ようやく見出した光
心に一筋の
光が見えてきた
あきらめそうになって
涙が溢れて
出典: それでも、生きてゆく/作詞:ATSUSHI 作曲:辻井伸行
ここで曲の流れが変わり始めます。
絶望感に打ちひしがれ、まるで暗闇を彷徨うような日々。
そんな中必死に前を向いて歩いてきた先に一筋の光が見えてきました。
その光はどれだけ必死に追い求めてきたものでしょう。
途中、何度もあきらめそうになって、心が折れそうになった時が数え切れない程あったに違いありません。
この光にたどり着くまでの暗く長い道のりは、想像を絶する過酷な日々です。
まるで先の見えないトンネルの中を歩いている様な絶望と孤独。
トンネルの先にやっと光が見えた時、涙が溢れます。
この光は、悲しくつらい中でも必死に歩を進めてきた努力と忍耐の結晶です。
未来を照らす暖かな春の日差し
光が涙を
伝い僕の心に
優しく反射した
そんな春の日
出典: それでも、生きてゆく/作詞:ATSUSHI 作曲:辻井伸行
暗闇でもがく日々の先に差した一筋の光。
その光を目にして思わず頬を伝う涙。
その涙に、光が届きました。
これは曲の冒頭で、いつかみつかる、報われると信じたまさにその瞬間かも知れません。
辿り着いた光は優しく反射し、未来を照らし出します。
「春の日」というのは実際の春の暖かな日でもあり、比喩でもあります。
春が象徴する暖かさ、優しい光、新しい日々、夢、希望。
心に暖かく優しい光が満ち溢れます。
温度と色彩を取り戻す心
癒されてゆく傷つき疲れ果てた心
穏やかな風が
優しい旋律が
ほのかな香りが
胸に迫ってくる
出典: それでも、生きてゆく/作詞:ATSUSHI 作曲:辻井伸行
悲しさやつらさで満ちていた心を穏やかな風が通り抜けてゆきます。
必死でもがく日々には忘れかけていた、優しい旋律やほのかな香り。
余裕のない日々から抜け出した時、心に温度や色彩が戻り始めました。
穏やかな風は心にそっと風を通します。
優しい旋律は疲れ果てた心に潤いを与えます。
ほのかな香りは忘れかけていた優しく楽しい記憶を呼び起こします。
まるで冬のように、凍てつき凍えそうだった心が今、春の暖かさで癒されてゆきます。
どんな時も、夢や希望を忘れずにいることの大切さをこの曲は、どこまでも優しく伝えます。
壮絶な過去が報われた今
夢がなくても
希望がなくても
生きがいがなくても
出典: それでも、生きてゆく/作詞:ATSUSHI 作曲:辻井伸行
冒頭と同じ歌詞が再び登場します。
同じ歌詞ながら、歌の印象は全く異なっています。
辻井伸行のピアノも、ATSUSHIのボーカルも、優しさと暖かさに満ちています。
冒頭のような絶望感、悲壮感はもうありません。
曲全体があたたかい光に包まれているような安心感を感じさせます。
先の見えない長いトンネルを肩をすくめ歩いていた日々。
そのころからに待ち焦がれた春のような日差しが心の中に降り注いでいます。
今にも消えそうな火を明日を信じて守り抜き辿り着いた今日。
壮絶な過去を振り返り、夢や希望、生きがいを再び見つけた事への喜びや感謝が溢れています。
忘却ではなく共に
悲しい事でも
つらい事でも
報われる日がくる
出典: それでも、生きてゆく/作詞:ATSUSHI 作曲:辻井伸行
光のある場所に辿り着いた今も、悲しい事やつらい事を決して忘れたわけではありません。
突如奪われてしまった大切な人や大切なものたち。
それらを忘れるのではなく、胸に強く留めながら歩んで行こうとしています。
失ってしまった悲しみやつらさの中で生きるよりも、共に前に進もうという決意です。
悲しみに生きるより、元気だったころの姿や、楽しかった記憶を思い出し進もうと決めたのです。
それは、言葉で言うほど簡単なことではありません。
当然のことながら、大切な人を失うつらさはこの上ない絶望を伴います。
それでも、希望を捨てずに生きる。
その心の中には、失った人をもうこれ以上悲しませたくないという気持ちも含まれています。
そういった意味で、この曲は震災で犠牲になった方々へのレクイエムでもあると言えます。