「歌謡界のゴールデン・コンビ」初の大ヒット曲
手紙文体による斬新な歌詞
作詞家・松本隆と作曲家・筒美京平のふたりは「歌謡界のゴールデン・コンビ」と呼ばれています。
1970年代から現在までたくさんの名曲とヒット曲を世に送り出してきました。
エイプリルフール、はっぴいえんど、日本のロック黎明期から作詞を続ける松本隆。
1960年代後半のグループサウンズの時代から作曲家として名を成す筒美京平。
このふたりのコンビが初めて放った大ヒット曲が太田裕美の「木綿のハンカチーフ」です。
東京へ向かう列車の中で書いた手紙
希望に満ちた歌い出し
恋人よ 僕は旅立つ
東へと 向う列車で
はなやいだ街で 君への贈りもの
探す 探すつもりだ
出典: 木綿のハンカチーフ/作詞:松本隆 作曲:筒美京平
東京へ向かう列車の中で主人公のひとりの男性が故郷の恋人に手紙を送ります。
胸躍るような筒美京平のメロディと相まって期待を抱いた青年の心境を見事に再現するのです。
聴く者の誰もが華やいだ印象を抱くはず。
太田裕美のさっぱりとした性格が滲むような歌唱も見事です。
変わらないでと歌う女心
いいえ あなた私は
欲しいものはないのよ
いいえ あなた私は
欲しいものはないのよ
ただ都会の絵の具に
染まらないで帰って
染まらないで帰って
出典: 木綿のハンカチーフ/作詞:松本隆 作曲:筒美京平
話者が男性から女性になります。
先程の手紙への返信でしょう。
この話法が斬新だと高く評価されました。
男女ふたりの話者が入れ代わり立ち代わり現れるという作風は松本隆の十八番になります。
ただ都会の絵の具に
染まらないで帰って
出典: 木綿のハンカチーフ/作詞:松本隆 作曲:筒美京平
この歌で特に愛されたラインです。
愛する人に変わらないでいて欲しいと願う女性の心理を美しい表現で描きました。
日本語のロックの始祖
ジャックスの「からっぽの世界」
松本隆に作詞を勧めたのはエイプリルフール、はっぴいえんどの細野晴臣です。
当時の松本隆は本好きの文学青年で、作詞家として適任なのではと細野晴臣は思ったそう。
エイプリルフールでは英語で歌詞を書きましたが、はっぴいえんどでは日本語の歌詞を書きます。
松本隆はジャックスの「からっぽの世界」に影響を受けて日本語の歌詞でいこうと決心しました。
いま現在、はっぴいえんどは日本語のロックの始祖として評価されています。
ただ、早川義夫擁するジャックスなどの先駆者がいたことをどうぞ忘れないでください。