仕事を終えて
おばけガード抜けてさ もう今日はこのぐらいで
出典: ODDTAXI/作詞:スカートとPUNPEE 作曲:スカートとPUNPEE
おばけガードというのは、高輪ゲートウェイ駅そばにある高さが1.7mほどのとても低いトンネルのことです。
おばけトンネルや、首曲がりのトンネルとも呼ばれます。
現在は駅周辺の開発により通行止めとなっていて、再びこのルートが使用できるのは2032年の予定です。
このおばけガードは品川駅に行くのにショートカットになるので、タクシー利用者にも好まれる道でした。
この箇所は、PUNPEEさんがタクシー運転手の方から聞いた話に着想を得て盛り込まれた箇所となっています。
東京の街でタクシーを走らせ、今夜はそろそろ仕事を終えようという様子をイメージさせる歌詞ですね。
周りみればほら 顔なじみの古馴染みのひねくれ者 金返せよ
出典: ODDTAXI/作詞:スカートとPUNPEE 作曲:スカートとPUNPEE
古くから知っている身近な存在の面々が、まわりにいます。
ひねくれ者と呼ぶ相手に親しみを感じている様子も伝わってきますね。
いつもの日々が繰り返されていく様子が伝わってくる描写です。
行き先が見つからない
揺れて こぼれ落ちて
ほころびは連なって
まるで袋小路じゃないか!
出典: ODDTAXI/作詞:スカートとPUNPEE 作曲:スカートとPUNPEE
人は何かしら選抜を受けて、人が集まって暮らす社会の中で生きています。
前述された学校についてもそうです。
受験という選抜があって、その学校で学ぶ機会を与えられます。
様々な仕事に関してもそうです。
仕事を得るために面接を受けるなど、選抜を受けながら役割を手に入れます。
そうした社会の中、選抜からふるい落とされることも起きてきます。
縫うように日々を重ねて生きてきても、ほころびが生じてしまう。
なかなか辛い状況から抜けだすことが出来ない状況は袋小路のようです。
競争社会にはシビアな面があり、自分の強みを生かしきれずに辛さを抱えることも起きてきます。
僕らはずっと
扉たたけないまま
出典: ODDTAXI/作詞:スカートとPUNPEE 作曲:スカートとPUNPEE
ベートーベンの「交響曲第5番」は、力強いフレーズで知られます。
こちらは1説には運命の扉を叩く音を表現しているとのことです。
また、ボブ・ディランの「天国への扉」の歌詞は、天国の扉をノックしている死にゆく心情とも解釈できます。
自身の運命を変える決定的な選択も、天国へ行くことも選択しない。
辛い現状を維持するだけのやるせなさが伝わってきます。
記憶の掛け違いと足りないもの
掛け違えた記憶
見慣れたはずの景色に
足りないものがあるんだ
混ざり合わない目線の理由を
思い出せるか
出典: ODDTAXI/作詞:スカートとPUNPEE 作曲:スカートとPUNPEE
以下の内容は「オッドタクシー」の物語を少しばらしてしまう箇所があるのでお気を付けください。
「オッドタクシー」の主人公小戸川は、脳の損傷により記憶を失い、視覚失認が起きています。
この視覚失認により、小戸川は自分自身を含め人間が動物に見えてしまう症状を患っています。
過去、小戸川の両親は幼い小戸川を巻き込み、無理心中をして命を失いました。
小戸川はその事故の後遺症で、人間がすべて好きな動物に見えるようになったのです。
視線を交わす街の人々は、動物の姿をしています。
自分を苦しめたのは人間だったかもしれません。
だけど、今街で一緒に日々を過ごす人たちも人間なのです。
今の慣れた暮らしでは、人間だから心を通わせられないといった概念もなくなりました。
物語の最後には、小戸川は動物に見えていた人々の真の人間の姿を見ることができるようになります。
小戸川の抱えていた自身にまつわる謎が解き明かされ物語は終わりを迎えます。
小戸川と関わる登場人物も、それぞれが行き先を見つけたり、留まったりしながら日々を続けていきます。
同じ景色を共有していても、共感することもあれば、思いやりを持つ難しさを感じることもある日々。
何かぼんやりと思い出せない記憶や思いの行き違いもあるし、何事も感じ方は人それぞれです。
それぞれの思いすべてを汲み取ることはとても難しいことのように思えます。
「ODDTAXI」歌詞考察まとめ
街で暮らす人との距離感を巧みに表現した歌詞
TVアニメ「オッドタクシー」の主題歌として制作された楽曲「ODDTAXI」。
夜の街を滑らかに走るタクシーのように、落ち着くミッドテンポのお洒落なメロディー。
そこに載せられるリズミカルな歌詞は、日常に抱える辛さが垣間見えて心に刺さるものがありました。
多くの人が集う街で、様々な個性を持つ人々がそれぞれの日々を過ごしている。
各自の目線を知ろうとしたり、人と関わって心を通わすのはとても難しいこと。
それでも続けていく日常への複雑な思いや、人同士の関わり。
それらを見事にイメージさせるセンス溢れる言葉選びも秀悦な楽曲でした。