タイトルの意味
ここで「McDonald Romance」というタイトルの意味を確認しましょう。
「マクド」「ドロマンス」など略し方はそれぞれですが、つまりは「マクドナルドの恋愛物語」ということです。
マクドナルドは人の名前ですが、思い浮かぶのはファストフードチェーンでしょう。
四畳半からマクドナルドへ
かつてフォークソングがブームになった頃、若い貧乏な恋人たちは四畳半のアパートでデートしたものでした。
街に出かけると何かを買ったり、食べたり飲んだり、映画を観たり遊園地で遊んだり。
何かとお金がかかります。
お金を使わずに済む方法としては「家にいる」という選択肢が有効です。
当時の若者を象徴していたフォークシンガーたちもご多分に漏れず貧乏だったわけですね。
それを踏まえて、現代の若者はお金がないときに安いファストフード店でデートするという設定になっています。
- 1970年代フォークシンガー:四畳半
- 2010年代ロックミュージシャン:マクドナルド
フォークソングをリスペクトする意味で、こうした対比になっているのもおもしろいですね。
きらめく今を大切に
1番の続きです。
きっと永遠には続かないの
明日には明日の風が吹くでしょ
いつもの事さ、全て失うの
その前に、今を鮮明に焼き付けて
出典: McDonald Romance/作詞:Daiki Tsuneta 作曲:Daiki Tsuneta
箸が転んでもおかしい年頃は、長い人生においては短いものです。
歌物語の主人公も若い日々が長くは続かないことを悟っています。
お金がなくても、今は恋人がいて充実した時間を過ごしています。
大人になってお金が手に入ると、今度はきらめくような若さや甘酸っぱいロマンスを失うかもしれません。
だからそうなってしまう前に今を大切に生きよう!ということですね。
<風が~>という歌詞から、フォークの神様ボブ・ディランの「風に吹かれて」が連想されます。
やはりフォークソングをリスペクトしていると伝わってきます。
財布の中身でなにを手に入れた?
貴重な時間と経験
空っぽの財布に心は踊る
なぜ欲しいものはこんなにも
値がはるのでしょう
いつものことさ、手は届かないの
そんな日を、
今を鮮明に焼き付けて
出典: McDonald Romance/作詞:Daiki Tsuneta 作曲:Daiki Tsuneta
「お金がなくても若いから楽しいよね!きらめく今を大切に!」ということはわかりました。
ただ、若者だからといってお金とまったく無関係では生きられません。
それどころかお金に対して無欲な若者ではないことが明らかになります。
アレコレ欲しいものはたくさんある。でもどれもこれも高い。だから買えないという話です。
なけなしのバイト代は生活費に消えるのでしょう。
それでも「代わりに貴重な経験や充実した時間を手にしているから大丈夫」と解釈しました。
実際、こうした歌詞のメッセージがそのまま詰まった楽曲になっています。
貴重な瞬間を、バンドそのものが音楽で体現しているわけです。
売れないロックミュージシャンの青春物語
「マクド」はフォークソングへのリスペクトが随所にみられる歌詞でした。
一時代を築き上げたフォークシンガーと現代のロックミュージシャンとの対比も見どころです。
きらめく今を大切にしたい!というメッセージに「King Gnuというバンドの今」を重ねることができるでしょう。
ヌーはインディーズ時代から音楽通のあいだでは「すごい!売れる!」と話題になっていました。
細かな改名はありつつ、Srv.Vinci(サーバ・ヴィンチ)時代にアメリカツアーを行うといった活躍もありました。
ただ、実際には1枚目のアルバム「ランデブー」が発売されてからも、熱く騒いでいた人は少数だったのです。
名曲「マクド」が生まれたときも、まだヌーは売れていませんでした。
しかし、常田さんが目指す音楽はどうしてもたくさんのお金がかかります。
機材も、優れた音楽家、クリエイター、スタッフの協力も必要です。
オーケストラのように大きな会場で音楽を響かせたい!という常田さんの願いもあります。
そのためには売れないといけない!ということでヌーは始まりました。
バンドの貧乏時代でもヌーの4人はきらめく音楽を生み出していたのです。
それは「今が大切!」と強く思っていたからだと考えられます。
「マクド」はヌーの青春時代が刻まれた貴重な名曲といえるでしょう。