男は地味でモテない学生生活を送ってきたのでしょう。
自分に自信が持てないし、ピアノなんて弾けるワケがありません。
好きな彼女に気持ちを伝えられず、でも気づいてほしくて心のドアをほんの少し開けて相手をうかがいます。
でも自分からアプローチはできなくて、言えなかった言葉は男の心に降り積もって行くのです。
きみと出会えて本当に幸せなのに
もしもピアノが弾けたなら
小さな灯りを一つつけ
きみに聴かせることだろう
人を愛したよろこびや
心が通わぬ悲しみや
おさえきれない情熱や
出典: もしもピアノが弾けたなら/作詞:阿久悠 作曲:坂田晃一
2番も同じように「ピアノが弾けたら君を幸せに出来たのに……」と後悔を歌っています。
あなたを好きになってどんなに嬉しかったか。
思いが通じないことがどれだけ苦しいか。
心に留めておけないあなたへのこの気持ちを伝えたかった。
でもそれは男が、「もしもピアノが弾けたなら」という条件があります。
きみが遠くなる……
だけど ぼくにはピアノがない
きみと夢みることもない
心はいつでも空まわり
聴かせる夢さえ遠ざかる
アア アー アア………
遠ざかる
出典: もしもピアノが弾けたなら/作詞:阿久悠 作曲:坂田晃一
ぼくにはピアノがないから君の隣になんて立てるような人間じゃないんだ。
好きだけど、君のプラスになることは何ひとつ出来ないよ。
ごめんね、こんな僕で。こんな僕が好きになっちゃってごめんね……。
と、終始不器用な男の姿が描かれています。
この曲は玄太のテーマソングとして書かれていましたが、ちょっと違和感を持ちました。
「ピアノがない」ことを言い訳にして男は逃げているだけのように感じてしまうのです。
「ピアノが弾けないからダメなんだ」なんて言ってないで頑張ってみようよ!
そんな風に思ってしまうのです。
いえ、「ピアノ」はあくまで例えなので本当に弾く必要はないのですけどね。
この歌の本当の狙いは……?
シャイな男たちへの応援歌
ドラマの主人公・玄太は、ひたむきに鶴子を思い続け、不器用なりにアプローチしました。
3人の娘がいても思いが変わることはなく、家族になろうと伝えました。
相手の不器用さを受け入れようと思うのは、その人が必死に頑張っているのが伝わったときですよね。
出来ないからってカッコつけてチャレンジもしない人には惹かれたりしません。
ピアノが弾けなくてもピアノと向き合い、腰を下ろし、チャレンジ出来る人。
人の心が動くのはきっとそんな瞬間なのだと思います。男性でも、女性でも。
大切な相手から逃げていたら何も手にすることはできない。
阿久さんは「少しくらい不器用でもいいじゃないか、それで頑張ってみろよ」と背中を押したかったのでしょう。
※上記ジャケットはレコード(EP)盤です。購入の際はご注意ください。
「鳥の詩」も大ヒット!
長女・絵里を演じていた杉田かおるさんが歌う「鳥の詩(うた)」もこのドラマからヒットしました。
こちらも作詞は阿久さんです。
母親を亡くして「妹たちを守らなくては」と必死な絵里。最初は玄太への反発もすごかったですよね。
渡り鳥(妹たち)が降り立つような安らかな場所になりたいと願う絵里の純粋な思いが描かれています。
30代を越えてからはすっかり「毒舌キャラ」になってしまった杉田さん。
でもこの歌はとても素朴で、歌声が心に沁みます。
カバーしているアーティストは?
「桜」の河口恭吾さん
河口恭吾さんが2013年にリリースした「昭和40年男たちのメロディー~君を好きだったあの頃3~」。
このアルバムで「もしもピアノが弾けたなら」をカバーしています。
この曲は1981年(昭和56年)リリースですが、河口さんは「刺激的だった昭和40~50年代半ば」から選曲したそうです。
「もしもピアノが弾けたなら」は1分33秒辺りからです。
でも河口さんの歌が上手すぎて「この人絶対ピアノ弾けるよ……」と思ってしまいました。笑
懐かしい昭和の歌を現代のクリアなサウンドで楽しめる素敵なアルバムです。