意外だったのは、子供の声と米津玄師の曲との親和性。
米津玄師の曲は、時に難解といわれることもあるその深淵なる歌詞の世界が大きな特徴。
そしてその音楽は、研ぎ澄まされた感性がひりつくようなものが多い印象があります。
独特のダークさをどこかに感じさせる、彼の世界です。
小学生が彼の曲を歌うと聞いたとき、幼さの残る子供たちの声で複雑な彼の音楽が十分に表現できるのだろうか。
そう少し不安に思った方もいたのではないでしょうか。
米津玄師はこの曲を作るにあたって、”子供の頃の記憶”をテーマにしたといいます。
彼自身がFoolinのメンバーと同じ、子供だった頃。
今の米津玄師を構成する源にもなっている幼い頃の記憶。
それをその鋭い感性で表現した曲は子供たちの声により新たな命を吹き込まれました。
まるで輝くような、はつらつとした生命力を感じさせる仕上がりとなっています。
子供たちも共感できる歌詞でありながら米津玄師としての世界は失わず、
親しみを感じさせるこの曲は今後多くの人に寄り添うものになるのは間違いないでしょう。
ダンスを手掛けたのは辻本知彦と菅原小春
ちなみにこの曲のダンスは、辻本知彦と世界的に評価されている菅原小春が手掛けています。
子供らしく、元気いっぱいに伸び伸びと踊る姿を見ていると自然に笑顔があふれてくるようですね。
「パプリカ」の歌詞
ではここから、「パプリカ」の歌詞を見ていきましょう。
鮮やかな夏の情景
曲りくねり はしゃいだ道
青葉の森で馳け回る
遊びまわり 日差しの街
誰かが呼んでいる
夏が来る 影が立つ
あなたに会いたい
見つけたのはいちばん星
明日も晴れるかな
パプリカ 花が咲いたら
晴れた空に種を蒔こう
ハレルヤ 夢を描いたなら
心遊ばせあなたにとどけ
出典: パプリカ/作詞:米津玄師 作曲:米津玄師
無邪気に遊んでいた幼い頃の夏の日。
今では大人になって、野原を駆け回ることはなくなりました。
それどころか、毎日に追われ空を見上げることすらなくなってはいないでしょうか。
心配事など何もなく、ただ永遠にこの日々が続くと思っていた子供時代。
友だちと遊んで、自然と触れ合い、それが世界の全てだったあの頃。
多くの人が心に持つ風景でしょう。
米津玄師ならではの鮮やかな情景描写に圧倒されます。まるで目に浮かぶよう。
子供が歌うことを意識してのことか、米津玄師の歌詞としては比較的簡単な言葉が使用されています。
それでもその世界観は変わることはありません。
いちばん星に希望を見つけて、その姿に会いたい人のことを重ねます。
米津玄師ならではの言葉選び
雨に燻り 月は陰り
木陰で泣いていたのは誰
一人一人 慰めるように
誰かが呼んでいる
喜びを数えたら あなたでいっぱい
帰り道を照らしたのは
思い出のかげぼうし
パプリカ 花が咲いたら
晴れた空に種をまこう
ハレルヤ 夢を描いたなら
心遊ばせあなたにとどけ
出典: パプリカ/作詞:米津玄師 作曲:米津玄師
とても米津玄師らしい言葉の使い方が出てきました。”雨に燻り”……趣のある表現ですね。
親しみを感じさせる歌詞の中にもこうした表現を用いることで、より深い情景が表されています。
楽しかったこと、素晴らしかった思い出の中には常にあなたの笑顔が一緒にあった。
かけがえのないそんな幸せな思い出に守られて涙をぬぐう日もあることでしょう。
培ってきた思い出=経験は自分の支えになり、そして糧にもなり、自分を形成するものの一部となるのです。
「パプリカ」に込められた想い
会いに行くよ 並木を抜けて
歌を歌って
手にはいっぱいの 花を抱えて
らるらりら
パプリカ 花が咲いたら
晴れた空に種を蒔こう
ハレルヤ 夢を描いたなら
心遊ばせあなたに届け
かかと弾ませこの指止まれ
出典: パプリカ/作詞:米津玄師 作曲:米津玄師
赤や黄色など、野菜の中でも一際色鮮やかなのがパプリカ。
米津玄師はパプリカに直接的な意味を求めたわけではなく、
その語感の良さ、そしてその鮮やかさに惹かれたそうです。
きっと鮮やかなのはそれぞれの想い。そして愛。
人と人とが関わり合うこと。そして努力して前に進んでいくこと。
そうした人とのつながり、それがこの”パプリカ”という言葉。
そしてこの曲に米津玄師が込めた想いなのではないでしょうか。