孤独な叫びに共感

阿部真央【デッドライン】歌詞の意味を解釈!境界線を越えるとどうなる?必死に守り抜いているのは何?の画像

手負いの獣のような荒々しさと、戦士のような気高さを持った阿部真央『デッドライン』。

内側に癒えない傷を抱えている者にしか分からない孤独が、この歌にはあります。

誰かに理解されたいなんて思わない。

助けてほしいと頼んだ覚えもない。

何も知らないくせに、勝手に心の中まで覗こうとしないで。

差し伸べられた手に容赦なく噛みつくような叫びに、共感する人も多いことでしょう。

自己満足な優しさには、もううんざり。

同情なんてされても煩わしいだけ。

親切の押し売りをする偽善者を、阿部真央が歌でばっさりと叩き切ります。

弾き語りの迫力に思わず鳥肌…

こちらは、アルバム『YOU』の発売を記念して開催されたイベントライブの時の映像です。

会場は「YouTube Space Tokyo」。

ステージと観客との距離が驚くほど近いのが分かります。

こぢんまりとしたライブ会場に響き渡るのは、歌声とアコースティックギターのみ。

弾き語りでここまで迫力あるライブができるアーティストは、阿部真央のほかにそうそういないでしょう。

画面越しであるにも関わらず、このライブ会場の空気に飲みこまれるような感覚を覚えませんか?

圧倒的な歌唱力と、狂暴なまでの表現力。

そして阿部真央の鬼気迫る表情も相まって、思わず鳥肌がたったという人も多いはず。

これはぜひ生演奏を聴いてみたかった…!

ライブに参戦できなかったことを悔やまずにはいられませんね。

悪気がないからこそ質が悪い

曲中の「私」が抱える深い傷と、それを無意識に抉ろうとする「あなた」。

質が悪いのは、あなたに悪気がないというところでしょう。

いっそあなたの行為に悪意があったなら、正面から怒りをぶつけることができたのに。

そんな私の苛立ちと虚しさが感じられる歌詞について、徹底解説していきます。

距離感を間違えないで

そう、踏みこんではならないの
そう、まだそんな仲ではないの

出典: デッドライン/作詞:阿部真央 作曲:阿部真央

ここの歌詞は、まず初めに「私との距離感を間違えないで」で警告されているかのようです。

私はあなたに何もかもを許しているわけじゃない。

してほしくない行為。言ってほしくない言葉。聞いてほしくない話。

そういったものが私にもあることを、ちゃんと理解して。

私はあなたに、「肉体的にも精神的にも気安く触らないで」と勧告しているのでしょう。

あなたのことを心から信用しているわけではないの。

そんなどこか尖った印象を受ける始まり方ですね。

触れられたくない傷

ねぇ、私の何を知ってるの 分かったような口ぶりで
ねぇ、私の何を知りたいの ズカズカと立ち入ってまで

傷隠すこのドアを 力ずくで叩くのは誰?

出典: デッドライン/作詞:阿部真央 作曲:阿部真央

続く歌詞では私の苛立ちが感じられます。

その感情を向けられているのは、当然あなた。

しかしあなたは、私が苛立っている理由を少しも分かっていない様子です。

私の気持ちなんて考えもせず、あなたは無遠慮に心のなかを暴こうとしてきます。

しかもあなたは、自分がしている行為を「君のため」なんて思っていそう。

そういうの迷惑だって言ってるのに。

そんな私の怒りが伝わってきますね。

誰にも見られたくない、触れられたくない傷がある。

だからわざわざ隠しているというのに、なぜあなたはそれを分かろうとしないのでしょう。

私があなたの無神経さを理解できないのと同じように、あなたも私の痛みを理解できないのかもしれません。

見当違いな優しさは、人を傷つけるだけ。

そのことを私は、あなたに向けて叫んでいるのでしょうね。

向きあう覚悟が本当にあるの?

外すのはそれ、そう「南京錠」
荒んだ患部(感部)が待ってる
ちょっと待って、鍵は私が
無理矢理入っては ダメ

出典: デッドライン/作詞:阿部真央 作曲:阿部真央

どうしても私のすべてを知りたいというのなら、強引な真似はやめて。

傷を隠しているドアには、「南京錠」がかかっています。

そしてその先にはきっと、目をそむけたくなるような痛々しい傷跡があるでしょう。

誰にも癒せないこの傷と向き合う覚悟が本当にあるの?

そんな私のあなたに対する疑いも感じられます。

だからこそ私は、あなたに「南京錠」を開ける鍵を渡すことができないのでしょう。

この鍵は、私の心を守る最後の砦(とりで)です。

他人に委ねられるようなものではありません。

しかしあなたは、私が鍵を開けるのも待たないで隠している傷に触れようとしてきます。

それにまた私は苛立ち、同時に焦ってもいるのかもしれません。

あなたにはきっと理解できない