「ZOO」は現代社会の象徴
今回は、辻仁成が作詞・作曲した楽曲「ZOO」をご紹介いたします。
2009年、38歳とあまりにも若くして世を去った「川村かおり」のデビューシングルでもあるのです。
長きにわたり、ドラマやCMなどに使用され愛されている楽曲でもあります。
女優が劇中の役で歌い、なんとCDのリリースもしているのです。
人間が持ち得ている、心の隙間。
誰しも抱えている、「闇と光」を絶妙な視点で描写されています。
さすが、言わずと知れた芥川賞を受賞した「辻仁成」といえるのです。
長い時代を経て、現在もなお新鮮さを輝き放ち続ける楽曲でしょう。
ギスギスした世の中に警鐘を
「ZOO」は、1988年に「川村かおり」のデビューシングルとしてリリースされました。
翌1989年に、辻仁成のバンド「ECHOES」でセルフカバーをしています。
後に辻仁成が脚本を務めるドラマで、主人公の菅野美穂が歌い再沸騰したのです。
「必要とされたい」、「愛されたい」が行き交いする複雑な楽曲に仕上っています。
人は孤独であり、また人に依存する生き物である。
誰にでも受け容れられたいのではなく、ただ自分の存在を認められたいだけなのかもしれません。
今もなお古さを感じず、現代を象徴する楽曲といっても過言ではないでしょう。
時空を越え、過去と現代社会をも風刺しているのです。
将来を背負う若い方たちに、ぜひおすすめしたい1曲といえます。
誰かさんとは一体?!「ZOO」の歌詞を余すところなく徹底解釈!
舞台は現代社会?
僕達はこの街じゃ夜更かしの好きなフクロウ
出典: ZOO/作詞:辻仁成 作曲:辻仁成
シーンは、私たちが生きる「人間社会」を描写しているのでしょう。
人間の多種多様なタイプや生活スタイル。
そのあり様を動物の特性となぞらえ、嘲笑っているのかもしれません。
この世に存在する人を多種多様な動物を用い、あだ名をつけているようにも感じとれます。
私たちの生き方そのものに、警告を突きつけているのです。
日々の避けては通れぬ人付き合いや、仕事でのストレス。
いつの時代でも共通する問題です。
そんな鬱憤を晴らせるのは、夜しかないのだといっているのでしょう。
ちょうどいい性格の動物たちが、次々と登場します。
昼は体力を温存し、夜遊びに呆ける者が多すぎるといっているのです。
その背景には、この楽曲「ZOO」が制作された約30年前のバブル景気が関係しているのかもしれません。
我を見失う人たち...
本当の気持ち隠しているそうカメレオン
朝寝坊のニワトリ徹夜明けの赤目のウサギ
誰とでもうまくやれるコウモリばかりさ
出典: ZOO/作詞:辻仁成 作曲:辻仁成
時代は誰しも、夜行性にならざるを得ないほどのバブル景気。
皆が世に浮かれてしまうのも、仕方がなかったのです。
そんな状況にも動じず、キョロキョロと周りの様子を窺っている人もいます。
自分の感情など一切表にだしません。
周囲の状況や流れに乗り、うまく対応するのです。
どの世代にも共通する、ちょっと気の多い性格の人を喩える場合にもよく用いられます。
ともすると、あらゆる場面で順応性がとても高いといっているのかもしれません。
その時々の自分にとって何が1番なのか、優先順位を変化させるのでしょう。
「時を告げる」習性があるはずなのに、サボるわけがありません。
本質的にひたむきなはずの日本人皆が溺れ、はしゃいでいるといっています。
如何にも、自分の能力や力量だと過信している時代だったのです。
本当は、直接関係のない力が作用しているという自覚がなかったのでしょう。
相手によりコロコロ態度を変える、八方美人。
人間社会の象徴が凝縮されているのです。
偽りの姿
見てごらんよく似ているだろう誰かさんと
ほらごらん吠えてばかりいる素直な君を
出典: ZOO/作詞:辻仁成 作曲:辻仁成
自分自身をしっかりと見つめ直せといっています。
他人の真似ばかりをし、何面もの鏡に写る自分を見ていることに満足しているだけなのです。
臆病がゆえ虚勢をはり、日々生きているのは疲れたんじゃないか?
目の前に写る自分だけではなく、広く周りを見渡せと煽っているのです。