「喝采」の基本情報

昭和の名曲として今も多くの人に歌い継がれている「喝采」。

まずはこの「喝采」の基本情報をお伝えしていきます。

【喝采/ちあきなおみ】悲しき名曲の誕生には実体験が絡んでいた?!歌詞の意味を徹底解釈!の画像

リリースはいつ?

「喝采」がリリースされたのは1972年9月のことでした。

もともと抒情的な楽曲や人の情動を歌うことの多かったちあきなおみさんですが、この楽曲はこれまで以上に人々の心に深く響く楽曲になりました。

9月のリリースにもかかわらず、年末のレコード大賞で大賞を獲るなど大ヒットした楽曲で、リリースから3ヶ月でのレコード大賞受賞は当時最短の記録でした。

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2018年現在「喝采」を聴けるアルバムはどれ?

2018年現在、非常に多くのアーティストにカバーされた楽曲でもある「喝采」。

1989年にはピアノ伴奏だけの新アレンジでアルバム収録されるなど、ちあきなおみさんにとっても思い入れの強い楽曲となっている作品のようです。

ただ、ちあきなおみさん自身は1992年にパートナーである郷鍈治さんと死別をして以来、事実上の芸能活動引退状態であり、以降公の場に姿を見せてはいません。

このため、「喝采」も当時リリースされたアルバム以降はベスト盤などで聴くことができるのみとなっています。

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「喝采」の歌詞を徹底解釈!

ここからは聴く人の心を揺さぶる「喝采」の歌詞徹底解釈していきます。

“ドラマチック歌謡”と言われた「喝采」

いつものように 幕が開き
恋の歌 うたう私に
届いた報せは 黒いふちどりがありました
あれは三年前 止めるあなた駅に残し
動き始めた汽車に ひとり飛びのった
ひなびた町の 昼下がり
教会の前にたたずみ
喪服の私は 祈る言葉さえ失くしてた

出典: 喝采/作詞:吉田旺 作曲:中村泰士

「喝采」の歌詞に登場する“黒いふちどり”の報せ。

これは弔いの報せであり、人が亡くなった時に使われるものです。

黒いふちどりがあるというだけで、悲しい報せだということがわかるわけですが、その報せはただの訃報ではなく、唄い手にとって胸をえぐるような別れになるわけです。

自分の夢を叶えるためだったのでしょうか、彼女は“自分の出立を止めるあなた”を駅に残して土地を離れました。

もしこの別れが円満で、止められることもなく応援されるものだったら、きっとその後も唄い手である彼女はその土地に帰ることができたでしょう。

しかしそうでないから、彼女はこの別れを機におそらく土地に帰ることもなく、出立以来大切な人とも会うことはなかったのでしょう。

きっと「喝采」が受け入れられた当時は、こうして地元を飛び出てきた人というのはたくさんいたのではないでしょうか。

だからこそ、この楽曲は多くの人に受け入れられ、楽曲を聴いた人々の想いとシンクロすることができたのだと思います。

その情景がくっきりと目に浮かぶ

つたがからまる 白いカベ
細いかげ 長く落として
ひとりの私は こぼす涙さえ忘れてた
暗い待合室 話すひともない私の
耳に私のうたが 通りすぎてゆく
いつものように 幕が開く
降りそそぐ ライトのその中
それでも私は
今日も恋の歌 うたってる

出典: 喝采/作詞:吉田旺 作曲:中村泰士

この楽曲は当初「幕が開く」というタイトルがつけられる予定だったそうです。

しかしできた曲をちあきさんが歌い、「喝采」というタイトルに変更されたそう。

楽曲を通して聴くと、どんな辛い体験や心情を胸に抱えていても、それを見せずにライトを浴び・喝采を浴びる唄い手の情景が作品の哀しみを浮きだたせる気がしませんか。

楽曲の歌詞は冒頭の“黒いふちどり”に対してこちらは“白いカベ”が出てきて、色合いも対象的になっています。

ただこの色の対象は気持ちの対象とはならず、黒と白が登場することで余計に作品に含まれる“死の情景”がはっきりとする感じがします。

この“対象”は色だけでなく、ステージで自分に向けられる喝采が大きいほどに、死の場面に立ち会った時の静けさが際立つようになっています。

明暗をよりくっきりとさせることで、楽曲の中にある2つの世界観(きらびやかな世界に生きる唄い手・現実に起こっている大切な人との死別)の落差を聴き手が感じるのでしょう。

「喝采」誕生の裏に隠された悲しい実話とは……?

先にご紹介した「喝采」の歌詞を読むと分かるように、この楽曲のテーマとなっているのは“大切な人との死別”です。

しかし、実は「喝采」の歌詞を作った吉田旺さんは、特にちあきなおみさんの実体験をもとにしてこの楽曲を作ったわけではなかったそうです。

彼は、当時アイドル歌手からの脱却を目指している、そして何より彼女の歌唱力の高さを引き出せるような楽曲を作ることに専念していたということ。

ただ、実際に楽曲ができてみると、その歌詞はちあきなおみさんが若かりし頃に経験していたある事実と重なり、楽曲に凄みが増したという経緯があるということです。