卒業しても 白い喫茶店
今までどおりに 会えますねと
君の話はなんだったのと
きかれるまでは 言う気でした

出典: 春なのに/作詞:中島みゆき 作曲:中島みゆき

別れの日と分かっていた今日は、この後の約束を伝えるつもりでいたのでしょう。

卒業をすれば校内や教室で会うことはもうできません。

でも学校の外にある場所なら会うことはできるのです。

選んだのはいつも行っていたお店なのでしょう。

「白い」という色が付いているのが時代を感じさせますね。

あのお店ならいつも通りに「会える」と信じていた彼女。

でもその彼女に、不意打ちのように聞こえた彼の言葉はこれだったのです。

君の話はなんだったのと

出典: 春なのに/作詞:中島みゆき 作曲:中島みゆき

これまでと変わらずに会うことを願う彼女が聞いた彼からの言葉。

返事をどう返していいのかも分からない言葉でした。

また会ってくれるというのは単なる思い込みだったのでしょうか。

差し伸べてくれた手は優しかったけれど、私が心の中で思っていることはまったく知らなかった彼

憧れは一方的なもの、淡い期待さえ打ち砕かれました。

伝えるはずの思いを風景のように描いたあとに、突き付けられた彼の本心と本音から出た言葉。

別れを決める止めとなる歌詞の表現方法は中島みゆきさんならではですね。

受け止めるしかない悲しみを胸に、彼女が彼に望んだのは別れの印でした。

この日を忘れるために

柏原芳恵【春なのに】歌詞の意味を解説!先輩の態度をどう思っている?もう会えないと心に決めた理由に迫るの画像

記念にください ボタンをひとつ
青い空に捨てます

出典: 春なのに/作詞:中島みゆき 作曲:中島みゆき

彼女が望んだのは「ボタン」でした。

制服がブレザーに変わった今は現実味が無いかもしれません。

詰襟タイプの制服の第二ボタンを、好きな人にあげる、もしくはもぎ取られる。

こんな愛情表現・恋愛行動が卒業式に行われていたのです。

誰からも好かれる人気者の彼ですから、争奪戦かもしれませんね。

歌の中の彼女が望んだのも二番目でしょう。ハートの近くにあった二番目は心そのものです。

でも「記念」という心に記すものといっておきながら、それを捨てようとしています。

空に向かって放り上げれば、行先を見失うことだってあるでしょう。

もう手元には戻ってこないかもしれません。

それを望んで空に向けて捨てようとしたのでしょうか。

自分の悲しみも一緒に捨ててしまうことができたら…。

どうしようもない悲しさの理由が形になっている二番目の「ボタン」。

彼の胸元を見つめたまま晴れた空の下で、彼女は独り泣いているのでしょう。

まだ悲しみの中に

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春なのに お別れですか
春なのに 涙がこぼれます
春なのに 春なのに
ため息 またひとつ

記念にください ボタンをひとつ
青い空に捨てます

出典: 春なのに/作詞:中島みゆき 作曲:中島みゆき

別れの寂しさと次への期待が溢れている卒業生たち、彼もその中の1人です。

「春」という光も輝きを増す季節に相応しい涙と笑顔を見せているのでしょう。

でも彼女にとって、光の中の彼は悲しみの対象でしかありません。

彼の心の中にあるのは明日から始まる新しい日々でしょう。

明日になれば訪れることの無い場所には別れを告げました。

その別れを受け止めることができない彼女はまだ彼から目が離せません

彼の姿が滲んで見えているのでしょう。

彼女はまだ、きらめく季節を独り嘆き悲しんでいます。

それでも最後の願いを彼に聞いてもらいたいのでしょう。

悲しみを捨てるための「ボタン」はもう他の人の手に渡ってしまったかもしれません。

引き出しにしまって思い出にすることは望んでいない彼女の心。

残すのではなく忘れるための「記念」は切ないですね。

次の季節のために

止まることはないけれど

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春なのに お別れですか
春なのに 涙がこぼれます

出典: 春なのに/作詞:中島みゆき 作曲:中島みゆき

花開く季節を嘆く歌詞を最後まで繰り返します。

悲しいままでいることも泣いているのも、まだ続いているのでしょう。

独りで泣いているのであれば「ボタン」を手にすることも無かったのでしょうか。

辛い思いが溢れ出した心は、きらめく陽射しも拒んでいます。

それでもいつか季節は変わるのです。

残っているけれど

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