忘れられない音楽がある?
頑張ればどこかしら
行けたかなやれたかな
ゴミ箱に放り投げたから
もう忘れた
出典: たまらない夜/作詞:村上貴一 作曲:村上貴一
歌詞に描かれている思いや情景は抽象的なので、いろいろな歌物語をイメージできるでしょう。
「たまらない夜」を聴いている人自身の幸せや諦め、頑張ったことが様々に当てはまります。
そんな歌物語の裏に、キイチさん自身やバンドとしての音楽性の葛藤も隠されていると解釈!
ミュージシャンは常にやりたい音楽と求められる音楽のはざまで揺れ動くものでしょう。
幅広く受け入れられることをまったく考えず、自分の好みの音楽だけを追求すれば……。
そんな選択肢もあったはずです。しかし完全にジコチューにはなれなかったのかもしれません。
だからといって自分らしい音楽をすべて封印したとも言い難いでしょう。
わざわざ思い悩んだ末に「忘れた」と持ち出してきているのは、忘れたい気持ちの表れ。
本当はやりたい音楽を忘れることなんてできないよ!という裏腹な気持ちすら見えてきます。
本当は人目が気になる
自問自答が続く
いつまで夢見て
やりたいことそんなにないだろ
寂しい時だけ
飲み込んでくれたらいいのに
出典: たまらない夜/作詞:村上貴一 作曲:村上貴一
キイチさんにとって、90年代ロックはリアルタイムで聴いた音楽ではないでしょう。
リアルタイムの音楽なら、わざわざ聴こうとしなくても耳に入ってくる機会は多いわけです。
しかし過去の音楽は別。意図的に聴こうとしたり、音楽に詳しい年上の人が身近にいたり……。
音楽好きならルーツをたどるようにいろいろ聴きますが、そうではない人も多いかもしれません。
レアものともいえる90年代ロックを追求するのは夢?でもやりたい音楽は他にない……と。
ただ通好みの音楽であることはわかっているので、自問自答を繰り返しているのでしょう。
寂しい時に好きな音楽を聴くだけでいいのか、それとも好きな音楽を演り続けるのか……。
そんな思いもあるのかもしれません。
嘘だらけ?
おしゃれな服着ても
いびつな心で
人目を気にしてる
思い出せ俺は嘘だらけ
出典: たまらない夜/作詞:村上貴一 作曲:村上貴一
服と心で外面と内面の対比が表現されています。好きな服を着るだけ!という人もいるでしょう。
ただしTPOに合わせて……とか、他人からおしゃれと思われたいから着飾る場合もあるわけです。
歌詞の冒頭でジコチュー礼賛のような表現がありましたが、実際はやはり人目が気になるタイプ。
「嘘」とは外側と内側に矛盾があること。本音と建前……という意味も含まれるかもしれません。
ここも抽象的なので、「たまらない夜」を聴いている人自身もいろいろ考えさせられるでしょう。
引き続き、キイチさんの音楽的な葛藤という解釈もできそうです。
おしゃれなサウンドで着飾っても、歌詞の内容はひねくれている……と。
ホフディラン「スマイル」みたいに、ピリリと皮肉のきいたポップソングが当てはまりそうです。
考えたふりだったの?
なぜ鳩?
考えたふりしてさ
鳩になって群れだした
エサ箱にありつけたなら
もう忘れて
出典: たまらない夜/作詞:村上貴一 作曲:村上貴一
キイチさんがリスペクトする90年代ロックは、外側の音がおしゃれで内側の歌詞がクセモノ。
そのクセの強い部分が「考えたふり」で明かされます。今までの音楽的な葛藤は見事に嘘でした。
やっぱり好きな音楽を忘れることなんてできない!これが本音でしょう。鳩は平和の象徴。
幸せ、つまり好きな音楽を追求するという結論に達したから、これまでの葛藤は忘れて!と。
脱力系のゆる~いサウンドに安心していたら、驚きのストーリー展開が待ち受けていました。