本編ではフランクスに乗ることを使命として生きている彼女たち。
しかし、EDアニメーションでは"イマドキの女子高生"として描かれているのです。
楽曲によって制服だったり水着だったり私服だったりと違いはありますが、戦闘服を着ている姿は出てきません。
フランクスに乗るために必要な知識以外を得ることが許されないコドモたち。
そんなコドモたちが、視聴者が生きている世界にいたら……。
そんなifの姿を見られるのがEDの1分半なのです。
「escape」の歌詞も物語を示唆しつつ、パラレルワールドという世界観のなかで歌われています。
「escape」の歌詞が紡ぐもの
お待たせしました!それでは「escape」の歌詞をじっくりみていきましょう。
不穏なサウンドが不安を煽る
予報外れの雨が ボクらを濡らして
震えてる君に 何を話したら良いの?
びしょ濡れのブレザーが 冷たくて重たくて
カゴを出たひな鳥の 無力さを感じてる
出典: escape/作詞:杉山勝彦 作曲:杉山勝彦
「escape」はマイナーコードを多用した楽曲で、とても暗い印象を抱きます。
"カゴ"を出てようやくなにかを掴みかけたボク。
だけどカゴを出て自由を手に入れたところで、結局は"無力"だと気付かされてしまう。
自由になることがゴールだと思っていたけど、そうではなかった。
外の世界にはまた違った困難が待ち受けていて、その現実に打ちのめされている。
そう絶望するような歌詞に感じられます。
この歌詞の内容とリンクしたような展開が待ち受けています。
ネタバレは避けたいので詳細は省きますが(ぜひ全話見て下さい!)……。
16話までにひとつの山を越えて、コドモたちはある種の"自由"を手に入れるのです。
しかし、それは次にやってくる絶望の始まりに過ぎず……。
「escape」が使われるストーリーの前半は比較的穏やかな話が続きます。
コドモたちが自分の足で歩いていこうと頑張る姿に筆者は勇気をもらいました。
しかし、EDではこのマイナー調の楽曲が待ち受けているのです。
不吉な結末を予感せずにはいられない。
視聴者になにかを覚悟させるような歌詞に感じられます。
また歌詞に鳥カゴが出てきますね。
これは1~6話のEDテーマ曲「トリカゴ」とのリンクを感じる部分です。
複数の曲でつながりが感じられるのも、一括でプロデュースされているからでしょうか。
カゴを飛び出た先に待つ暗闇
触れそうだった夢は 分厚い雲の向こうで
胸に広がる 甘い痛みだけ 嚙み締めた
ボクと君は 出逢わない方が良かったかな?
ねぇ 星さえ見えないよ
出典: escape/作詞:杉山勝彦 作曲:杉山勝彦
ここで歌っている"夢"は5人それぞれに違うものを想像しているのだと思います。
「ダリフラ」は、メインキャラクターたちの感情が複雑に交錯します。
同じ人を想っていたり、同性に惹かれていたり。
それぞれに異なる事情を抱えています。
そしてどの夢も、彼女たちが置かれた環境を考えると叶えることは容易ではありません。
どのキャラクターの心情に沿っても、この歌詞に通じる部分があるのではないでしょうか。
筆者は、特にゼロツーとココロに当てはめると、思わず涙腺が緩んでしまいます。
一度はその手に掴みかけたものが、指の隙間からポロポロとこぼれ落ちてしまう。
"星"は希望でしょうか。
星がひとつも見えない空。それは真っ暗闇です。
好きな人に出逢わなければ良かった……。
そんな風に思わなきゃいけないなんて、とてもつらいですよね。
サビもやはり、絶望が感じられる歌詞となっています。
希望を諦めていく
小さな水溜り やがて空に還るなら
いっそボク達も 連れて行ってくれないかな
君の胸のうちを 知るのが怖くなって
毛先から落ちてゆく 水滴を見ていた
自由なんてさ 何処にもない気がしてたから
それが事実と 前より分かった だけなんだ
ボクと君は 出逢わない方が良かったかな?
ねぇ 涙も出てこない
出典: escape/作詞:杉山勝彦 作曲:杉山勝彦
アニメのEDでは使われていない2番です。
君の本心を知るのが怖くて、拒絶的な態度をとっているように読み取れます。
Aメロでは、どう話しかけていいか分からないと歌っていました。
つまり、声をかけようという気持ちはあの時点ではあったのです。
もしかしたら実際に話しかけたのかもしれません。
でも、君の言葉を聞くのは怖くて顔を上げられない。
漂う絶望感がすごいですね。
サビもかなり強烈です。
自由がないことを再確認しただけ。
前から分かっていたことと、諦めの色が濃く出ているのです。
最初のサビでは、希望を求めて空を見上げています。
しかし、ここにきて涙も枯れてしまったのです。
虚ろな瞳で足元を見つめている。
そんな情景が浮かぶ歌詞ではないでしょうか。
どれだけ彼女たちは絶望すればいいの……?と、こちらが希望を持てなくなってきてしまいます。
投げやりだからこそ強い
予報外れの雨は 降り続いていて
青白い顔してる 君を美しく思う
もう 全部どうでも良いよ
触れそうだった夢は 分厚い雲の向こうで
胸に広がる 甘い痛みだけ 嚙み締めた
ボクと君は 出逢わない方が良かったかな?
ねぇ 星さえ見えないよ
ねぇ 涙も出てこない
出典: escape/作詞:杉山勝彦 作曲:杉山勝彦
まだ絶望をもたらす雨が降り続いています。
"青白い顔"という表現は、少しビクッとしてしまいませんか?
一般的に顔が青白いというのは、生気が失われたような状態に使われます。
全話視聴してからこの歌詞を見ると、この表現の意味がなんとなく分かる気がしますが……。
この歌詞だけ突きつけられると、不幸な結末が待っているように感じてしまいます。
Bメロの解説で、ボクが諦めているという表現をしました。
さらにここでは"どうでも良い"と投げやりな言葉に変わっています。
筆者はこの態度に、なんだか力強さを感じました。
投げやりな気持ちって、良い意味と悪い意味があると思います。
良い意味で投げやりになると、無駄な力や緊張が抜けて案外うまくいったりすることってありませんか?
現状に嘆いていたボクが、最後にどうでも良いと言い放つのです。
さらに、顔が見られないと下を向いていたのに、いまは君をしっかりと見つめています。
待ち受けていた絶望はとても大きかった。
だからつらくなったし涙も枯れてしまった。
だけどその絶望を現実だと受け止めた。
そんな風にボクの心境が変化していっているように感じられました。
歌はここで終わってしまいますが、ボクは絶望のなかに希望を見出した。
筆者はそんな展開を期待せずにはいられません。