『暴れだす』ものとは?
「自己否定」の意味
「自己否定」を繰り返す歌詞は一見すると自信を喪失しているように見えます。
しかしトータス松本がそんなネガティブ一本やりの歌を歌うでしょうか?
答えは“否”です。
それではこの「自己否定」は何を意味しているのでしょうか?
『暴れだす』が表現しているのは自己の内面の変革していくプロセスです。
周囲が求める人物像と自身の理想とする生き様の矛盾。
それはメビウスの輪のように交わることのない道です。
そこから抜け出す方法には2つの選択肢があります。
自分を殺して周囲に合わせるという生き方。
もう1つは「自己の変革」を通して周囲の環境を変える道です。
痛みを伴う「自己変革」のプロセス
あぁ 胸が
暴れだす 暴れだす
誰かそばにいて
出典: 暴れだす/作詞:トータス松本 作曲:トータス松本
トータス松本が選んだ道は後者でした。
自身を殺して生きるということは表現者としての「死」を意味するからです。
そのためには「自己の変革」が必要とされます。
周囲の環境を変えるためには、まず自分自身が変わる必要があるのです。
内面を変化させるためには自身の行いを振り返り「自己否定」することを避けることはできません。
「自己の変革」に用いる膨大なエネルギーが伴うのはすさまじいまでの痛みです。
引き裂かれるような痛みによって『暴れだす』感情を抑えることはできません。
『暴れだす』のサビが表現しているのは変化のプロセスで生じる痛みなのです。
溢れだす涙の理由
あぁ あのコはなぜ 笑っているのか
あきれるほどの オレのダメさに
イヤな顔もせず 知らん顔もせず
出典: 暴れだす/作詞:トータス松本 作曲:トータス松本
『暴れだす』が表現しているのが「変革」のプロセスであることの証。
それは歌詞の構成を俯瞰すると明らかになります。
「自己否定」を繰り返すばかりのトータス松本は楽曲のある部分でようやく「自己肯定」できるのです。
その瞬間はいつ現れるのでしょうか?
このパートで主人公は痛みに耐えるために側で寄り添ってくれる人を求めています。
周囲の人たちが温かい目で接してくれるのは彼の変化に気付いているからなのでしょう。
通過儀礼を乗り越えた末に流される歓喜の涙
少ない言葉で はげましてくれる
「泣いたりしたら 苦しくなるよ」
わかっているけど 止まらないのさ
出典: 暴れだす/作詞:トータス松本 作曲:トータス松本
笑顔は最高の良薬だといわれています。
人は笑うことにより脳内に幸福を感じさせてくれるホルモンを発生させることができるのです。
だから周囲の人たちは彼に伝えます。
「笑おうよ」
しかし笑おうとすればするほど彼の瞳からは涙が溢れだしてきます。
ここで流されるのは悲しみではなく歓喜の涙です。
さらりと記述してきましたが彼の変化は周囲の人々をすでに巻き込みつつありました。
「自己の変革」は知らぬ間に着々と進行していたのです。
自分が変わるためには痛みを伴う通過儀礼を通して過去を洗い流す必要がありました。
溢れ出す涙はその事実に心が感応した証拠だったのです。
僕は何のために生きているの?
誰かのために生きていきたいんだ...
もしも あの時 もっと心に余裕があればなぁ
今まで こんなに人を悲しませずにすんだなぁ
人のために出来ることはあっても
人のために生きることができない
出典: 暴れだす/作詞:トータス松本 作曲:トータス松本