映画劇中歌「アイオクリ」
映画「君と100回目の恋」挿入歌
2017年2月4日公開、月川翔監督作品「君と100回目の恋」の挿入歌「アイオクリ」。
当初は劇中に登場するバンド「The STROBOSCORP」名義でメディアを通じて紹介された曲です。
後にmiwaのアルバム「SPLASH☆WORLD」に収録されます。
作詞がmiwaで作曲がandropの内澤崇仁。
ただしともに映画同様に坂口健太郎が一部でボーカルを担当しているのは嬉しいことでしょう。
「君と100回目の恋」のストーリーと緊密に連携した歌詞です。
とはいえ映画をご覧になってない方にも普遍的に響く歌詞に仕上げたのはmiwaの実力の証明。
青春期の恋愛に固有の充足ぶりと、それと裏腹に際立つ幼い愛に切なさを感じる歌詞です。
誰かのことをこれほどに熱心に想えたことはきっと人生の宝物になるでしょう。
miwaの歌声に聴く抜群の訴求力
映画に沿い、映画を超えた歌詞
好きだよって君の言葉 ウソみたいに嬉しくて
まるで違って見える いつも見上げる空も
ギターを教えてくれる指先
伝わるぬくもりその横顔も 特別に変わる
出典: アイオクリ/作詞:miwa 作曲:内澤崇仁
演奏はandropが行っています。
歌い出しからいつものmiwaの歌声が響いてきます。
彼女の特徴的な声がリスナーの奪う要因は何だろうと考えさせられるものです。
声が持つ訴求力が他のアーティストに比べてひとつ抜け出している印象があります。
天分のものでしょうからこれからも素敵な歌を贈り届けてほしいものです。
ここでの「君」は劇中歌であることを考慮すると坂口健太郎が演じた役:長谷川陸。
しかしmiwaはこの曲をもっと後世に遺すことを考えているので歌詞中のドラマには普遍性があります。
「君」が一体誰のことなのかはその時々のリスナーの想像力に委ねられるのです。
理想の男性像を「君」に投影するのが一番いい聴き方かもしれません。
青春期の恋は永遠
「君」からの恋の告白で「私」の世界は一変します。
幸運にも充実した恋愛を経験したことがあるリスナーにはその充足感を思い起こさせるでしょう。
まだまだ恋に恋しているリスナーにとっては理想の恋愛の風景が思い浮かぶはずです。
青春期には恋愛をしておくべきだと強く想います。
その経験が後の人生の宝物になるからです。
青春期の恋愛を持続させて婚姻関係にまで発展させられる人はごく僅か。
多くの恋愛は途中で潰えるものです。
しかし破れた恋だからこその輝きというものがどの恋愛にも多少なりともあるはず。
その輝きが後の人生ではかけがえのない記憶となり往時を偲ばせる物事をまるごと愛せるようになります。
つまり自分の青春期を肯定する根拠が生まれるのです。
肉感に訴える恋愛
ギターを教える姿がインサートされます。
こうしたマンツーマンのレッスンはお互いの指を絡ませて行われるものです。
観念だけでの恋愛とは違い多少なりとも肉感的な要素があります。
肉感的な要素がない恋愛は空虚です。
観念だけで恋愛を捉えることは相手の本当の魂を自分の想像力の範疇の中で殺してしまうような行為。
実際に触れ合うことでしか真実の愛は交歓されません。
観念だけを逞しくした恋愛感情は病んだりもつれたりしがち。
相手のぬくもりをきちんと感じ受け止めて真実の愛を育みたいものです。
ありふれた日々が一転する
毎日、会える嬉しさ
君がいるだけで ありふれた日々も
1分1秒すべて愛しくなる
今この瞬間 時間が止まるなら
抱きしめてぎゅっとぎゅっと離さないで
出典: アイオクリ/作詞:miwa 作曲:内澤崇仁
思えば毎日好きな人に出会えていた職場や学園での恋愛は格別なものでした。
本来なら平凡に過ぎ行く日々。
そこにひとり好きな人がいるだけで日々の風景が一変します。
好きな人と毎日会えることでは共通するとはいえ家庭をもつとこのような新鮮さは少し変化するのです。
家族としての紐帯がしっかりとしている安心感のもとで好きな人と顔を合わせることも格別。
しかしまだそこまで関係が熟していない段階で学園や職場で顔を合わせること。
こうした関係性はまだまだ危うさの遺る間柄だからこそむしろ一途な想いが芽生えるようです。
学園も職場もつまらない日々だとそこは苦役労働のための獄舎になってしまいます。
そんな辛い日々も好きな人がいるだけで一変するのです。
毎日、学園や職場に通う理由や動機がより積極的なものになるでしょう。
青春期固有の恋愛の姿です。
抱き合うことで理解する
ギターのレッスンでの指の重なりからさらに進んでともに抱き合う関係になること。
その瞬間の至福がいつまでも続くことを願うライン。
まだまだ関係性に婚姻などの社会的な契約を伴わない時期はしっかりとお互いの愛を示すことが大事です。
相手を理想や自分の狭い思惟の中でしか捉えられない恋愛は不幸な運命に見舞われがちであります。
相手が少しでも自分の理想から外れたことを示すと途端に裏切られた気分になって醒める恋もあるでしょう。
愛は現実なのだと理解し合うにはともに抱き合うなどのボディ・ランゲージで確かめ合うことが大切です。
理解というのはお互いの観念だけに任されたものではありません。