さよならのときの 静かな胸
ゼロになるからだが 耳をすませる

生きている不思議 死んでいく不思議
花も風も街も みんなおなじ

出典: いつも何度でも/作詞:覚和歌子 作曲:木村弓

最初の部分は「生物の死」を表していますね。

異世界に迷い込んだ少女が初めて身近に体験する「死ぬかもしれない」という感覚。

死んでしまったら心臓が再び動くことはありません。

そのことに呆然とし、空っぽになってしまった少女。そこで初めて気づきます。

ただの風景だった草花も池の魚も、何もかもが「生きて」いるのだと。

自分がここにいるのも生きているから。そしていつかは自分も「ゼロ」になる日が来る……。

それまでに自分が出来ることは何だろう。

少女の目の前が段々クリアになっていく様子が見えますね。

「生きる」という真理を垣間見てしまった少女はこの異世界で多くのことを学んでいきます。

おそらく異世界で学んでいることは学校や社会ではなかなか教えてくれないことです。

現代の社会で「死」と直接触れ合う機会というのは限られています。

何か大事なことに気付きそうな少女。

彼女はこの気付きをどのように感じているのでしょうか。

少女に死生観はまだ少し難しいのではないかと思う人もいるでしょう。

おそらく少女自身もピンときてはいないはずです。

しかし、心のどこかで生きることと死ぬことの本質的なものを感じ取ることはできたのではないでしょうか。

少なくとも元の世界でいるときよりかは生死との距離が近づいています。

元の世界は人間社会の決めごとで自然の流れを感じる機会が埋もれていることが多いです。

遠い地域に住んでいる親戚の出産のために仕事や学校を休んで祝いにいくということはあまりしないでしょう。

今はビデオ通話やLINEなど手軽にメッセージを送ることができるからです。

それだけでも十分事足りる社会になっています。

しかし、実際に生まれたての赤ちゃんを見ること。

赤ちゃんを見る両親の慈しみの表情などを実際に見ることはできません。

「死」についても同じことがいえます。

近い身内や、よほど親しくしていた友人などでないと葬式や死に目に遭遇することは少ないでしょう。

昔はよく遊んでいた、あの子が数年前に亡くなっていた。

特に社会人になると、そんな話はよくあるのではないでしょうか。

いつの間にか自分の知っている人がこの世から去っていた。

聞いた時はショックかもしれませんが、実際に最期の別れをしないとどこか現実味がありません。

そんな言葉で言い表すには難しく、心の奥で感じるような出来事が少女のいた元の世界では極端に少ないのです。

そのくちびるは歌も歌える

呼んでいる 胸のどこか奥で
いつも何度でも 夢を描こう

かなしみの数を 言い尽くすより
同じくちびるで そっとうたおう

閉じていく思い出の そのなかにいつも
忘れたくない ささやきを聞く
こなごなに砕かれた 鏡の上にも
新しい景色が 映される

出典: いつも何度でも/作詞:覚和歌子 作曲:木村弓

失敗してもいいよ、何度だってやり直していいんだから。

ちゃんと自分の中に『夢』を持っていることが大切なんだよ。

不安になることだってあるよね。

でも、不満を口にするくらいなら、落ち込んでいる友達のために歌ってあげよう。

きっと友達は喜んで、また一緒に笑えるようになるよ」

自分を呼び覚まそうとするこの声はどこから聞こえてくるんだろうと不思議に思う少女。

異世界のたくさんの人と出会っていくうちに自分の中で眠っていた感情を取り戻していきます。

元の世界に戻るため、少女は両親が待っているトンネルに向かいます。

そのとき「決して振り返ってはいけないよ」と言われました。

少女も何となく感じています。元の世界に戻ったら、異世界のことを忘れてしまうかもしれない。

でも歩きながら、心に刻もうとするのです。

「忘れない。たくさんのこと、出会った人たち、絶対に忘れたりしない――

でもその願いは叶わず、トンネルを抜けた少女の記憶から異世界での出来事は消えてしまいます。

記憶は全て消えてしまいましたが、心に刻まれた感動までなくなってしまったわけではありません。

おそらく少女が元の世界に戻って劇的に性格や行動が変わるということはないでしょう。

それでも異世界で体験した感動や感銘を受けた出来事が、異世界に行く前の彼女より強くしたことでしょう。

そのちょっとした経験が、彼女のこれからの人生をより良いものにしていく土台になるはずです。

失敗をすることは悪いことじゃない。

失敗をすることで見える景色もあります。

力を抜いて、こけてしまったらまたゆっくりと立ち上がればいいのです。

そんなこれからの人生を歩んでいく上での大切なことに少女は気付いているはずでしょう。

私はもう「ゼロ」じゃない

はじまりのあさの 静かな窓
ゼロになるからだ 充たされてゆけ

海の彼方には もう探さない
輝くものは いつもここに
わたしのなかに 見つけられたから

出典: いつも何度でも/作詞:覚和歌子 作曲:木村弓

朝はただの朝じゃない。朝が来るたび、人はリセットされる。

実際に体内時計が狂ってしまった人は朝に日光を浴びるとリセットされると言いますよね。

朝は、ダメかもしれないと思った自分をリセットするチャンスなのです。

一旦「ゼロ」にすれば空いた部分を「新しい何か」で充たすことが出来るようになります。

これまで少女は遠い場所にばかり目を向けていました。場所が変われば新しい自分が始まるんじゃないか……。

自分が上手くいかないのを「環境」によるものと考えていたんですね。

でも少女は感じています。これまでと自分が明らかに違っていることを。

変わった理由を覚えていなくても、自分の心の中に「何らかの芯」が備わったことを。

大切なことを見誤ったり、見ない振りをしてはいけない。でももしも間違ってしまっても、やり直せばいい。

「いつも、何度でも――」

時には迷い、つまずいて立ち止まりながら何度もやり直せばいいのです。

そうすることで、確実に過去よりも前に進むことができるでしょう。

向こうの世界で過ごした時間は全然無駄になっていません。

関わった人達との記憶が消えていたとしても。

少女の心の深い所にしっかりと刻み込まれているのです。

私達にも同じことが言えるでしょう。

大体のことが端末1つで可能な現代。

自然を感じるのさえ動画サイトを見るだけで事足りるようになってきました。

しかしやはり、「体験する」ことの良さには叶いません。

少し手間に感じるかもしれません。

それでも遠回りが近道だったということもあります。

やらなければいけないことや常に時間に追われている人が多い社会。

そんな中でも少し時間を作って心の底から感じることができる体験をするのも時には大切でしょう。

もうひとつのテーマソング「いのちの名前」

「千と千尋の神隠し」は10歳の少女・千尋の冒険の物語です。

でも異世界では何日も経っていたのに、戻ってきたらまだ同じ日だったようです。

引越し途中だった千尋の家族はまた車に乗り込み、新しい土地に車を走らせます。

新しい暮らしに学校、友達……。忙しい千尋はせっかくの経験を忘れてしまうでしょう。

でも大切なのはどれだけ明確に物事を記憶しているかではありません。

その経験から自分の心に根づいたものを見つけられるかどうかではないでしょうか。

「いのちの名前」は「いつも何度でも」と両A面で発表された楽曲です。

こちらも「千と千尋の神隠し」のテーマソングとして起用されましたね。

もう少し木村さんの歌に癒されたいな……という方はぜひどうぞ。

誰もが通る「ジブリの道」

やっぱり引退撤回!

【いつも何度でも/木村弓】癒される歌詞の意味を紹介!映画「千と千尋の神隠し」の世界にリンクしてる?!の画像

多くの人の人生に影響を与えて来たであろう「ジブリ(株式会社スタジオジブリ)」作品。

宮崎監督は2013年公開の「風立ちぬ」で引退を表明し、巨匠が現場から姿を消した……と残念な思いでした。

でも、2017年にこっそり撤回していたようですね。ええと、何度目の撤回になるんでしょう?

でもそれだけ、毎回の作品に全精力をつぎ込んでいるってことですよね。

公開時期は明らかにされていませんが、スタッフの募集がされたということは真実味があります。

新作予告が流れる日を楽しみに待ちましょう。

上の画像の「スタジオジブリの歌」はこれまでの作品の主題歌を網羅しているアルバムで筆者も持っています。

それが知らないうちに「増補盤」が出ていました!

新たに「借りぐらしのアリエッティ(2010年)」「コクリコ坂から(2011年)」「風立ちぬ(2013年)」。

そして「かぐや姫の物語(2013年)」「思い出のマーニー(2014年)」の5作品の楽曲が追加されています。

楽曲ごとのDLでの購入も可能なので、追加された分を補完したい方にもオススメの1枚です。

この曲以外にも「ジブリ映画」の主題歌に迫った記事がありますので紹介させてください♪

数多くのヒット曲を生み出してきた、日本を代表するミュージシャン「松任谷由美」。「ユーミン」の愛称で、親しまれています。そんな彼女の1stアルバムに収録されている初期の名曲が、今回ご紹介する「ひこうき雲」です。歌詞のテーマや内容など、「ひこうき雲」の知られざる魅力に迫りたいと思います。