この場所は

狂っていた

そう、微かにドアが開いた
僕はそこから抜け出すだろう
この狭い地下室では何か狂っている 狂っている

出典: 少年/作詞:清春 作曲:清春

無機質な街に歯向かう決意をした僕。その決意とは裏腹に逃げる姿が描かれています。

僕が逃げ出そうとしている場所。

3行目でそこが「地下室」だと綴られていますが、きっとこれも彼が訪れた街を意味するのでしょう。

僕は生まれ故郷を離れこの街を訪れた時点で、狭い部屋を抜け出して制限のない広い場所へ辿り着いたと思っていました。

しかしそんな希望とは裏腹に、訪れたこの街は四方を囲まれた冷たいコンクリートの部屋だった。

想いを届けることもできず、がむしゃらに頑張っても気づいてもらえず、ただそこで一生を終えるだけ。

そんな場所に見えたのです。

ただ僕はまだこの場所が狂っていることを理解しています。

まだ街に毒されておらず、純粋な気持ちを持ち続けているということでしょう。

少年が信じたもの

わずかな願いを握り締め 少年は信じてた
誰の声より誰の夢より逆らう事 逆らう事

出典: 少年/作詞:清春 作曲:清春

少年は大きな夢を持ってこの街にやってきました。

握り締めていたのは、彼のその小さな手に収まらないほどの大きな願いです。

しかし理想と現実の差をつきつけられ、生気のない街の姿を目の当たりにした主人公。

その中で、僕の願いは少しずつ削られていったのかもしれません。

いまではすっかり片手に収まる大きさになってしまいました。

しかし言い換えれば、そこまで様々な困難にぶつかりながらも願いを失わずにやってきたということ。

少年はこの街でその願いが叶えられると信じ続けているのです。

そのためには2行目にあるとおり、この街やそこにいる人々と闘わなくてはいけません。

少年が持つ願いを見た人々は、きっと様々な言葉をかけてくるでしょう。

諦めた方が楽だよ。そんなちっぽけな願いだけでどうするの。無理に決まっている。

彼が持っていた大きな願いがここまで小さくなってしまったのも、そんな言葉が原因だったに違いありません。

それでも少年は流されることなく、歯向かう強い心を持ち続けています。

僕自身の目線と周囲からの目線

実はここまでの歌詞、ほぼすべてが「」という一人称で語られていました。

しかし直前で紹介したフレーズだけ、主人公のことを「少年」と客観的に綴っているのです。

おそらく前半部分は夢を追いかけてやってきた街で、少年自身が藻掻いている様子を描いていました。

そんな主人公の様子を見つめている誰か。物語の語り手のような、ナレーションのような意味を持つのでしょう。

僕の頑張りをどこかから見つめ、認めてくれている誰か。

心情描写中心の僕に対し、その僕が置かれた状況描写をすることで説得力が増しているようにも感じられますね。

地下室からの脱出

心がない

そう、確かにドアが開いた 僕は振り返らないでいよう
この汚い楽園は心、無くしている 無くしている

出典: 少年/作詞:清春 作曲:清春

僕は無機質な地下室を抜け出したのでしょう。

夢を追い続けたことで、その部屋のドアを開けることに成功したのかもしれません。

その地下室内の様子を、僕は2行目で「汚い」といいつつも、確かに「楽園」であったと表現しています。

人を楽な方へ流そうとする、その空気はきっと夢を諦めた人にとっては「楽園」かもしれません。

しかしそんな夢追い人たちを巻き添えにし、堕落させる場所は本当の楽園ではないのです。

僕はそんな楽園の真実に気がついているからこそ、「汚い」と形容したのかもしれません。

少年が歌っているのは

わずかな戸惑い消す様に 少年は歌ってる
誰の真似より誰の言葉より疑う事 疑う事

出典: 少年/作詞:清春 作曲:清春