街は無機質なオブジェ
街は作って壊して 忙しいや
まるで鉄のオブジェさ
人の欲望のカタチに姿を変えて
ちょっと黙って もう騒々しいな
欲しいのはひとつだけ
ここにいるこの存在を認めてよ パライーソ
出典: 楽園都市/作詞・作曲:大石昌良
街は発展と共に新しい建物もでき、また古くなれば取り壊されます。
その忙しさはまるで血が通っていない鉄の塊のよう。
街の建物はその時々の人の欲望を具現化するかのように生まれては消えて。
無情なことにここでは自分に目を向けてくれる者などいません。
都会とは楽園のようでいてその実何と虚しいのでしょう。
そこにあるのは人混み、喧噪、時々事件…。
静かにしてくれ!
そして自分を見て欲しい。
その時放たれる言葉が「パライーソ」だったのですが、これはスペイン語で「楽園」の意味。
楽園ならその無機質な態度をやめて自分を見てくれ、そう高らかに叫ばずにはいられないのでした。
心の楽園はいずこへ
安息を断つシティライツ
近未来を謳う シティライツ
我が儘に闇夜を裂いて
夢だとか愛さえも 宇宙船がごとく飛ぶ
出典: 楽園都市/作詞・作曲:大石昌良
ここから2番。
都市の夜景は華やかですが、その目まぐるしさは時として人の心を置き去りにします。
文明の繁栄を象徴するシティライツなどはまさにその代表でしょう。
この「我が儘」は迷惑をかける人の代名詞にもなっていますが、ここでは転じて「鬱陶しい」ものを表現します。
シティライツの目まぐるしくチラつく様が鬱陶しいのでしょう。
その舞台では夢も、そして愛さえも目まぐるしく飛び交うシティライツが如く飛来し、手にしては消え去ります。
まさに人が安堵する間も与えない世界です。
満ち足りないあなたへ
ところで最近どうだい
うまく笑えてるかい?
もし空っぽのグラスならば
どんな夜で満たしましょう
出典: 楽園都市/作詞・作曲:大石昌良
ここで突然彼は問いかけてきます。
近頃満ち足りた暮らしを送っているか、と。
質問は恐らく同じように都会の暮らしにどっぷり浸かった人々へ向けて。
グラスが空っぽなのは現在心を満たしてくれるものがなく乾き切った状態。
そんな空っぽのシティライフをお過ごしでしたら器を満たして差し上げますが、さてどんな酒がお好みですか?
とまるで都会に暮らす者の悩みを先回りして気遣うような口ぶりです。
そう、満たされない思いを抱えるのは自分だけじゃないことを知っていたかのように。
虚しき楽園
涙 拭って流して あれおかしいな
ここは理想郷のはずさ
いつのまにかビルの森に心蝕まれ
なんでもあるようなフリして
なんにも見つからない街で
「答え」みたいな言い訳を探すのさ パライーソ
出典: 楽園都市/作詞・作曲:大石昌良
拭った傍から落ちるはまた涙。
楽園にも見えたこの場所も無機質なビルに囲まれ心は荒むばかり。
物が溢れる都会にあっても心の渇きを満たしてはくれないのだね。
そんな時に出す答えなどその場しのぎの言い訳とさして違わない有様だったのでした。
お願いだ、こんな僕を救ってはくれないか、パライーソ!