【さらばシベリア鉄道/太田裕美】最初は大瀧詠一が歌うつもりだった？！名曲に隠された秘話を解き明かす！

この動画には大瀧詠一歌唱の「さらばシベリア鉄道」、その後に続いて、作曲時に大瀧が参考にしたというジョン・レイトンの「霧の中のジョニー」が収録されています。

簡単に「パクリ」と言ってしまう人は多いのですが、大瀧はこのように、自らがいいと思った音楽を下敷きに、自分のテイストを加味してリファインするということを手法としてたびたび用いた人でした。

先に紹介しました「A LONG VACATION」に収録する1曲として大瀧詠一が自ら制作したのが「さらばシベリア鉄道」という曲です。

そのつもりで大瀧自身も制作に取りかかっていたのですが、松本隆が書いた歌詞は、太田裕美に提供した「木綿のハンカチーフ」と同様、女性と男性の視点が交互にある構成になっています。

そのため語り手を女性とした部分もあり、そこは女性の言葉遣いで書かれています。

露骨に女性言葉というものでもないのですが、これを歌うのを大瀧は自分で気持ち悪いと思い、一旦は断念したのです。

そして、当時の担当ディレクターが太田裕美のディレクターでもあったため、太田への提供を思いつき、それが実現されたのでした。

「さらばシベリア鉄道」はまず太田裕美がシングルとしてリリース。それから約半年ののちに大瀧が歌ったものが収録された「A LONG VACATION」がリリースされました。

そのさらに約半年後にナイアガラ・トライアングルの「A面で恋をして」のc/w曲として、「A LONG VACATION」からシングルカットされました。

ナイアガラ・トライアングルとは大瀧が佐野元春、杉真理と組んだユニットです。

どれも同じ「さらばシベリア鉄道」ですが、太田版と大瀧版ではアレンジが異なり、大瀧版も「A LONG VACATION」収録版とシングルカット版ではミックスが違います。

また、大瀧のセルフカバー以外にも、坂本冬美、吉井和哉、福山雅治、小林旭など、さまざまなジャンルの人たちがカバーしています。それぞれを聴き比べてみるのもおもしろいでしょう。

30年以上も以前の曲なのにまだまだ愛聴する人も多く、新しいファンも生み出している名曲「さらばシベリア鉄道」について解説しました。

新しく知った人も改めて知った人も、これを機に「さらばシベリア鉄道」に親しんでください。