どこらへんが”新世界”なの?
思春期を描いた歌詞
繰り返す毎日が突然色を変える
そんなことどっか望んでいたんだけどね
いざとなると臆病者でした 秘密ね
出典: 新世界交響楽/作詞:ふっくん 作曲:ふっくん 編曲:マウマウ、324P、江口亮
「新世界交響楽」。
一見するとクラシックの題名のような曲名です。
歌詞は恋愛ではなく新しい世界に行きたいけど行けないもどかしさを描いています。
思春期というものは誰にでも訪れます。
そこで味わう葛藤は「自分は一人前なんだ」という自負と世間とのギャップ。
誰もが先生や大人の意見に対して、抵抗と違和感と感じる時期です。
実際におかしいこともありますが……。
意見を述べても人生経験が浅いからと周囲の大人は一蹴します。
その大人目線の考えが中学生や高校生を噴気させるのです。
中学生になれば電車の料金も大人と同じです。
それなのに世間は一人前とは扱わない。
いっそのこと”中人”という電車料金を作ればいいのです。
年齢は12歳から18歳。
19歳になったら大人料金です。
デジタルサウンド×弦楽
不思議な歌声が魅惑的
ドラムとデジタルサウンドによるオープニング。
リズムはポップ。速度はアップテンポ。歌いやすいメロディーです。
そして歌声に合わせてボカロのようなデジタル音声加工が施されています。
ちょうど”ヒト”と”ボカロ”の中間のような不思議な歌声です。
歌がのってきたところで覆いかぶさるのが弦楽器です。
バイオリン、ビオラ、チェロでしょうか。
この弦楽器によってオーケストラ感を演出しています。
近くで見るとわかりますが、ビオラはバイオリンよりほんの一回りほど大きい設計。
ニューヨークのカーネギーホールで見たら、判別できないでしょう。
ポップとクラシックの融合
クラシックコンサートに足を運ぶ人は少ない21世紀。
それでも日本の音楽シーンには度々クラシック音楽がミックスされています。
ドラマ「カルテット」ではバイオリン、ビオラ、チェロの四重奏がふんだんに流れています。
バイオリンは第一と第二で二つと換算します。
第一バイオリン、第二バイオリン、ビオラ、チェロで四種類です。
宮廷音楽を飛ばして西洋の楽器を手に入れた日本ではクラシックを聴く人は少数派です。
好きなクラシックの名曲のタイトルをポンポン挙げられる人は稀(まれ)でしょう。
一方で他のジャンルとの邂逅(かいこう)を果たしています。
それが「新世界交響楽」なのです。
クラシック音楽が手段を模索し、最後に行きついた結果は他ジャンルとの融合だったのです。
音階の広いクラシック楽器はほとんどメロディーを奏でることができます。
安いイヤホンを買うとクラシック音楽の低音が聴こえないのは、そのためです。
「新世界交響楽」を聴くときはプチプラ価格のイヤホンにするといいかもしれませんね。
PVはマイク争奪戦の様相
センターを誰が取るか?
PVは黄金のマイクの主導権を争うスタイル。
マイクをコロンビアのエルドラド(黄金郷)のごとくピカピカさせています。
アイドルにとってメインボーカルはグループの華。
虎視眈々(こしたんたん)とライバルが狙いを定めます。
パイオニアはテニス部・小林歩乃佳
元気の良さがうりの小林歩乃佳
廊下を颯爽(さっそう)と駆け抜けるのはテニス部の小林歩乃佳。
ヒーローさながらにスライドして、一直線の廊下の先にある黄金マイクに向かいます。
武器はテニスラケット一つ。
背後からは調理部が目玉焼きを”フライ返し”しながら階段を駆け上がります。
そうとは知らずに三十秒もマイクを独占する小林歩乃佳。
校内放送を通じて全校に小林歩乃佳の歌声が流れます。
実験室で、体育館で、屋上で、教室でマイクを狙うメンバーが武装蜂起(ぶそうほうき)します。