「凩」のようにすり抜けるのは…

「変わんないね」なんてあなたもでしょう
きっと誰かのせい きっと 誰かのせい
「ずっと笑いあって このままでいよう」とか
何て言葉もさ もうすり抜けてしまうね

出典: 凩/作詞:黒川侑司・古閑翔平 作曲:古閑翔平

男性が去り際に呟いた「変わんないね」の一言。

「変化に気づかない」では女性が口を開く場面で映像が終わりました。

口を開いたのは、このフレーズを呟いたからかもしれませんね。

人の事ばかり言う男性の性格に、ちょっとウンザリしているような印象です。

後半の台詞は、男性がかつて女性に言ったものでしょう。

…とすると、この二人は親しい関係性だったのがうかがえます。

ずっと一緒に過ごしたいと思うくらいの。

それって恋人や友達以上の関係ではないでしょうか。

でも、「変化に気づかない」では久しぶりの再会であることが読み取れました。

男性の言葉は、実際には実行されていないのです。

去ろうとする男性に女性は「またね」と言葉を投げかけました。

それは、かつて男性が言った言葉を期待していたからなのでしょう。

これが二人の間にある隔たりの正体。

男性の言葉を信じて関わりたいと思う女性に対して、男性は無関心でいるのです。

重みのない言葉は「凩」に乗ってすり抜けてしまいました。

心のよりどころがない

飼いならした日々を 呼びかけても
ずっと誰もいない ずっと誰もいなくて
きっと あなたが聞いたら 笑うのかな
何て事ばっかさ 考えちゃうね

出典: 凩/作詞:黒川侑司・古閑翔平 作曲:古閑翔平

男性が去った後、女性は歩きながら考えにふけっている様子です。

何を考えているのでしょう?

この「誰もいない」という表現に注目してみましょう。

かつて親しくしていた二人。

男性と離れ離れになってからの毎日を振り返っても、誰も心のよりどころになるような人がいない。

そんな自分の状態を客観視しているのではないでしょうか。

男性と会わなくなってしまった理由は明示されていません。

しかし現在、男性は女性に関心を向けていないことだけは分かりますね。

女性の思いが一方通行な気がします。

蘇る幸せな記憶

「まだ消えたくないんだ」って
言葉が離れない だけど気づけば僕ら

ありきたりな 言葉の中に隠れてた
泣いていた君の姿も
見ないフリ 痛いフリ
手を伸ばせば 届く距離の
左手すら しまっていた

出典: 凩/作詞:黒川侑司・古閑翔平 作曲:古閑翔平

MVでは男女が楽しそうに花火をする姿が映し出されました。

浴衣を着ていて、一緒にお祭りや花火大会に行ったあとではないかと想像できます。

本当に幸せそうな表情ですね。

女性はこの時の思いをまだ引きずっているのでしょう。

そして、木の葉がスローモーションで落ちるシーンに切り替わり、心のほころびを感じさせます。

サビではどちらかの抱える辛い心情を支え合えなかったことがうかがえますね。

近くにいるのにできてしまった隔たり。

段々とすれ違いを繰り返すうちに、2人の関係性は冷めきってしまったようです。

現実とのギャップ

言葉にすれば 忘れるなら
このまま また明日ね
「さよなら」なんて 言えなくて
ずっと裏返しの日常すら
忘れられないのは
あまりにもどかしい事だ

出典: 凩/作詞:黒川侑司・古閑翔平 作曲:古閑翔平

現実での男性は、女性に無関心な印象を受けました。

しかし、女性は離れていく男性との距離感を上手く受け入れることができていません。

むしろ、現実とは逆の「幸せだった思い出」が忘れられなくて悩んでいます。

ハッキリ「さよなら」と別れを告げることすらできず、自分の中へモヤモヤを溜め込んでいるのでしょう。

辛い現状から抜け出したい

ずっと赤信号のままになっている心

壊れた信号は 赤のまま立ち止まる
「お願い誰か誰か わかってよ」
気がつけば 白線の上
寄り道がてらに 「救ってよ」

出典: 凩/作詞:黒川侑司・古閑翔平 作曲:古閑翔平

この信号は女性の心情の比喩でしょう。

ずっと男性との記憶を引きずって、前へ歩みだせずに立ち尽くしている。

どうしようもない葛藤は、誰かに理解される訳でもなく、ただただ自分の中を巡っています。

白線の上に立っている…ということは、赤信号からわずかに踏み出したということ。

そして、女性はその苦しさから抜け出すために「助け」を求めました。

逆光で女性の表情がハッキリと読み取れませんが、鋭いまなざしをしている気がします。

深い愛情