トップアイドルに

天性の歌唱力

本田美奈子.【Oneway Generation】歌詞を解説!大人に理解されなくても…夢を信じよう!の画像

1987年2月にリリースされた「Oneway Generation」

本田美奈子.(当時は本田美奈子)の9thシングルで、週間チャート2位の大ヒットを記録しました。

1985年4月のデビュー当初から、歌唱力の高さが注目された彼女。

華奢な体からは想像できないパワフルな歌声は、アイドルのレベルをはるかに超えるものでした。

1980年代を通しても、彼女の歌唱力を大きく上回るほどのアイドルは存在しなかったといえます。

1985年9月に発売された4thシングル「Temptation(誘惑)」は、スマッシュヒットを記録。

翌年2月には5thシングル「1986年のマリリン」が、念願だったチャート上位に食い込みました。

「Oneway Generation」は、トップアイドルに上り詰めた時代を代表する曲の1つ。

彼女にとっての「Oneway」、歌に捧げた人生の物語は、ここから始まったのです。

MVのかわいらしい姿とはあまりにも次元が異なる、パワフルなボーカル。テクニックを駆使した歌唱力の高さに驚かされます。

ロックへの接近

本田美奈子.【Oneway Generation】歌詞を解説!大人に理解されなくても…夢を信じよう!の画像

「Oneway Generation」がリリースされた1987年。

BOØWYが大ブレイクしTHE BLUE HEARTSUNICORNなどがメジャーデビューした年です。

空前のバンドブームの足音がすぐそこまで近付き、日本中にロック旋風が巻き起こりつつありました。

そんな時代に送り出された「Oneway Generation」。

作曲家の筒美京平と、作詞家の秋元康がタッグを組んで生み出した曲です。

大ヒットした「1986年のマリリン」なども、彼らの手によるもの。

ともに第一線で活躍する2人の音楽家が、ロックという新たな時代のアイコンを見逃すはずもありません。

サウンドと並び、パワフルなボーカルがものをいうロックは、彼女の歌唱力を生かす上でも最適でした。

男性的なイメージが強かったロックに、力強い魂を込められる女性シンガーがまだまだ少なかった時代。

当時を振り返ってみても、彼女ほどこの曲にふさわしいシンガーはいなかったのではと思えるのです。

ポジティブな歌詞

共感を呼んだアプローチ

人ごみの まん中
今居る場所さえ わからないように
自分の生きかたが
見えない時ってあるよね
話してはみたけど
言葉が 一方通行みたいで
遠くの夢なんて
大人はわかってくれない

出典: Oneway Generation/作詞:秋元康 作曲:筒美京平

イギリスのロックバンドThe Who「My Generation」(1965年)を思い起こさせるタイトル。

「年老いる前に死にたいんだ」

そんな過激な歌詞とサウンドで10代のフラストレーションを表現した、世界のロック史に残る名曲です。

さて、「Oneway」は「片道の」、「Generation」は「世代」という意味。

直訳すると、片道の世代

元の場所に帰ることなど考えずに、目指す道をひたすら突き進むという冒険心が伝わります。

「言葉が一方通行みたいで」という歌詞の「一方通行」も、「Oneway」が意味するところ。

「大人はわかってくれない」

いつの時代も、親や教師に対して若者たちが抱く感覚、つまりジェネレーション・ギャップです。

この曲が多くの若者の共感を集めて、大ヒットした理由がありました。

「見えない時ってあるよね」

歌い手が一方的に言い放つメッセージではなく、優しく語り掛けるような歌詞です。

前に進もうとする強さを打ち出すとともに、リスナーに寄り添うアプローチが、とても新鮮だったのです。

「僕等」という一人称

俺等は
Oneway Generation Oneway Generation
今 ひとりで何かを探して
Oneway Generation Oneway Generation
今 知らないどこかに向かって
戻れない片道のチケットと
夢だけを信じたい

出典: Oneway Generation/作詞:秋元康 作曲:筒美京平

若い世代の一体感と共感を誘ったもう1つの仕掛けは、「僕等」という男性的な言葉です。

のちに、浜崎あゆみをはじめ、女性シンガーの曲でも使われるようになった「僕」という一人称。

1980年代当時、かわいらしさが求められるアイドルの女性歌手が口にすることは、まずありませんでした。

女性歌手の「僕」が発するのは、ジェンダーフリーを想像させる開放的な響き。

リスナーがそれぞれの性別に関係なく、曲の主人公になれる効果があります。

「Oneway Generation」ではサビに入る直前の、耳に残るポイントに配置された「僕等」という言葉。

当然のごとく強いインパクトを与えた半面、違和感はまったく覚えさせませんでした。

か弱さを微塵も感じさせない圧倒的な歌唱力は、男性的な響きの言葉にもマッチしていたのです。

才能が結集した曲

恋人を送った
プラットホームは ガランとしていて
空っぽの心が
次の列車を待っている
サヨナラのかわりに
手に入れたものは 小さな自由と
大きな悲しみと
中くらいの思い出だけさ

俺等は
Oneway Generation Oneway Generation
もう 地図など必要ないから
Oneway Generation Oneway Generation
もう まわりを気になどしないさ
青春の終点に 着いた時
何が待っているのか

出典: Oneway Generation/作詞:秋元康 作曲:筒美京平