森山良子の代表作「さとうきび畑」
沖縄戦の悲劇を歌う
作曲家・寺島尚彦が歌手・田代美代子のために歌詞を含めて書き下ろした「さとうきび畑」。
ちあきなおみ、森山良子、上条恒彦、宮沢和史、夏川りみと錚々たる面々によって歌い継がれています。
特に全11連の長い歌詞を歌いきった2001年の森山良子の歌唱が有名です。
森山良子は1969年にこの曲を最初にレコード化した歌手でもあります。
壮絶な沖縄戦を平和な時代から振り返るこの歌は人々の心に強く訴えかけずにいられない。
全11連の歌詞を紐解くとともに、沖縄戦の異常な惨状を振り返りましょう。
夏の日の平和な一日
さとうきび畑に注ぐ風
ざわわ ざわわ ざわわ
広いさとうきび畑は
ざわわ ざわわ ざわわ
風が通りぬけるだけ
今日もみわたすかぎりに
緑の波がうねる
夏の陽ざしの中で
出典: さとうきび畑/作詞:寺島尚彦 作曲:寺島尚彦
1連目の歌詞。
さとうきびの葉が擦れる音である“ざわわ”の繰り返しが印象的です。
夏の日の沖縄のどかな情景が目に浮かびます。
一面のさとうきび畑を吹き抜ける風、碧い海、照りつける陽射し。
平和な夏の日の沖縄にあるのはこれだけです。
いまは不吉な予感の一欠片もない情景が広がっています。
アメリカ軍の沖縄上陸
寺島尚彦の決意
ざわわ ざわわ ざわわ
広いさとうきび畑は
ざわわ ざわわ ざわわ
風が通りぬけるだけ
むかし海の向こうから
いくさがやってきた
夏の陽ざしの中で
出典: さとうきび畑/作詞:寺島尚彦 作曲:寺島尚彦
2連目の歌詞。
物語が動き始めます。
むかし海の向こうから
いくさがやってきた
夏の陽ざしの中で
出典: さとうきび畑/作詞:寺島尚彦 作曲:寺島尚彦
太平洋戦争末期、アメリカ軍(連合国軍)の沖縄上陸が歌われるのです。
アメリカ軍は日本全土で地上戦を展開する足がかり、前進基地とするために沖縄を侵攻しました。
1945年3月26日、沖縄戦の始まりです。
以降、同年6月23日まで沖縄本島を中心として組織的な戦闘が繰り広げられました。
日本での地上戦は他に硫黄島の戦いなどもあります。
しかし日米両軍、そして民間人の犠牲者・死者の規模などは沖縄の方が深刻でした。
寺島尚彦は1964年、本土復帰前の沖縄を訪問した際に沖縄戦跡国定公園でこの歌を創ろうと決意します。
「鉄の暴風」が吹きすさぶ
凄まじい量の弾薬
ざわわ ざわわ ざわわ
広いさとうきび畑は
ざわわ ざわわ ざわわ
風が通りぬけるだけ
あの日鉄の雨にうたれ
父は死んでいった
夏の陽ざしの中で
出典: さとうきび畑/作詞:寺島尚彦 作曲:寺島尚彦