そうです、この肉体と心が尽きて

人生が死ぬ運命にある時

私はベールに包まれるだろう

喜びと平和の人生に

The earth shall soon dissolve like snow,
The sun forbear to shine;
But God, who called me here below,
Will be forever mine.

出典: アメイジング・グレイス/作詞:ジョン・ニュートン 作曲:不詳

大地はもうすぐ雪のように溶けるだろう

太陽は輝きを控えるが

私を御元に召した神は

永遠に私のものとなる

When we've been there ten thousand years,
Bright shining as the sun,
We've no less days to sing God's praise
Than when we've first begun.

出典: アメイジング・グレイス/作詞:ジョン・ニュートン 作曲:不詳

和訳

私たちが1万年そこにいた時

太陽のように明るく輝いていた

神の賛美を歌うため多くの日々を持った

歌い始めた時よりもなお

 

この歌詞は旧約聖書にあるユダヤの歴史書「歴代誌」の一部をベースにしているとされています。

ニュートンは説教でその一節を読み上げ、讃美歌を歌っていました。

古代ユダヤの王ダビデが神の恵みに感謝する場面と自分の体験を重ね合わせたのかもしれません。

作曲者は誰か

歌うための工夫

本田美奈子.【アメイジング・グレイス】歌詞を和訳して解釈!世界平和を願う…優しい歌声に涙がこぼれる…の画像

ニュートンの歌詞に「'Twas」「'Tis」「We've」「God's」という部分があります。

このうち「God's」は「神の」という意味ですが、残りは英語の短縮形です。

「'Twas」は「It Was」、「'Tis」は「It is」、「We've」は「We have」。

こうした短縮形は今でも英語の歌詞にしばしばみられます。

「It Was」(イット・ワズ)を「'Twas」(トワズ)と発音します。

これは歌詞をメロディに載せる時、字余りにならずスムーズに歌えるようにするため。

つまり「アメイジング・グレイス」の歌詞はメロディを念頭に書かれているのです。

それでは、ニュートンが歌っていた讃美歌は今私たちが耳にするメロディなのでしょうか。

初めはメロディが違っていた

本田美奈子.【アメイジング・グレイス】歌詞を和訳して解釈!世界平和を願う…優しい歌声に涙がこぼれる…の画像

作曲者は不詳。アイルランドかスコットランドの民謡を掛け合わせて作られたとしたり、19世紀に南部アメリカで作られたとするなど、諸説がある。

出典: https://ja.wikipedia.org/wiki/アメイジング・グレイス

ニュートンとクーパーが出版した「オウルニィ讃美歌集」には歌詞しか掲載されていません。

そのため、どのようなメロディを付けて歌っていたか不明です。

日本でも昭和の初めころまで歌は雑誌や本の出版物で発表されていました。

著作権が確立する前なので、気に入った詩があれば自由に曲を付けて歌う。

ある歌集が出版物で広まり、それぞれが曲を付ける、ということが一般的に行われていたのです。

「アメイジング・グレイス」のメロディは誰が作曲したのか。

手掛かりはアメリカにあります。

作曲家ウィリアム・ウォーカー

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楽譜付きは1835年にアメリカで出版された「サザン・ハーモニー(南部の詩)」が最初です。

この歌集を出版したのは作曲家ウィリアム・ウォーカー(1809生~1875没)。

彼はキリスト教プロテスタントの一派バプテスト教会の讃美歌を多く手がけた作曲家。

「アメイジング・グレイス」は「ニューブリテン」のタイトルで「サザン・ハーモニー」に収められています。

その後、ウォーカーの歌集は北部でも出版されてアメリカ全土に広まっていきました。

それでは「アメイジング・グレイス」の作曲者はウォーカーなのか。

Walker is listed as the composer of many of the tunes in The Southern Harmony. However, he acknowledged that in many cases, he borrowed his tunes, probably from the living tradition of folk music that surrounded him.

出典: https://en.wikipedia.org/wiki/William_Walker_(composer)

和訳】 ウォーカーは「サザン・ハーモニー」の楽曲の多くの作曲家として記載されている。

しかし、彼は多くの曲を、おそらく身の回りにあった伝統的な民謡から借用したことを認めた。

to a "great many good airs (which I could not find in any publication, nor in manuscript)" he has written parts and assigned himself as composer.

出典: https://en.wikipedia.org/wiki/William_Walker_(composer)

和訳

どのような出版物や写本にも「とても良いメロディ(節)」を見つけられなかった。

そのため彼は作曲家として自ら一部を書いて割り当てた。