映画じゃないわ ありもしないことばかり
ティアラみたいな 手に負えないもの 飾り付けて
時間がないわ 焦らすだけなら いつだっていいでしょ
仕方がないわ シーンを1つとばしてちょうだい
出典: HIMITSUスパーク/作詞:ヤギヌマカナ作曲:ヤギヌマカナ
女の子は、現実を超えるものばかりを手にしようとします。
ついつい現実にありもしないものを求める。
また、宝石のように簡単には手の届かないもので自分を飾ろうとします。
しまいには「シーンを1つだけとばして」と言って時間までも超えようとする。
そうして現実の世界から抜け出そうとする女の子の姿が浮かびます。
これはある種の現実逃避かもしれません。
失敗したり挫けたりすると目の前の現実から目を背けたくなるものです。
フィクションじゃダメ!
スクリーン見つめても 退屈はいない消えない
ひらめきのはやさで 落ちていくの
出典: HIMITSUスパーク/作詞:ヤギヌマカナ作曲:ヤギヌマカナ
現実から抜け出したい女の子は「スクリーン」を見つめます。
スクリーンに映し出されるのは映画や映像作品です。
つまり、それはフィクション=現実ではないものを指します。
フィクションの中には退屈はいません。
フィクションの中では宝石だって身につけられるし、時間だって超えられる。
そんな世界に退屈がいるはずがない。
でも、スクリーンを見ている「こちら側」の女の子の中の退屈は消えません。
映画を観たときは誰だって興奮します。
でも、映画を観終わればまた現実の世界に帰ってくる。
安心できるけど、ちょっと切ないような体験をした人もいるかもしれません。
そう。現実から逃避しようとしても、肝心の自分自身は変わらないのです。
女の子はそのことを閃いて、落ちていきます。
スパークして忘れる!
ひみつはスパーク!スパーク! 壊してよ、ねぇ
螺旋はすぐに燃やして
ひみつはスパーク!スパーク! とばしてよ、ねぇ
全て忘れていいでしょ
出典: HIMITSUスパーク/作詞:ヤギヌマカナ作曲:ヤギヌマカナ
現実とフィクションの間でもがく女の子はどうするか。
ひみつをスパークさせて、全てを壊そうとします。
何を壊そうとするのか。それは「螺旋」です。
この螺旋は、MVでも登場した「DNAの二重螺旋」です。
DNAには、それまで積み重ねてきた生き物としての記憶が詰まっています。
そのDNAをスパークした火花で燃やすことで、全てを忘れてしまいたい。
そんな自暴自棄とも取れる女の子の叫びが聴こえてきそうです。
でも、全てを忘れることなんてできません。
いいでしょ?と聞いても「いいよ」という言葉は返ってこないのです。
だから、女の子は現実へと帰っていきます。
現実にこだわって!
現実に帰る少女
映画じゃないわ ありふれたくだらないことばかり
ティアラじゃないわ 手に届くもの 飾りつけて
時間がないわ 焦らすだけなら 約束しないでよ
仕方がないわ シーンは1つもとばせない
出典: HIMITSUスパーク/作詞:ヤギヌマカナ作曲:ヤギヌマカナ
全てを忘れようとした女の子はその後どうしたのか。
この部分の歌詞は1番のAメロの歌詞とは真逆のことを歌っています。
世の中にあるのはありふれていて、くだらないものばかり。
身につけられるのも宝石じゃなくて、手に届くものだけ。
そして、時間も超越することなんてできない。
現実を超えられないことを「仕方がないわ」と諦めながらも受け入れていきます。
少女だった主人公が一つ成長を成し遂げるのです。
逃避しようとしていた現実を受け入れて、その上で歩いていく。
そう解釈すると、他の歌詞も違うように見えてきます。
現実を駆け抜けて!
スクリーン見つめても 退屈はいない消えない
ひらめきのはやさで 駆けていくの
出典: HIMITSUスパーク/作詞:ヤギヌマカナ作曲:ヤギヌマカナ
スクリーンと女の子の関係は変わりません。
スクリーンには退屈はないけど、こちら側は退屈だらけ。
でも、現実を受け入れた女の子は一味違います。
1番ではフィクションとのギャップに気がつき、落ち込んでいた女の子。
後半の歌詞では、現実の中を閃きの速さで駆け抜けていくのです。
これは現実を生き抜いていく力を身につけた女の子の姿に他なりません。