本田美奈子.と「アメイジング・グレイス」
世界的なスタンダード・ナンバー
本田美奈子.の代表曲といえば「アメイジング・グレイス」がまず浮ぶでしょう。
それほど、この曲は彼女と深く結びついています。
彼女が亡くなる直前にリリースされたアルバムのメインタイトルだったこと。
それもあって、本田美奈子.と「アメイジング・グレイス」が人々の記憶に深く刻まれました。
世界中で歌われていたスタンダード・ナンバーのカバー。
原曲は英語の歌詞なので、日本人にとってはその意味よりもメロディに惹かれるでしょう。
しかし、並みのスタンダード・ナンバーではありません。
長い年月を経た歴史の重みがある特別な曲なのです。
それを踏まえて、なぜ本田美奈子.の歌が人々の心を惹きつけてやまないのか。
「アメイジング・グレイス」が本田美奈子.にたどり着くまでの道のりをご紹介します。
「アメイジング・グレイス」の原詩
牧師ジョン・ニュートン
「アメイジング・グレイス」の歌詞を書いたのはイギリス人牧師ジョン・ニュートン(1725生~1807没)。
ニュートンは船乗りから奴隷商人に転じた人物です。
1748年3月9日、彼の奴隷船が嵐で難破寸前に......。
この時ニュートンは生まれて初めて神に祈りを捧げ、幸運にもなんとか沈没を免れます。
この出来事を契機に彼はこれまでの行いを悔い改めて牧師になりました。
「アメイジング・グレイス」の歌詞はその時の気持ちを詩にしたものです。
イギリス各地を伝道で回るようになったニュートンは、詩人ウィリアム・クーパーと出会います。
そして、クーパーと教会の集会で歌う讃美歌を作り始めました。
ニュートンとクーパーは作りためた讃美歌を1779年に「オウルニィ讃美歌集」として出版。
そこに「アメイジング・グレイス」の原型が収められています。
まだ「アメイジング・グレイス」のタイトルはなく、讃美歌の一節でした。
ジョン・ニュートンの歌詞
まずはニュートンの原詩を和訳と合わせてご覧ください。
Amazing grace!(how the sound)
That saved a wretch like me!
I once was lost but now I am found
Was blind, but now I see.
出典: アメイジング・グレイス/作詞:ジョン・ニュートン 作曲:不詳
【和訳】
素晴らしき神の恵みよ!なんと甘美な響きか
私のような恥知らずをお救い下さった!
道を見失っていた私を今見出してくださった
見失っていたものが今は見える
罪深い自分を死の瀬戸際から救ってくれた神への感謝を素直に詩にしていますね。
この曲の核心と言えるでしょう。
本田美奈子.が歌った歌詞とは構成が異なり、この一節だけが取り入れられています。
'Twas grace that taught my heart to fear.
And grace my fears relieved;
How precious did that grace appear,
The hour I first believed.
出典: アメイジング・グレイス/作詞:ジョン・ニュートン 作曲:不詳
Through many dangers, toils and snares.
I have already come;
'Tis grace has brought me safe thus far,
And grace will lead me home.
出典: アメイジング・グレイス/作詞:ジョン・ニュートン 作曲:不詳
【和訳】
幾多の危機、労苦や誘惑を経て
ここまでやってきた
これまで無事にやってこれたのは神の恵み
そして神の恵みがわが家に導いてくれる
The Lord has promised good to me
His word my hope secures;
He will my shield and portion be,
As long as life endures.
出典: アメイジング・グレイス/作詞:ジョン・ニュートン 作曲:不詳
【和訳】
主は私に善を約束された
その言葉は私にとって希望の証し
主は私の盾となり私の一部となる
人生が続く限り
Yea, when this flesh and heart shall fail,
And mortal life shall cease,
I shall possess within the veil,
A life of joy and peace.
出典: アメイジング・グレイス/作詞:ジョン・ニュートン 作曲:不詳