東日本大震災を受けて生まれた哀悼の歌
美しいピアノと穏やかなボーカルが紡ぐ哀悼の意
「それでも、生きてゆく」は2011年3月11日に発生した、東日本大震災をきっかけに生まれた楽曲です。
この曲は震災直後、クラシックピアニスト辻井伸行のコンサートで即興で演奏されたのが始まりです。
辻井伸行は、当初ピアノソロだったこの曲に歌詞をつけてより多くの人に届けたいと考えました。
そして辻井伸行からの作詞とボーカルのオファーを受けたのが、EXILEのATSUSHI。
一貫性のあるメロディーに淡々と歌詞が乗せられ、その歌詞には心からの復興への祈りが込められています。
曲全体が単調にならずに、誠実さを感じさせるのは辻井伸行とATSUSHIが誠心誠意この曲と向き合った証とも言えます。
こうして即興で生まれた楽曲に歌詞が付き、「それでも、生きてゆく」は誕生しました。
そして、2013年にリリースされ、今もたくさんの人に感動と勇気を届けています。
今悲しくつらい状況にある人すべての心を優しく癒し、その中に希望を見出すその歌詞を徹底解釈します。
大切な人やものを失う絶望
絶望に打ちひしがれる心
夢がなくても
希望がなくても
生きがいがなくても
いつかみつかる…
出典: それでも、生きてゆく/作詞:ATSUSHI 作曲:辻井伸行
辻井伸行の美しくも悲しいピアノソロが印象的なイントロ。
まだ歌詞もなくシンプルな旋律でありながら、深い悲しみと絶望が広がります。
夢・希望・生きがいという人が生きる上で大切な全てとも言うべき要素です。
それらがすべてない絶望的な状況。
悲壮感が漂いながら、きっとまた光はみつかるという強い祈りが込められています。
震災で大切な人を亡くされた方、大切な故郷の風景が失われてしまったこと。
大災害は人々から一瞬にしてかけがえのないものを奪い去りました。
そこに残された人々の胸によぎるのは、経験した事のない絶望です。
絶望で満たされた人々の心を、ATSUSHIのボーカルが静かに歌い上げます。
「いつかみつかる…」というのは、そうであってほしいという切実な願いです。
想像を絶する悲しみや絶望に打ちひしがれながらも、明日へ希望を託す。
そんな人々の感情をつぶさに見つめた歌詞となっています。
悲しみの中で明日を信じる力
悲しい事でも
つらい事でも
報われる日がくる
そう信じている
出典: それでも、生きてゆく/作詞:ATSUSHI 作曲:辻井伸行
家族や友人、恋人を亡くす悲しさ。
住んでいた家や街を失うつらさ。
悲しい、つらいという一言では表現しきれない壮絶な体験です。
夢や希望、生きがいがきっとまたみつかると信じ明日に託した希望。
そして、悲しい事やつらい事も、生きて乗り越えればきっと報われる。
そう信じる人々の心の尊さが聴く人の胸を打ちます。
この曲は東日本大震災をきっかけに生まれましたが、希望を失ったすべての人に届くメッセージ性を持ちます。
信じて生きていればきっといつか報われるという、普遍的なメッセージが込められています。
小さな灯火を必死に守り歩む日々
不安の中で守り抜く希望
小さな灯火を
消さないようにと
肩をすくめながら
歩いてきたんだ
出典: それでも、生きてゆく/作詞:ATSUSHI 作曲:辻井伸行
「小さな灯火(ともしび)」が象徴するのは、壮絶な体験の後にそれでも必死に繋いできた未来への夢や希望です。
その灯火は今にも消えそうで、消えないように、消さないようにと肩をすくめ守ってきました。
この灯火を奪われてしまったらもう何も残らない。
そんな切迫した心情が表現されています。
微かな夢と希望を胸に灯しながら、肩をすくめながら、それでも歩みを進める。
時間の経過と共に、先へ進まざるをえなかったのかもしれません。
先へ進まなければ、何も変わらないという秘めたる決意があったのかもしれません。
いずれにせよ、小さな灯火だけを頼りに前に進みます。
絶望を照らすにはあまりに頼りない光。
それでも前に進むしかないという、強く切ない意志があります。