
出典: 鳴り止まない着信音の中で/作詞:みゆはん 作曲:みゆはん