ゆらめく ゆらめく 赤し灯や
水の中じゃなきゃ 息もできない
よわい よわい よわい
数ある中の いのち だけれど
その手の あいに すくわれて
しあわせ なんだよ

出典: きんぎょすくい/作詞:結花乃 作曲:結花乃、nao

サビでは「赤し灯(あかし)」という、韻を踏んだ表現が使われています。

「赤し灯」とは金魚のことでしょう。

赤は派手な色ですが、「きんぎょすくい」の中では小さく儚いロウソクの火のように感じます。

美しく水の中を泳ぐ金魚ですが、水の外では呼吸すらできません。

なんて儚くて、「よわい」生命なのでしょう。

それでもここにいて、精一杯生きている。

そんな金魚の健気さが伝わってきて胸を打たれます。

「きみ」のことを見守っている

【結花乃/きんぎょすくい】「みんなのうた」放送曲の歌詞を解説!金魚目線で描かれた世界を覗いてみない?の画像

へこ帯で 大きな尾ひれを つくりましょう
出会った日のように
 
ガラスに顔を近づけて 今日も 今日も話して
きみが見たもの 聞いてきたこと

出典: きんぎょすくい/作詞:結花乃 作曲:結花乃、nao

「へこ帯」というのは、浴衣などに合わせる帯のひとつです。

子ども用のものには「しぼり」もほどこされており、やわらかくボリューム感があります。

金魚のようにも見えるので「へこ帯」という言葉を選んだのでしょう。

金魚は自慢の「大きな尾ひれ」を手入れしているようです。

きっとそれは、いつでもきれいな姿を見てほしい、と思っているからでしょう。

人間が金魚を見るのと同じように、金魚は人間の「きみ」のことを、金魚鉢の中からいつも見ています

「きみ」が外で「見たもの」や「聞いてきたこと」を共有するのは、金魚の楽しみのひとつなのでしょう。

ゆらめく ゆらめく 赤し灯や
楽しそうに話す きみを見てると
まるで きみのとなりを同じように
泳いでるみたいで
小さな水の中 たくさんのこと 知ったよ

出典: きんぎょすくい/作詞:結花乃 作曲:結花乃、nao

金魚が生きているのは、金魚鉢という狭い空間。

それでも「きみ」と外のことを共有することで、まるで外の世界に生きているかのような気持ちになれます。

もちろんそれは、金魚の幻想にすぎません。

金魚が泳いでいるのは「小さな水の中」なのです。

しかし「きみ」と一緒に生きているこの時間を、金魚は悲観しているようには見えません

むしろ「きみ」といることを楽しんでいるんだ、という金魚の気持ちが、歌詞から伝わってきます。

「きみ」との時間を大切に生きる

楽しげな はなうたに合わせて
赤い帯で ゆらして踊ったの
きみも 笑ってくれた
 
ゆらゆら燃える ロウソクのようだね
消えないように ずっと
大事にしよう 約束

出典: きんぎょすくい/作詞:結花乃 作曲:結花乃、nao

「きみ」が「はなうた」を歌っていると、金魚はそれに合わせて水の中で踊ります。

自慢の赤い尾ひれをゆらし、「きみ」を楽しませようとしているようです。

その姿は、まるで「ロウソク」の火のよう

いつ消えるかもわからない、儚い火。

それでも「きみ」は「大事にしよう」と、金魚に「約束」してくれました。

たとえ短い時間でも、「きみ」との時間を大切にしよう。

「きみ」が笑っていてくれる顔を、少しでも長く見ていたい。

そんな金魚の強い想いが、金魚鉢の向こうから伝わってくるようです。

それでも「しあわせ なんだよ」

ゆらめく ゆらめく 赤し灯や
水の中じゃなきゃ 息もできない
よわい よわい よわい
とても小さい いのち だけれど
その手の あいに すくわれて
しあわせ なんだよ
 
きみに すくわれて
しあわせ なんだよ

出典: きんぎょすくい/作詞:結花乃 作曲:結花乃、nao

ラストでは、サビの歌詞が2回くり返されます。

小さくて「よわい」金魚が、限られた時間を精一杯生きている様子が伝わってくるようです。

金魚鉢の中を泳ぐ金魚はとても美しいものですが、狭い世界に閉じ込められているようにも見えます。

そう思うと、金魚がかわいそうに見えてくることもあるのではないでしょうか。

しかしこの金魚は「しあわせ なんだよ」と言っています。

もしかしたら一生誰にもすくわれることなく終わっていたかもしれない生命。

それでも「きみ」がすくってくれたから、短い時間でも「しあわせ」な気持ちになることができた。

だから金魚は「きみ」にこう語りかけています。「しあわせ なんだよ」と。

「きんぎょすくい」は金魚の目線でつづられた世界。

しかしこの曲の金魚のような気持ちは、人間だって経験することがあるかもしれません

タイトル「きんぎょすくい」が意味すること

タイトルになっている「きんぎょすくい」という言葉。

すべてひらがなで書かれており、優しい気持ちが伝わってきます。

歌詞を見たうえで、「きんぎょすくい」というタイトルについても考えてみましょう。