書き出した言葉を
掻き鳴らした夜の事
私まだ覚えてる
君のその笑い方も
宛てのないこの歌が
錆びついた時には
嘘でもいいから
笑いかけて

出典: Bathroom/作詞:古閑翔平 作曲:古閑翔平

MVには、まばゆい光の中、ユアネスのメンバーの歌う姿が映ります。

書き出した「言葉」は歌詞を、「掻き鳴らした」のはギターでしょうか。

歌を作る、そんな夢を追っていたのかもしれません。

忘れたつもりだったけど、本当はどれもちゃんと覚えています。

あのときの歌を、あなたの笑い方を。

思い出の中錆びついてしまった想いをもう一度あなたの笑顔で溶かしてほしい、そう思ってしまいます。

女性目線をよく分かっている!

作詞をしたのはギターの古閑翔平。

男性ですが、女性目線の歌詞作りが実にうまいです!

特に、思い出すのはあなたの「笑顔」ではなく「笑い方」というところに、多くの女性は共感を覚えるのではないでしょうか。

相手の事をしっかり覚えていなくても、細かいところだけ覚えているということが良くあります。

眉の形だとか指の関節だとか、そんなところ。

もちろん、恋人に限らずですが、女性にはあるあるかもしれません。

そんなところを細やかにすくい上げる歌詞作りだからこそ、より感情移入できるのでしょう。

あなたを見ていた日々

あの日見てた夢を
今もまだ描いてますか?
なんてあなたを思ってしまう
馬鹿らしいでしょう?
もしもまたどこかで
すれ違ったとしても
振り向かないでね
涙が出る

出典: Bathroom/作詞:古閑翔平 作曲:古閑翔平

間奏部分には、彼と過ごしたキラキラした時間が映ります。

アイスを食べてはしゃいだり、たくさん話したり、じゃれ合ったり。

こうして、夢を追う彼を側で見つめていたのかもしれません。

そして歌が始まると、彼女はまた一人、物思いにふけっています。

今は会うこともない彼を思う、そんな独りよがりな問いを「馬鹿でしょ」と自嘲しています。

その横顔には寂し気な笑みすら浮かんでいるよう。

自嘲した後まで、「もしすれ違ったら」なんて考えているのだから。

「対比」の構造が効果的

「一人歩く夜」と「明るい光の中、彼と過ごした時間」。

「笑い方」と「涙が出る」。

「伸ばしていた長い髪」と「もう短くなってしまった髪」。

MVや歌詞に現れる対比の構造が、この切ない歌を「より切なく」仕上げています

さらに音楽もサビ以外を低めの音程でまとめることで、サビの盛り上がりをより大きくしているかのようです。

届く宛てのない呼びかけ「ねぇ」

もしもまたどこかで
すれ違えたとしたら
嘘でもいいから
笑いかけてよ

ねぇ

出典: Bathroom/作詞:古閑翔平 作曲:古閑翔平

それでも、いつか、逢いたくて

サビ部分の繰り返しのようですが、少し違うところがあります。

すれ違ったら、ではなく「すれ違えたら」になっているのです。

ここに、「逢いたい」という想いが込められていると思います。

でも、「ねぇ」と呼びかけても、返事はもう返って来るはずもありません。

届く宛てのない呼びかけは夜の街に溶けました。

そしてまた一人、歩いていくのです。

そして、すれ違う二人

楽曲が終わっても、すぐにMVは終わりません。

そうです。二人はすれ違ってしまうのです。

街の喧騒の中で。

白いTシャツの彼は、数歩進んで、そして振り返ります。

女性の方はまだ気づいていません。

いえ…本当は気づいているのに、気づかないふりをしているのかもしれません

こうして、余韻を残したままMVは終わります。

この後、二人はどうなったのでしょうか。