カリスマシンガー、倖田來未
2000年、自身が高校生の頃に活動を開始した倖田來未。
「エロかっこいい」という形容詞のとおり、セクシーさと強さを兼ね備えた、大人気のカリスマです。
そんな彼女が2006年、32枚目にリリースしたシングル「4 hot wave」に収録されているのがこちら。
誰もが1度は読んだことがあるであろう名作をテーマに作られた、ハードなロックナンバーです。
彼女らしい「エロさ」と「かっこよさ」、そして女性ならではの「繊細さ」が見事に融合しています。
今回は『人魚姫』の歌詞を徹底解説。胸が苦しくなるような恋物語をお楽しみください。
テーマはアンデルセン童話
皆さんは人魚姫の物語をご存知でしょうか。
子ども向けに様々なストーリーがありますが、今回の楽曲に関わるのはこのパターンのものです。
人魚姫のあらすじ
海の底で暮らす人魚姫は、ある嵐の晩に沈没した船から王子様を助け出します。
その王子様にひとめぼれした人魚姫でしたが、姿を見られるわけにはいきません。
仕方なく浜辺に王子をおいて、さっと海の底に帰ってしまいました。
しかし、あの王子様に近づきたい気持ちが消えることはありません。そのためには人間にならなくては…。
そう考えた人魚姫は美しい声を手放し、人間の足を手に入れることを選んだのです。
さらに、「恋が実らなければ泡になって消える」という条件つきで…。
念願かなって王子様に近づいた人魚姫ですが、声が出ないために想いを伝えることができません。
叶わないままの恋心は行く宛もなく、人魚姫は最後には泡になって消えてしまいました。
人魚姫は一途な想いを抱いたからこそ、報われないことに悩み、苦しんだのです。
恋するわたしは人魚姫
叶わない恋なら…
海に揺れてる 月夜の中で
小さな泡になって消えてしまいたい
いっそあたしが 人魚姫なら
泡になって消えてしまえるのにね
出典: 人魚姫/作詞:Kumi Koda 作曲:Miki Watanabe
冒頭からさっそく、人魚姫を想起させる表現が登場しています。
主人公の女性が「消えてしまいたい」とまで思う原因は、一体どこにあるのでしょう。
ここではまだ明かされていませんが、切ない胸の内が手に取るようにわかります。
切ないはずなのにどこか美しさや可憐さを感じさせるのは、2行目と4行目にある「泡」という表現。
どうせ消えるなら、綺麗に消えたい。そんな主人公の願いがこもっているように感じられます。
上手に嘘をつけない主人公
傷ついた顔 見せないために
偽りの笑顔 振りまいていたけれど
もっと私が 嘘をつければいいのに
出典: 人魚姫/作詞:Kumi Koda 作曲:Miki Watanabe
主人公はとても大人びていることがわかります。もしくは強がりなのかもしれません。
自分が傷ついていることを悟られたくない。自分が傷ついていると知れたら相手も気が引けるかもしれない。
そんなところまで深く考え及んでいるからこそ、それを表面に出さないよう必死に笑顔を取り繕っているのです。
しかし自分の本当の気持ちを隠して嘘をつくことは、決して簡単なことではありません。
それは自分自身の心に蓋をして、嫌な気持ちを無理やり押し込めることなのです。
押し込めたネガティブな感情は、次第に心の奥底でムクムクと膨れ上がってあふれ出しそうになる。
そうなるのは主人公が大人びていて強がりな反面、素直で純粋だからでしょう。
そんなことを気にしなくていいくらい、サラッと嘘をつけたらどんなに楽なのだろうか。
そんな、苦しい心の内がこの3行にぎゅっと詰め込まれています。