彼女たちは何に対して辛さを覚えているのでしょうか。
その中身をさらに詳しく解釈していきましょう。
彼女たちの苦悩の内容は、この歌詞に表れています。
彼女たちの現在地はいわば真っ暗闇。
アイドルという職業をしながら、路頭に迷っているのです。
大きな社会という場で、自分の立ち位置がまだ見えない彼女たち。
軽率な発言は出来ず、キャラクターを作り上げる日々。
それは必ずしも自分の意志と合ったものではありません。
自分を押し殺し、アイドルという立場に必死になっても失敗することはあります。
あぁ言えばこう叩かれ、こう言えば違うと言われ…。
彼女たちは八方塞がりの状態なのです。
それなら一層、何もしないでいたいというのが彼女たちの願いといえます。
何も興味が持てない
教室のカーテン 漏らしたため息に
何度も膨らみ萎(しぼ)む
つまらない授業もただのクラスメイトも
何にも興味が持てない
出典: ムズイ/作詞:秋元康 作曲:後藤康二(ck510)
彼女たちは現実を見ました。
今まではアイドルに華々しいイメージを持っていたかもしれません。
憧れの職業として考えていたキャラクターもいるでしょう。
しかし現実はそうではありませんでした。
辛く、過酷で、自分のしたいことは全く出来ない。
理想や自分の思い描いた世界ではなかったのです。
ここで一度彼女たちの期待は打ち砕かれてしまいます。
そのため、少々現実に対してニヒルになってしまったのでしょう。
何を見ても、聞いても、期待が持てない。
面白くなる気がしない。
そんな彼女たちの擦れた感情が、より一層自分たちの人生を苦しめているといえます。
生きることとは
目標を見出すこと
日常から逃げ出すには
一つしか方法がなかった
「優しい言葉なんか掛けないで 叶わない夢ばかり見てしまうから
はっきり言ってほしい すべては幻想なんだと」
出典: ムズイ/作詞:秋元康 作曲:後藤康二(ck510)
彼女たちは同曲で「死」すらほのめかしています。
歌詞で示されている、逃避行とはおそらく「死」でしょう。
また、彼女たちにはどんな慰めの言葉も届きません。
優しい言葉はじきに裏切られ、余計に傷つくだけです。
自分でも疑心暗鬼になり、辛い状態でしょう。
しかしこれを逆に考えれば彼女たちがまた生きることに前向きになる方法が分かります。
それは「生きる希望や目標」を見出すことです。
彼女たちはこうした希望や目標を見失ったからこそ、辛い状況に立たされています。
これの裏を返してみましょう。
再び自尊心を取り戻し目標を見つければまた前向きになれるということです。
悩みや辛さも付き物
ねぇどうして(人は) 死にたくなっちゃいけないの?(教えて)
誰だって (誰だって) 考えるでしょう?
私なんて (きっと) このままいなくなればいい (さよなら)
何を信じて生きるのだろう
出典: ムズイ/作詞:秋元康 作曲:後藤康二(ck510)
とはいえ目標や希望を取り戻すのは簡単ではないでしょう。
というのも、人の心の傷は簡単には癒えないからです。
期待を裏切られたことも然り。
次にまた希望を持つことは非常に難しいことです。
しかし生きるというのはそういうこと。
彼女たちは作中で、こうした困難を経て成長していきます。
辛くとも、「死」を連想しようとも。
彼女たちは作中でも、途中で逃げ出したりしません。
これはある種彼女たちが、それを受け入れているからだといえるでしょう。
結局のところ、どんな姿であっても私は私。
それを受け入れないことには、辛いのは自分自身なのです。
彼女たちは自分のことをある程度諦め、そして認めたのでしょう。
生きる理由を見つけるには
生きがいや目標を探す
人は誰でも変われるって
夢なんか見せないでよ
「諦めた方が楽だし…ごめん」
出典: ムズイ/作詞:秋元康 作曲:後藤康二(ck510)
彼女たちは常に迷っています。
表では明るい表情、可憐な佇まいを披露していても…。
心中は穏やかではありません。
人生に対して【ムズイ】とハッキリ断言しています。
それは彼女たちの置かれた境遇によるものでもあるでしょう。
しかし、少なからず誰でも人生に辛さを感じる時はあります。
どうしようもなくなり、もう辞めてしまいたいと思う時も。
そんな時は決まって夢や希望を失っている時です。
彼女たちもそれをきっと自分で把握しているのでしょう。
そのため、こうしてずっと心で問いかけ続けているのです。
「何か次につながることはないか。」
「自分が前向きになれるきっかけはないか。」
ネガティブな言葉の数々は、実はこうした願いがこめられているのでしょう。
生きがいや目標は、生きる理由につながります。