ペンフレンドの二人の恋は
つのるほどに 悲しくなるのが宿命
また青いインクが 涙でにじむ せつなく
若すぎるから 遠すぎるから
会えないから 会いたくなるのは必然
貯金箱こわして 君に送ったチケット

出典: 大きな玉ねぎの木の下で/作詞:サンプラザ中野 作曲:嶋田陽一

「ペンフレンド」というワードから、彼らは文通をしている関係であることがわかります。

まだ1989年あたりは今のような連絡手段はなく、割と文通は男女間でも行われていた時代。

文字でのやりとりなのに、その文字や文章から伝わる「相手」に恋をしてしまう。

そんな主人公の様子が見て取れますね。

そしてこの物語の主人公はバンドをやっていて、彼女がそのライブを見に来てくれることになります。

自らの貯めた貯金で自分たちのライブチケットを買い、手紙と共に彼女に送ったのでしょう。

それがきっと、彼らが初めて会えるきっかけになればと思ったのだと思います。

そして主人公は、単純に歌を歌っている自分を観て欲しかった。

手紙のやり取りの中で、バンドをやっている事、彼女が観たいと言ったという経緯もあったのかもしれません。

会いたい想いは募るばかりです。

君に会えるのが待ちきれない主人公

定期入れの中のフォトグラフ
笑顔は動かないけど
あの大きな玉ねぎの下で
初めて君と会える

九段下の駅を降りて 坂道を
人の流れ 追い越して行けば
黄昏時 空は赤く焼け落ちて
屋根の上に光る玉ねぎ

出典: 大きな玉ねぎの木の下で/作詞:サンプラザ中野 作曲:嶋田陽一

「フォトグラフ」から、2人はお互いの写真を交換したのかもしれないと解釈できます。

ドキドキしながら一番よく映っている写真をお互いが探し出し、相手に送る。

そんなちょっぴり恥ずかしくなるような光景が想像できます。

そしてライブに来てくれさえすれば、やっと会いたかった彼女に会える。

それがあの、武道館の「擬宝珠」を「たまねぎ」になぞらえて表現しているのです。

実際は武道館なんて大舞台ではなかったかもしれません。

それに、敢えて「たまねぎ」とするところに初々しさを感じます。

まだ売れないバンドが故に「武道館」と大それたことは言えない、けれど、いつかそこでライブをしたい!

そんな願いも込められているように感じられました。

駅を降りてからの道中、早く彼女に会いたい気持ちが先行して人混みをかき分けます。

主人公は彼女に会えるのが待ちきれないのですね。

果たされない約束?不安が募る

ペンフレンドの二人の恋は
言葉だけが たのみの綱だね
何度もロビーに出てみたよ 君の姿を捜して
アナウンスの声に はじかれて
興奮が波のように 広がるから
君がいないから 僕だけ 淋しくて
君の返事 読み返して 席をたつ
そんなことをただ繰り返して
時計だけが何もいわず 回るのさ
君のための 席がつめたい

出典: 大きな玉ねぎの木の下で/作詞:サンプラザ中野 作曲:嶋田陽一

ここからは様子が一変します。

2行目の文章からとたんに不安な気持ちが表れているようです。

言葉だけしかない、言葉以外に繋がっていない…そんな風に捉えることもできます。

文通とはなんと頼りないものなのでしょう。

ライブが始まるその直前まで、主人公は彼女の姿を捜しています。

居てもたってもいられず、「ライブを見に行く」ときたであろう手紙の返事を何度も確認。

そして約束の時間は迫っているのになぜ来ないんだろうという不安に駆られています。

あんなに楽しみにしていたのは、「僕だけ」だったのかと…。

言葉だけの関係はあまりに頼りなく、想像するだけで胸が切なくなってしまいますね。

アンコールの拍手さえ君にはかなわない

アンコールの拍手の中 飛び出した
僕は一人 涙をうかべて
千鳥が淵 月の水面 振り向けば
澄んだ空に光る玉ねぎ

九段下の駅へ向かう人の波
僕は一人 涙をうかべて
千鳥が淵 月の水面 振り向けば
澄んだ空に光る玉ねぎ

出典: 大きな玉ねぎの木の下で/作詞:サンプラザ中野 作曲:嶋田陽一

約束の時間に現れない彼女を待ちながらも、ライブは終盤に突入。

お客さんからのアンコールが鳴り響いています。

みんなのためのライブだけど、主人公の頭の中は会えるはずだった文通相手で一杯です。

そしてたまらずアンコールに背を向けてライブ会場を飛び出していまいました。

どれだけ期待して、傷ついたのか、これだけで十分伝わってくるのではないでしょうか。

主人公にとっては一世一代の晴れ舞台だったのかもしれません。

いいところを見せたくて、必死に練習をしていつも以上のパフォーマンスをするつもりだったのでしょう。

なのに何も言わず(連絡手段が文通ですから直前の連絡などできるはずもないですが)、現れなかった彼女。

なぜ?何があった?約束は嘘だったのか?それとも何かトラブルにでも?

不安から色々考えて取り乱してしまう主人公の気持ちが痛いほど伝わってくるようです。

行くまではあんなに幸せな気持ちでみた「玉ねぎ」が、今は涙で霞んでしまいます。

そして人混みをかき分けてきた道を、肩を落とし涙しながら帰ることに…。

歌詞からはなぜ約束は果たされなかったのかまでは言及していません。

しかし、想像するに、きっとこの後も彼女からの手紙は来なかったのではないかと思います。

何があって、なぜ来なかったのか。

その理由はきっと主人公にも謎のままーー。

おわりに

うーーーん!とてつもなく切ないストーリー!

わくわくした恋の始まりからわけもわからずフェードアウトしてしまう恋の終わりを見事なくらい表現しています。

爆風スランプの「大きな玉ねぎの木の下で」を歌詞解釈と共にお届けしましたがいかがでしたか?

みなさんはどんなストーリーを思い描きましたか?

会ったことのない恋の相手と初めて会えるかもしれない期待。

そしてそれが叶わなかった気持ちを見事に表現している楽曲だったと思います。

サンプラザ中野のしゃがれつつも力強い歌声がさらに切なさを倍増させてくれていました。

2019年の現代では"ペンフレンド"ということ自体知らない人が多いかもしれませんね。

今のように連絡手段もなく、アナログな時代にはこういった切ない恋も多く生まれていったのかもしれません。

懐かしく聴いて頂いた方も初めて知ったという方も、楽しめたのではないでしょうか。

それでは、お最後までご覧いただきましてありがとうございました!

OTOKAKEおすすめ記事紹介

最後に、「大きな玉ねぎの木の下で」と時を同じくして注目された楽曲の記事を紹介します。

現代の音楽にはない懐かしさや哀愁を感じられる楽曲が多く、未だに色褪せることを知りません。

昔の曲だと敬遠せずに、ぜひ聴いてみて欲しいと思います。

往年の人気ソング「紅」

爆風スランプ【大きな玉ねぎの下で】歌詞を解説!若者には意味が分からない!?幼い恋の結末が切なすぎる…の画像