曲は2番に入ります。
歌詞は時系列でいうと1番より少し前の時間に戻っているようです。
カラオケボックスは今や1人で行くことも珍しくありません。
しかし彼女の今の状況や、”こもる”という表現から心を閉ざすための逃げ場としているのでしょう。
そして彼女はそこを”最後の舞台”と表現しています。
この場所で世界とお別れをする。
そう心に決めているのでしょうか。
最後の舞台で彼女は1本の電話をかけます。
電話を掛ける前にドリンクを頼むところをみると1杯目を飲み終えてまだ水分を欲している。
緊張のせいなのか喉が渇いている様子が伺えます。
そしてその電話を”最後”と決めているのです。
ひょっとしたら、彼女は相手が電話に出ないことを知っているのではないでしょうか。
出ないとわかっている相手に電話をかける。
もしかしたら電話に出るかもしれない、そんな少しの望みがあるのでしょうか。
電話を掛けるときの葛藤や緊張感が伝わってくるようです。
響く着信音と遠くなる意識
鳴り止まない着信の中
全てを飲み干した
遠くなる意識の中
最後に聴いた電子音
出典: 鳴り止まない着信音の中で/作詞:みゆはん 作曲:みゆはん
ここで場面は急展開を迎えます。
電話に着信があったのです。
おそらく先ほど最後の電話をかけた相手からの折り返しでしょう。
出るはずがないと思っていた電話。
確かに電話には出なかったかもしれませんが、折り返して来てくれたのです。
しかし時はすでに遅かったのでしょうか。
彼女はすでに”全て”を飲み干し意識が遠くなっているせいで、その着信に答えることはありません。
薄れゆく意識の中で着信の電子音だけがカラオケボックスに響き渡っている。
もう手遅れかもしれません。
しかし、もし彼女の電話に相手が出ていれば。
折り返しの電話に彼女が出てさえいれば状況は変わっていたに違いありません。
そんな思いがあふれてきます。
そして彼女は電話で一体何を話したかったのでしょうか。
最後の舞台と覚悟を決めて来たこの場所で電話をかけている、ということは答えは限られます。
恐らく彼女は電話の相手に助けを求めたかったのではないでしょうか。
本当はおしまいにしたくない。
もしくは純粋に相手の声を聴きたかっただけかもしれません。
しかし自分以外の人間の存在を求めていることに違いはないのです。
きっと部屋に響く着信音を聞きながら、彼女は無念の思いを胸に抱いたことでしょう。
泣いて叫ぶほどの辛さと苦しみのわけ
ああ、泣いて叫んで苦しみ続けても
もう私のことに気づかないなら
さよなら 何もかもさよなら
出典: 鳴り止まない着信音の中で/作詞:みゆはん 作曲:みゆはん
心の中の叫び声に気が付く人はほとんどいません。
なぜなら心の中の声は人の耳には聞こえないからです。
しかし他人に伝わらないだけで自分は泣いています。
そして伝わらないとわかっていても叫び続けるしかありません。
だれか気が付いてくれるのではないか、分かってくれるのではないかと少しの希望を持っています。
中には人の痛みに敏感で助けてくれる人がいるでしょう。
しかし彼女に助けは現れなかった。
彼女が出しているサインにだれも気が付かなかったのでしょう。
希望が絶たれるとそれは絶望に変わります。
”私のことに気づかないなら”彼女の必死の叫び。
それはだれに届くこともなく”何もかも”からさよならをします。
でも本当は相手もサインを出していたかもしれない。
その助けが鳴りやまない着信音だったかもしれません。
でも少し遅すぎたようです。
彼女の意識はすでに遠くなっています。
助けを求める心情
誰かに助けてほしくて
何百回何千回もがいたんだっけな
居場所がないからこれから
探しに行くだけ 素敵なことでしょ?
出典: 鳴り止まない着信音の中で/作詞:みゆはん 作曲:みゆはん
彼女は以前は助けを求めていました。
それこそ”何百回何千回”と求めていたのでしょう。
しかし助けは来なかった。
もしかしたら彼女自身が助けに気が付かなかっただけかもしれません。
それでも彼女は自分の居場所がないと感じてしまった。
もちろん誰のせいでもありません。
居場所がないということを感じてしまっている以上、なかなか他人には介入できないでしょう。
それでも人は助けを求めます。
それが心情というもの。
だからこそわかっていても、もがき続けるのです。
自分にも他の人と同じような居場所、同じような幸せを求めています。
それほど欲張っている訳ではありません。
自分にないから”探しにいくだけ”シンプルな考え方です。
どうやら彼女はこの世界で助けを求め続けた結果、助けられる人はいなかった。
そして他の”世界”に居場所を求めて旅立ったのでしょう。
悲しいけれど、辛さの行きつく先は人それぞれ。
選んではいけない選択肢だけれども、彼女にとってはそれが幸せだったのかもしれません。
もう私のことに気づかない
かつては呼ばれていた名前
なんて弱くて儚い生き物だ
もう私の名前は呼ばれない
さよなら 何もかもさよなら
出典: 鳴り止まない着信音の中で/作詞:みゆはん 作曲:みゆはん
ここで最後にサビが2回続きます。
自分は弱い存在である。
そんな悲しいことをいっています。
彼女はきっとかつては孤独ではなかったのではないでしょうか。
呼ばれていた名前が”もう”呼ばれない。
きっと着信の相手はかつて彼女の名前を呼んでいた。
そんな存在だったのではないでしょうか。
希望が絶望に。
居場所だった場所が居場所でなくなってしまう。
心を痛める出来事が彼女を取り囲んでいたのでしょう。
何もかもからの決別
悲しい曲はついに最後のサビを迎えます。
結局彼女に助けはきませんでした。
彼女は新しい居場所を探しにいくといっています。
しかし、本当にそうなのでしょうか。
きっと彼女は何も望んではいません。
もしかしたら薄れゆく意識の中で聞こえた着信音。
それだけで彼女は満足だったのかもしれません。
相手がだれなのか最後まで分かりませんでしたが、よほど大切な人なのでしょう。
その相手からの着信音が鳴り止まないままに。
かつての幸せだったころを思い出しながら”雲の中”に入っていく彼女。
彼女は今どんな表情をしているのでしょうか。
ついそんな想像をしてしまいます。