スネアロールのシンプルなイントロから始まる歌詞がこちら。
歌っているというよりは語りという感じです。
MVでは坂本慎太郎以外のメンバーがオレンジアンプに乗っていてちょっとかわいいです。
この部分は難解というほどでもないですね。
主人公はだいたい夜はろくでもないことを考えているようです。
かかってきた電話は取りましょう。
「だいたい俺は今3歳なんだけど」…?
だいたい俺は今3歳なんだけど
2歳のときにはもう分かってたね
それは単純だけど少しの目の位置で
何にでも見えるってことを
出典: ゆらゆら帝国で考え中/作詞:坂本慎太郎 作曲:ゆらゆら帝国
少し難解なのが2番の歌詞。
主人公は3歳……?
どういうことなのでしょうか。
坂本慎太郎は1967年生まれ。
ゆらゆら帝国で考え中がリリースされたのは2000年です。
つまりリリース時は彼は33歳。
そこで3歳を30歳、2歳を20歳とそれぞれ読み替えると納得がいきます。
彼は「少しの目の位置で何にでも見える」ことを20歳の頃には分かっていたのです。
マンガの世界とは?
クレイジーワールド マンガの世界で
クレイジーワールド これからやっていくわけなんだけど
クレイジーワールド マンガの世界も
本当は楽じゃないぜ
出典: ゆらゆら帝国で考え中/作詞:坂本慎太郎 作曲:ゆらゆら帝国
サビ部分では「クレイジーワールド」と連呼されます。
直訳すると「狂った世界」。
それを「マンガの世界」と例えているのでしょう。
坂本慎太郎がマンガ家を目指していたわけでは多分ないと思います。
この曲がリリースされたのはメジャーデビューしたての頃。
音楽業界は、彼にとっては狂った世界だったのかもしれません。
マンガのようなちょっとおかしい世界でこれからやっていく。
そんな彼の考えが歌詞に反映されているのでしょう。
ゆら帝は何を「考え中」だったのか。
少しの目の位置でなんにでも見れるし、変われる
それは単純だけど
少しの目の位置で何にでも変われるって
馬に変身 盛り上がって
ないときもなんらかの楽しみかたがあって
迷子になった覚えはない
スピードに乗ってる実感もない
でも最後に飛び乗った わけもないぜ
出典: ゆらゆら帝国で考え中/作詞:坂本慎太郎 作曲:ゆらゆら帝国
坂本慎太郎の最も言いたいことが詰まっているのがこの部分でしょう。
「少しの目の位置でなんでも変われる」のです。
彼が与えられたメジャーという環境。
そこはまさに「クレイジーワールド」でした。
しかし、馬に変身すれば当然目の位置が変わります。
視点が高くなれば、なんらかの楽しみ方を見つけることができるのでしょう。
最後に飛び乗ったわけもない
ゆらゆら帝国は1989年の結成からメジャーデビューまで、実に10年近くインディーズでした。
結成当時はバンドブーム真っ只中。
若いバンドが次々とデビューしていく中、取り残されている感もあったのでしょう。
もちろん「迷子」にはならず、彼らなりに迷いなく活動してきたはずです。
しかし「スピードに乗ってる実感」もなかったのでしょう。
そしてやっとメジャーデビューしたと思ったらそこは「クレイジーワールド」。
バンドブームも終焉を迎え、J-POPがシーンを席巻していました。
坂本慎太郎は考えます。
一体この状況をどう考えればいいのか。
そこで「目の位置を変える」ということに思い至ったのではないのでしょうか。
そう考えれば、「最後に飛び乗ったわけ」でもないと思えるのです。
この考えが名盤『空洞です』の独特な、空虚な音楽性に繋がったのでしょう。