そんななりてぇのか俺の踏み台?
趣味じゃねぇんだ店でもう擦りな
指名しときな嬢王様 俺もイキたいトコへ行動 ただ
ボロ着てても歯にゃ着せぬ衣
そんな理由で勘違いされる事も
相手が俺の事を勘ぐる程思う
これはDisじゃねぇ思いやる心
出典: Attitude/作詞:NORIKIYO 作曲:TONE-P
NORIKIYOは感謝の理由を挑発的なユーモアをもって語ります。
口から吐き出される毒の裏側に隠されているのは彼の人生哲学です。
NORIKIYOは身体を埋め尽くすタトゥーとルードな服装から怖いお兄さんだと思われています。
実際に怖いとは思われますが...。
しかし毒舌とも思われる彼の本音の先にあるのは真の意味での優しさです。
オルガスムスの表現の裏側には我が道を生きて本当の幸せを掴むという意味も隠されています。
DisとはDisrespect、思い切り端折っていう所の悪口です。
しかしここまで悪しざまに啖呵を切っておきながらもNORIKIYOは強く否定します。
これはDisではなく優しさだと。
憎しみではなく愛を
言葉通りなのに近くに居る程に遠い
今日Beef焼いてそれを調理
よりした方が良い胸の奥の掃除
でもどっちもどっちの半端者
俺も先を思えば不安だよ
登る山 それ違えど頑張ろうって事なのにじれってぇ なんかもう…
出典: Attitude/作詞:NORIKIYO 作曲:TONE-P
ここでビーフ(牛肉)を料理するくだりについてラップに親しんでいない方のために解説しておきます。
ビーフとはラッパー同士で楽曲を通じて行う喧嘩のことです。
音源を録音することを“CDに焼く”と言及するのを聞いたことがあるかと思います。
日本語ラップリスナーにとってNORIKIYOのビーフ音源は非常に評価が高いのは常識です。
キャリア・年齢などお構いなし。
ダメだと思えばZeebraにも喧嘩を売る。
売られた喧嘩は100倍にして(楽曲で)返す。
しかし30代も終わりに差し掛かり、時代も変わるタイミング。
NORIKIYOの心の中では静かに変化が訪れていたのです。
争いが生むのは次なる争いばかり...。
世界を変えることができるのは憎しみではなく愛だと考えているのです。
自身の昭和&平成を振り返る
「うさぎとかめ」に例えよう
うさぎと亀ならうさぎじゃねぇやつ
10年経てど一人のプレイヤー
それより前は下手なスケーター
振り返りゃ口だけ達者のうぜぇやつ
そっから来たよここまで
出典: Attitude/作詞:NORIKIYO 作曲:TONE-P
『平成エクスプレス』が実は内省的な作品であることも必目すべき点です。
『Attitude』においてNORIKIYOは自身の過去を振り返ります。
イソップ物語のもっとも有名なお話の1つが「うさぎとかめ」です。
恵まれた環境でぬくぬくと暮らす者、そして才能はなくとも泥臭く努力を続ける者。
この童話では後者が勝利を収めることになっていますが実際の世界はどうでしょう?
近年、トマ・ピケティは「21世紀の資本」でこう記しています。
労働者と資本を持つ者の資産格差は時間と共に大きくなると。
文字通り「持たざる者」としてキャリアをスタートしたNORIKIYO。
自身を卑下するかのようなバースが続いていきます。
しかし彼は泥臭い地道な活動を継続することによって世界に名を轟かす存在に行き着いたのです。
「持たざる者」でも頂(いただき)の景色を見ることができることを証明すること。
それこそが探し続けた宝物の1つなのでしょう。
過去に感謝を伝えよう
この先に何が待つかどうあれ
感謝してんぜ平成昭和へ
マイナスな感情には用はねぇ
最後灰になり朽ちる生涯
最中何かを見ては愚痴るよりゃ
かっけぇ奴らを見てみ? そりゃどうだ?
出典: Attitude/作詞:NORIKIYO 作曲:TONE-P
自身が「持たざる者」として生まれた宿命に感謝の念を込めたバースが続きます。
NORIKIYOにとっての昭和&平成とは不遇の歴史とニアリーイコールなのです。
限りある人生をどう生きるか?
最後に残したいのはこの世界への感謝の心。
だから彼は前を向いて生きていくのです。
Febb As Young Masonを聴こう
オリジナルがパチもんそれを淘汰
今、Febb を聴いてこう思う「Coolなラッパー」
出典: Attitude/作詞:NORIKIYO 作曲:TONE-P
ここでどうしても解説しておかなければならない歌詞が登場します。
それはブレない男、NORIKIYOが畏敬の念を持つラッパーについての記述です。
彼の名はFebb as Young Mason(フェブ・アズ・ヤング・メゾン)。
Fla$hBackS(フラッシュバックス)の一員としてヒップホップ史に残る作品を残してきた男でした。
ここでNORIKIYOは過去形で彼について言及しています。
その理由は2018年2月、わずか23歳という若さでFebbが逝去しているからです。
トラックメイカーとしてもそのモンスターぶりを発揮してきたFebb。
2013年のアルバム『FL$8KS』は歴史的名盤です。
ぜひ聴いてみてください。