はじめから汚れているという表現からは桜をめぐって「花見」という言葉を連想します。
花見客は桜を見終わったら平気でゴミを捨てて、そのまま帰っていく。
桜の周りは汚れてしまうことになるのです。
ここでは「はなから汚れている」と言っています。曽我部が抱く桜へのイメージを書いているのでしょうか。
桜はシーズンになると、他を圧倒するような美しさを保ったまま咲き続けます。
汚い瞬間なんて少しもない。だからこそ毎年、人はさくらの周りに集まり続けるのです。
その様はいわば「眠ることない魂」。しかし花見客によって、さくらは残念ながら汚されてしまいます。
今では花見=ゴミだらけといったイメージまでついてしまうようになりました。
「はじめっから汚れちまってる」とは言わば、花見に関連したさくらのイメージ。
悪条件のなかでも美しく咲いている「魂」を賞賛しているのでしょう。
その後の2行に関しては、毎年同じ場所で咲き続けていることをいっています。
「セツナ」とは「刹那」のことでしょう。「1秒にも満たないような、とても短い時間」を指す熟語です。
春先だけパッと咲いて、すぐに散ってしまう。さくらの刹那的な美しさ、また強さをあらわした歌い出しですね。
さくらが見せるさまざまな表情を紹介した歌詞
日本の象徴的な存在としての強さと美しさを
きみはまるで静かな炎みたい
ぼくのすべてを燃やし尽くそうとする
子供の頃に作ったしゃぼん玉に
乗ってふたりでこの空を飛ぼう
出典: セツナ/作詞:曽我部恵一 作曲:曽我部恵一
その後の歌詞でもさくらに向けたメッセージを送っています。
「静かな炎」とはビジュアル的な比喩というよりも、さくらの象徴的な意味について書いているのでしょう。
日本人にとって「さくら」とはなくてはならない植物です。
例えば、戦時中に兵士を勇気付けたという話。 まさに刹那的な存在であるさくらを見て、闘志が芽生えたと言います。
また現代でも「さくら」と銘打って、あらゆる名曲が作られている。
日本人にとってさくらがどういった存在なのかが、よく分かるでしょう。
さくらとは、ただ美しいだけの花ではありません。静謐で雄大です。ときには激烈ですし、豪快でもあります。
「静かな炎」とはこうしたさくらの観念的な部分を指しているのです。
語り手は幼い頃にさくらの周りでシャボン玉を作ったことがあるのでしょうか。
確かにふわふわと舞うさくらの花びらだったら、シャボン玉にも乗れそうな気がします。
ここの描写はサビの「パラシュートライダー」の部分にもかかっていますね。
1枚の花びらがふわりと落ちてくる雅な様子に、人は魅了され癒されます。
子供時代の思い出と相まって、どこか優しい印象。とてもファンタジックでやわらかい世界観が展開されています。
”あのころ”を思い出す「さくらの存在感」
新たな冒険に向かうための1曲
きみはまるで静かなメロディみたい
なつかしい景色へぼくを連れて行く
子供の頃読んだ冒険物語
真似てふたりでこの夜を行こう
出典: セツナ/作詞:曽我部恵一 作曲:曽我部恵一
2番のサビでは同じフレーズが繰り返されていますので、割愛。
2番のAメロについてご紹介しましょう。基本的には1番のAメロとの対句になっています。
「炎」が「メロディ」になっている。その後、さくらを見た語り手は過去に遡っています。
たしかにあるメロディを聴くと、子供の時を思い出すこと多々あるでしょう。
当時流行ったCMソングや流行歌、替え歌など、メロディは記憶を巻き戻してくれます。
ここでは、さくらからインスパイアされているのです。
その後は1番とほぼ同じ。子供だった頃の記憶が蘇り「冒険」をしようとしている。
これは「Dance To You」を作るにあたってサニーデイ・サービスが決めていたことと同じ。
目に見えるもの、手で触れるもののすべてが鮮烈だった当時の自分を想起しているのです。
ユニークな世界観が「意味わからない!」と評判のMV!
主演を演じるのは廣田朋菜
MVにも注目してみましょう。
主演を演じるのは女優の廣田朋菜です。映画やドラマ、舞台など数々の作品で活躍している実力派女優。
少女のようなあどけなさと、心の中まで見透かすような大人のこわさを併せ持つような表情が魅力的ですね。
今作では「さくらそのもの」を演じています。
独特な緩いダンスは中毒性抜群。雑居ビルの屋上という舞台も相まって立派な超現実です。
一度見てしまったら虜になること間違いなしでしょう。
さくら(廣田朋菜)の周りでカメラを構えたり、海苔巻きを持ってはしゃいだりする3人の女性にも注目。
可愛らしい仕草が見ていて飽きません。
1つのMVに2曲入り! 掟破りのMVとは
まさかの強制リピートに唖然
このMV、初見の方はビックリするでしょう。
動画の長さは全部で10分。しかし曲の時間は5分弱です。つまり1つのMVにセツナが2回流れます。
フルサイズで同じ曲が2回流れるのは、これまでありそうでなかったのではないでしょうか。
かなり斬新ですね。MVのストーリーはもちろん変わりますので、最後まで見るのがおすすめ。
曲自体に変化はなく、ちょっとシュールな光景といってもいいでしょう。
奇妙な雰囲気が終始MVに蔓延している。そんなユニークすぎる映像作品は必見ですよ。