女性ファンからも人気の高い「イノチミジカシコイセヨオトメ」
キャリアを重ねるごとに着実にファンを増やし続けるクリープハイプ。
最近ではドラマや映画、そしてCMとのタイアップにも非常に数多く抜擢されていますね。
今や国民的ロックバンドといっても過言はないでしょう。
そんなクリープハイプにも、かつて厳しい冬の時代がありました。
インディーズ時代にはなかなかメンバーが固定せず、次々と脱退、入れ替わりを繰り返します。
一時は尾崎世界観1人で活動を続けた時期もありました...。
今回はそんな冬の時代から追いかけているファンの間でもっとも人気の楽曲。
「イノチミジカシコイセヨオトメ」を紹介させていただきます。
忙しい日常の中でふと抱える寂しさや、はっきりと見えない未来にそれでも捨てきれない希望。
そして多くの人達がもっているであろう、誰にも言えないあんなことやこんなことに関する秘密。
それらをリアルに、真に迫る表現で描いた歌詞が大勢のファンに支持を受け続けています。
歌詞に散りばめられた様々な切ないキーワード。
それらを元に楽曲に込められた意味を徹底解釈いたします。
「イノチミジカシコイセヨオトメ」の歩み
「東京とライブ」から「死ぬまで一生愛されてると思ってたよ」まで
まず最初に、この楽曲について皆さんにより深く理解をしていただくために。
楽曲の成立したバックグラウンドから解説をしておきたいと思います。
「イノチミジカシコイセヨオトメ」の初出はインディーズ時代の初期作品「東京とライブ」。
「東京とライブ」は少量プレスの自主製作盤のため、現在は廃盤となっています。
今をときめくクリープハイプの、超初期の二度と販売されない貴重な音源。
その為現在は超レアアイテムとして、あちこちで高値で取引されているそうですね。
しかしその後メジャー1stアルバム「死ぬまで一生愛されてると思ってたよ」にこの曲は再録されました。
ライブでの定番曲ということもあり、きっとファンなら一度は耳にしたことがあることでしょう。
初期クリープハイプ特有のソリッドなギターリフ。徐々に熱気を帯びてゆく尾崎世界観の歌声。
そこで歌われるのはある女性の哀しい日常の光景でした...。
映像作品としても制作された「イノチミジカシコイセヨオトメ」
そして実はこの曲、楽曲だけでなく曲をテーマに映像作品も制作されています。
この曲がどれだけ多くのファンに愛されているかが、お分かりいただけるでしょうか。
1stアルバムの初回盤。
こちらに収録された松井大吾監督作のショートムービー、「イノチミジカシコイセヨオトメ」。
後に2013年の映画「自分の事ばかりで情けなくなるよ」。
その作品にも、群像劇の1篇として収録されることになります。
同映画では「あたしの窓」「おやすみ泣き声、さよなら歌姫」「傷つける」も映像化。
映画のタイトルは「吹き零れる程のI、哀、愛」のボーナストラックから取られています。
池松壮亮、黒川芽以も出演したこちらの映像作品。
なんと第26回東京国際映画祭の、日本映画スプラッシュ部門に出品されたものともなっているんですよ。
クリープハイプの楽曲を、ストーリーで捉えるという斬新な手法。
これまであまり実現されなかったこの方法は、映画界にも大きな爪痕を残したのです。
改めてクリープハイプの持つ影響力を、実感するような出来事でもありますね。
女性ファンの心を掴んで離さない楽曲の魅力
ですが実は意外なことに、MVは制作されていないのです。
前述したショートムービーがその世界を表現しているからでしょう。
個人的にはMVが必ず必要とは思いませんが、ファンからの要望は多そうですね。
上の動画は2018年池袋PARCOにて開催された「クリープハイプのすべ展」のプロモーション映像。
yonigeの牛丸さんがカラオケで「イノチミジカシ~」を歌う様子はとてもシュールです。
yonigeだけでなく、同業者であるロックバンドからの支持も高いクリープハイプ。
クリープハイプ単独のファンだけでなく、邦楽ロック自体が好き、という方もきっと多いはず。
そういった人々の声から、きっとこのような企画が立案されたのではないかと思います。
この動画を見ているとまるで元々yonigeのために制作されたような。
そんな楽曲のようにも感じられますね。
この楽曲が表現するのはとある職業で生計を立てる女性の心情です。
そのためか女性からの支持が多い楽曲でもあるのです。
そのような「イノチミジカシコイセヨオトメ」の楽曲を取り巻く世界観。
ここまでで、その概要を大きく説明してきました。
いよいよここからはそれらを踏まえて、楽曲の歌詞を説明してきましょう。
この曲の歌詞では、どのような女性の風景や心情が描かれているのでしょうか?
夜の世界で生きる女性、願いはなんですか?
生まれ変わることはできますか?
ピンサロ嬢になりました
ピンサロ嬢になりました
生まれ変わったら何になろうかな
コピーにお茶汲みOLさん
出典: イノチミジカシコイセヨオトメ/作詞:尾崎世界観 作曲:尾崎世界観
今回の記事で初めて「イノチミジカシ~」の世界に触れるという方もいるかもしれません。
そのため今回はあえて2回目のAメロ部分から解説したいと思います。
同じテーマ設定で描かれたインディーズ作品に収録されている「欠伸(あくび)」という楽曲。
そこでは「性」に関する表現はオブラートに包まれて歌われていました。
しかし「イノチミジカシ~」はこのパートで赤裸々に職業を歌い上げるのです。
さらに現状に対する絶望感は「イノチミジカシコイセヨオトメ」の方が数倍上を行っています。
普通に高校を卒業して、もしかしたら大学や専門学校に行って、どこかの会社で普通に働く。
いわゆる多くの人が普通というような人生の道のりを、きっと彼女も歩むはずだったのです。
ですが、いつのまにか彼女の人生の道のりは、どこかで狂い始めているようでした。
もしかしたらどこで狂い始めたのか、どうして狂い始めたのか。
それすらも、もうわからないのかもしれません。
私の人生はこんなはずではなかった...。
この歌の主人公の人生観は上記歌詞の3,4行目のフレーズに集約されます。
なんと彼女はOLになりたかったのです。
今はあまりOLという表現は用いないかもしれません。
しかしそのことも含め彼女の人生設計に、すでに「働く格好いい女性像」は存在しないのです。
働く女性が雑用ばかり押し付けられる環境。
それ自体が現行のポップソングでは絶望と紙一重に歌われる時代です。
それにもかかわらず主人公にはそのような環境でさえ、桃源郷のように見えているのが分かります。