地名を出す訳では無く、今の天候で居場所を想像させる歌詞。二人の関係も謎めきます。
天気雨ならどこでも起こる現象ですが、季節と場所で“時雨”と変れば空のトーンも下がります。
吹き付ける風に首をすくめながら、通りがかりの宿の玄関を開けて、今夜の空き部屋を確認しました。
普段から連絡を取り合って、予約をしてから旅をする間柄ではありません。
通された部屋から見えるのは暗い空と海。賑やかさより、ひなびた空気が二人を近づけます。
背中を見せたのは、幸せになろうとしない、自分への気遣いと分かってはいるつもり…
テーマは美しく「耐える」
独りよがりと言われても
報われないと 知りつつ抱かれ
飛び立つ鳥を 見送る私
季節そむいた 冬のつばめよ
吹雪に打たれりゃ寒かろに
出典: 越冬つばめ/作詞:石原信一 作曲:篠原義彦
二人で同じ宿に泊まる。本当ならば心弾む時間になるけれど、今夜は違います。
同じ夜を二人で過ごして、刹那の幸せを感じるのは自分だけかもしれません。
それで構わないと言い聞かせ、外を見れば、寒風に逆らうように飛ぶ鳥が見えました。
風を切る様子がつばめに見えたのでしょう。
南の国に帰りそびれたつばめ…本当なら今は暖かな国で暮らしているはず。
仲間と一緒に飛ばなかった一羽のつばめは、ひたすら寒さに耐えています。
本当に冬を越すつばめはいるの?
前日の時雨から、天気は悪化したようです。窓の外には風に舞う雪が見えています。
外気の温度は0度を切っているかもしれません。
現実問題として、雪が降る時期につばめは本当にいるのでしょうか?
東南アジアなどから飛来して巣を作り、子育てが終わる秋には再び、南の国を目指すつばめ。
9月中旬以降の季節の名前には『玄鳥去る』があります。
玄鳥(げんちょう)は、つばめのもう一つの呼び方、季節名は『つばめさる』です。
通常であれば9月の終わりには、つばめは日本を離れます。
日本国内で冬を過ごすつばめの真実を調べてみました。
リアル「越冬つばめ」
日本国内で越冬する個体があり、しばしば「越冬ツバメ」と呼ばれる。特に中日本から西日本各地で越冬し、集団で民家内や軒下などで就塒(しゅうじ)。日本で越冬している個体が日本で繁殖したものであるのか、それともシベリアなど日本より北方で夏に繁殖したものであるのかはよく分かっていない。
出典: https://ja.wikipedia.org/wiki/ツバメ
実際にいるんですね。私自身、残念ながら冬につばめの姿を見たことはありません。
さすがに寒さの厳しい地域では冬は越せないようですね。
もし見かけたらそっと見守りましょう。
つばめは害虫を食べてくれる、役立つ鳥の益鳥。
軒先につばめが巣を作ると、商売が繁盛する・幸福を運び込むなど良いことがあるようです。
人々の営みと共に暮らすつばめは、人の心も読んでくれそうですね。
啼いているのは、風・つばめ・私
音が可視化されています
ヒュルリ ヒュルリララ
ついておいでと 啼(な)いてます
ヒュルリ ヒュルリララ
ききわけのない 女です
出典: 越冬つばめ/作詞:石原信一 作曲:篠原義彦
この楽曲のサビというより肝です。風が舞う空に飛ぶ鳥はやはりつばめなのでしょうか。
音を立てて吹いていく風が見えます。風の音は耳に刺さるように届きました。
文字にすれば、“ヒュルリ ヒュルリララ”とシンプルにカタカナが並びます。
実際にこのフレーズを森昌子さんの声で聴くと、風とその中に立つ人が見えるようです。
ついてきていいんだよと、啼くのはつばめなのか風なのか…
それとも背中を見せる相手に、『ついて来いよ』と言って欲しくて出た本音なのか。
イイ子でなんかいられない、それが今の自分の立ち位置です。
耐えるのは私だけ?
冬の宿の情景が
絵に描(か)いたよな 幸せなんて
爪の先ほども 望んでません
出典: 越冬つばめ/作詞:石原信一 作曲:篠原義彦