ウルフルズらしさに溢れる「借金大王」
カラッとしたユーモアとノリの良さ
ウルフルズがソウルフルな「ガッツだぜ!!」でブレイクしたのは、1995年のことです。
ファンキーな殿様に扮したトータス松本が歌うMVには笑ってしまいました。
続くシングル「バンザイ 〜好きでよかった〜」もヒットさせて人気は全国区へ。
カラッとしたユーモアのあるノリの良い曲だけでなく、ハッピーになれる曲でも知られることになりました。
彼らの曲を聴けば自然と体が動き出し、誰もが笑顔になれる。
それがウルフルズの持ち味です。
「借金大王」は「ガッツだぜ!!」の前年にリリースされたシングルですが、既にウルフルズらしさが溢れています。
シンプルで軽快なロックンロールに乗せて、返ってこないお金のことをユーモラスに歌っているのです。
お金を貸した男と、借りたのに返さない男。
二人はいったいどんな関係なのでしょうか。
物怖じしないフロントマン
トータス松本の演技力に注目!
ここで「借金大王」のMVを紹介しておきます。
気軽に楽しめるロックンロールですが、一番重要なのはボーカルのトータス松本のキャラクターです。
「ガッツだぜ!!」のMVでも見せたように、俳優としても通用しそうな演技力に注目してみましょう。
若々しいトータス松本が表情豊かに演じるMVを、是非お楽しみください。

実際に彼は、その後俳優としても活動することになりました。
フロントマンに物怖じしない男がいるというのは、バンドにとってラッキーなことです。
グイグイ前に出るボーカルがいれば、他のメンバーも気楽にライブを楽しめるでしょう。
もちろん張りのある声も、キャラクター同様グイグイ前に出てくるので気分爽快です。
「借金大王」対「説教大魔王」
金を返せと言ったら、もう少し貸してと言われた?
友達は みんながみんな お前に金を貸すために
背広着たり 机にしがみついたり ヘコヘコしたり
してるわけじゃないんだぜ お前はそれ わかってんのか
わかってねーって そやってねだって また持ってくのか
いいかげんにしろ 借金大王
エンガチョ寸前 とどめをみまうぜ!
出典: 借金大王/作詞:トータス松本 作曲:トータス松本
初っ端から主人公の愚痴が全開です。
貸したお金が返ってこないのですから、当然でしょう。
俺もみんなも社会に出て、色々と苦労をしながら働いているのにお前は一体何だ!
借りたお金を返そうとしない男を呼び出して、説教しているのでしょうね。
男は正座をしてしおらしく聞いているのならまだしも、懲りずにまた借金を重ねようとしているみたいです。
あまりの図々しさと非常識な態度に、彼の怒りは爆発寸前。
それでもぶん殴ったりせずに説教をするところに、優しさが見え隠れしています。
男を「借金大王」と呼ぶのは、彼が仲の良い友達なので思わず渾名をつけてしまったのでしょう。
仲が良いから断れずにお金を貸してやったのに、お前はなんで返さないんだ!
彼はまさに怒髪天を衝く勢いで、こちらは「説教大魔王」と化しています。
ところで“エンガチョ”という聞き慣れない言葉が出てきますが、どういう意味なのでしょうか。
“エンガチョ”って何?
エンガチョは不浄のものを防ぐために囃したてる子供による口遊びのひとつである。『大辞泉』で語源は不詳とされているが、網野善彦によると、エンは穢や縁を表し、チョは擬音語のチョンが省略されたもので、意味としては「縁(穢)を(チョン)切る」を表すとしている。
出典: https://ja.wikipedia.org/wiki/エンガチョ
要するに縁を切る、という事みたいですね。
お金を借りておきながら返さずに平気な顔をしていれば、縁を切られても仕方がありません。
主人公はこいつと縁を切ってやろうかと思いながらも、寸前で踏みとどまります。
怒りながらも彼の心の中には、友達に対する優しさが残っているのです。