一秒でも早く

携帯かけるより
渋滞のバスより
君が待つ場所まで
走る方がいいさ

出典: 青春のラップタイム/作詞:秋元康 作曲:川浦正大

少しでも早く彼女に会いたい。その気持ちが主人公の心を逸らせます。

遅れてしまった事情を電話で説明する時間も惜しいのでしょう。

一刻も早くたどり着くため、最短距離を突き進みます。

バスに乗って行くことも考えましたが、夕方の道路は混雑しているようです。

余計に時間がかかってしまうかもしれません。

走る、それが今できる最善の行動なのです。

バスの利用を考えるほどに、学校から駅までの距離はあるのでしょう。

その距離を走るのは簡単ではありません。

それでも主人公は少しでも早く彼女に会うため困難な道を選ぶのです。

彼の気持ちの大きさが伝わってきますね。

思い浮かぶ姿

夕陽が落ちる直前の空は
ため息の風が吹き
予定のずれた
今日の事情を
AH- 忘れてくれる
(GO!GO! GO!GO!GO!)

出典: 青春のラップタイム/作詞:秋元康 作曲:川浦正大

刻々と日が沈みゆく中に吹く風が描写されています。

憂鬱を感じさせることから、一人駅で待つ彼女の心情を表しているのでしょう。

いつまでもやってこない主人公に対して長い息を吐いている彼女。

物憂げなその姿は、夕暮れに吹いた風が主人公に抱かせた想像です。

一人寂しく自分を待つ彼女は、きっと心配や不安を感じていることでしょう。

これ以上彼女にそんな想いをさせたくない

主人公の心に、強い感情が沸き上がります。

彼女を一人にしてしまっているという事実、それだけで主人公の足は速まります。

遅れてしまったから走るのではありません。彼女が待っているから走るのです。

疲れなど感じている暇はありません。

彼女のためひたすらに主人公は足を前へと進めます。

想いのスピード

青春のラップタイム
自己ベストだよ
陸上部から
スカウトされるかもね
愛が僕を走らせるんだ
こんなに急いでいるのは
好きだから

出典: 青春のラップタイム/作詞:秋元康 作曲:川浦正大

彼女の下へひた走る主人公。そのスピードは今まで走った中で一番といえる程のものでした。

陸上選手にもひけをとらない速さで彼は町を駆け抜けています。

自分でも感じたことのない感覚に、彼自身の心も高揚しているようです。

自分の中で一番。それは単に速さだけを示すわけではありません。

これほどまでに誰かの為に一生懸命になったことはない。

そんな意味でも、彼の人生の中で一番の経験だったのでしょう。

愛のために走る、という歌詞からもそんな心境が感じられます。

少々青臭い台詞ですが、若く全力で今を生きる等身大の少年の姿を見事に現した歌詞だといえるでしょう。

時を経て振り返ると眩しく感じられる、そんな全身全霊の輝きはまさに青春を感じさせます。

君が好き

輝く瞬間

青春のラップタイム
競うみたいに
息を切らし
汗びっしょりになって
1秒でも巻き返そう
青春のラップタイム
自己ベストだよ
脇目ふらず
君が待つあの場所まで
一生懸命に
走ることさ
たったひとつの理由は
好きだから

出典: 青春のラップタイム/作詞:秋元康 作曲:川浦正大

最後のサビでは、これまでの歌詞で描かれていた想いをよりはっきりとした言葉で描きます。

部活で遅れてしまった、そんな理由は関係ないのです。

待ち続ける彼女に一秒でも早く会いたい。そんな純粋な想いが主人公を走らせます。

大好きな人のため、息を切らして走る。それほどまでに懸命になれる恋に主人公は出会ったのです。

そんな自分が新鮮で誇らしく感じられる。

彼女を好きと想う心によって、自分に自信を持てる自分を好きになれるのです。

彼女への愛が自分をこれまで以上に輝かせていきます。

好きという彼女への想いを堂々と掲げて彼女の下へ全力で走る。

そんな主人公の姿がきらきらと輝いて見えるようです。

青春を競う

歌詞にも何度か登場する楽曲のタイトル。

彼女の下へ走る様子が、陸上競技に魂を燃やす選手たちにたとえられています。

歌詞の中で、誰かと記録を競っているような描写がありました。

主人公は一体誰とタイムを競い合っていたのでしょう。

その答えは、世界中の全ての人たち。そして自分自身です。

彼女との恋は、主人公を全速力で走らせます。

彼のこれまでの人生の中で一番に心を傾けられるものが彼女の存在でした。

自分史上最高の恋。最高の「好き」を抱かせてくれたのが彼女なのです。

そんな自分たちの恋は、この世界の誰にも負けないくらい熱く大きいものに違いない。

主人公はそう思っているのです。

世界中のどんな愛より、自分が彼女へ捧げる愛が一番である。

「青春のラップタイム」はそんな自信に満ちた恋心を表しているのです。

掛け替えのない時間