村下孝蔵といえば「初恋」
村下孝蔵の「初恋」は、1983年2月25日に発売された、通算5枚目のシングルです。
オリコンチャート最高3位、50万枚を超えるレコード売上を記録した、彼自身最大のヒット曲。村下の代表曲となりました。
この年のアルバム「初恋~浅き夢みし~」でも、堂々1曲目を飾っています。
その後も何度となくテレビで歌われ、発売当時をよく知らないぼくでさえ、この曲は自然に口ずさめます。
出演を果たせなかった「ザ・ベストテン」
1980年代、「ザ・ベストテン」という人気歌番組がありました。
視聴者からのリクエストハガキを元にした独自のチャートと、生放送ならではの奇抜な演出が売り物でした。
「初恋」はこの番組でも10位以内に6週間ランクイン。最高位は7位とこれまた堂々たるものでした。
しかし折悪しく肝炎を発症していた村下は、治療に専念するため出演を自粛。その後も同番組には一度も出演できなかったのです。
美声の職人・村下孝蔵
私の中での村下孝蔵のイメージは、声のきれいな職人さん。
どれだけ声がきれいかは、聴いてもらえばわかります。

「村下孝蔵」といういかつい名前。そしてお世辞にも美男子とは呼べない無骨な風貌。
ところがお名前と見た目に反して、お声は大変お美しい。一級品の美声です。
こんな声なら女子でなくても惚れますって。ぼくは男子ですけど惚れましたもん。
原点はベンチャーズと加山雄三
ところで美声はわかるとして、どうして職人さんなのか?それは村下孝蔵が一流のギタリストだからです。
叙情的なフォークサウンドを得意とした村下ですが、その原点は意外にもエレキギター。
少年時代のあこがれは、テケテケサウンドで一大ブームを巻き起こしたザ・ベンチャーズのエレキギター。
それから永遠の若大将・加山雄三にもあこがれました。
1960年代といえば日本映画の全盛期。若大将映画の劇中歌「夜空の星」の虜になった村下少年。ご両親に買ってもらったエレキギターで、加山雄三なりきりプレイに励むのでした。
フォークギターへの転向
これで若大将のようにスター街道まっしぐらならよかったのですが、人生甘くはないものでとんとん拍子に事は運ばず。村下孝蔵の前半生は流転と変転の連続でした。
ご両親の仕事の都合で九州各地を転々とした村下は高卒で就職。70年代初めに広島へ転居後も職を何度も変えています。
一時はピアノの調律師としても働いていて、こういう裏方的な経歴も職人っぽいですよね。
さて、そのころの広島でスターといえば吉田拓郎。地元が生んだフォークの神様・吉田拓郎。
拓郎のコピーができなければ音楽仲間に入れてもらえない!危機感からエレキギターをフォークギターに持ち替えて、細々と音楽活動を続ける村下でした。
苦労人・村下孝蔵花開く
それでもコツコツ音楽に取り組む姿勢が目に留まり、知人の勧めで受けたオーディションに合格。そこからひと悶着ありながらも、どうにかプロデビューに漕ぎつけます。
デビューシングルは1980年5月の「月あかり」。時に村下孝蔵27歳。遅咲きのプロデビューでした。