さぁ 固めて 焼き上がる
わたしの脳の枷を
熱る蜜に削ぎ入れて
脂たちが 体を離れ 浮き立ちて
焦げついたら 眠るような嵐から
編めるまで読み切るのだ
出典: 草木/作詞:長谷川白紙 作曲:長谷川白紙
ただ難しい言葉も理解したいですね。
実際は、この曲を聴く方それぞれに想像を膨らませるのが理想ですが、ひとつの解釈ということで意訳します。
自分自身の固定概念をエネルギー源として音楽を生み、煮詰まったらスランプから脱出するまで考え抜く。
長谷川白紙さん自身の音楽制作の過程を表しているのではないでしょうか。
飛躍した解釈かもしれませんが、何しろ固定概念を壊さなければ理解できない言葉が並んでいます。
大切なのは、この曲を聴く方が既存の考えから自由になることのようです。
2番の歌詞はこちら!
泡のリズムに溺れよう
空の頭 甘くなって
温度が耳を操るまで
目の裏 埋める泡のリズム
出典: 草木/作詞:長谷川白紙 作曲:長谷川白紙
難しい言葉と独自の考察が続いたので、少々疲れたかもしれませんね。
その疲れを吹き飛ばしてくれるのも、複雑かつポップなこの曲の醍醐味ではないでしょうか。
一般的な音楽から少し離れて、飄々とした活動を展開する長谷川白紙さん。
その楽しみ方を見習って、のんびり歌詞を見ていきましょう。
平面的ではなく、立体的な球体のように音を認識し、頭蓋骨に響かせる。
そういう音楽の聴き方について長谷川白紙さん自身がおすすめしているのでは?と解釈してきました。
続きです。
実際にそうやってこの曲を聴くと、音の共鳴した頭がリラックスし、耳が熱を帯びたのではないでしょうか。
さらに瞼の奥のほうまでグルーヴが伝わったら、それは長谷川白紙さんの狙いどおり。
あるいはビート(拍)の頭打ち、裏打ちといった音楽用語そのものを表しているのかもしれません。
つまり、泡のリズムとは裏打ちのファンキーなリズムのこと。
このように泡のリズムに溺れる方法を伝えてくれているのではないかと受け取りました。
拡大解釈
独自考察をさらに拡大解釈します。
世捨て人を表す四字熟語のような歌詞から始まったこの曲。
釣り糸を垂らしている場所は山の湖畔、それとも川のほとり、あるいは舟の上でしょうか。
これまで音を泡に例えているのでは?と考察してきましたが、実際に水の泡という可能性もあります。
しかも「草木」というタイトルです。
頭がリラックスすると感性が豊かになり、自然を意識しやすくなるという流れも考えられます。
文字通りの拡大解釈。
そうすると地球という生命の刻むリズムが聴こえてくるかもしれません。
草木の芽生え
この流れで恋の話?
闇から息潜め 導き出す恋情
さぁ 暴れて 焼き付けて
すべて均してみせよう
出典: 草木/作詞:長谷川白紙 作曲:長谷川白紙
地球のリズムを聴くという拡大解釈。
あなたが思い描いたイメージと違いすぎて、心が曇ったかもしれません。
その曇りを晴らすのもまたこの曲。
頭の中で鳴り響く音楽の話なのか、地球という自然と一体化する話なのか。
どちらでもないにせよ、このパートで提示されるのは愛しい想いです。
まさかラブソングだったとは想像できなかったのではないでしょうか。
正確には男女の恋愛ではなく、恋心のような感情を引き出すという話です。
誰の感情?ますます混乱するばかり。
そんな流れになることすら長谷川白紙さんにはお見通しです。
ここではサウンドも、歌詞も、この曲を聴く方の感情も激しくなるという意味かもしれません。
また1番のサビでも、徐々に悲しみを吹き飛ばすと宣言されていました。
いよいよ最後に渦巻いた謎を解決してくれるはずです。
形象とは?
たわみ曲がる内的形象
仇なすあなた不老
霞散らし遠のく円相
願うは草木萌動
出典: 草木/作詞:長谷川白紙 作曲:長谷川白紙
「形象」とは、一般的には「かたち、姿、イメージ」といった意味ですが、スコラ哲学の用語でもあります。
この説明だけで腑に落ちる方もいらっしゃるかもしれませんが、なおさら困惑する方も多いはず。
スコラ哲学の形象には「心の中で思い描くイメージ」と「そのイメージを具現化した概念」の2つがあります。
例えば音楽家は自身の心の中のイメージから実際の音楽を生むわけです。
心の中でイメージを浮かべる為には、外的な要因が必要になります。
こうした話がスコラ哲学では2つの形象としてまとめられているのです。
長谷川白紙さんはこの曲を通してスコラ哲学の形象を実践していたのではないでしょうか。
まず、ネガティブな感情を抱いている方がいるとします。
長谷川白紙さんはその方の感情を受け止め、心の中でイメージを膨らませて音楽を作り、届けるわけです。
その音楽を聴く方が悲しみを抱えたままだと、音楽そのものは平面的にしか感じられないかもしれません。
それでも歌もリズムも含め、立体的に音楽を楽しんでもらえたら、最終的には草木の芽生えを希望する。
そういう結末になっています。
草木の芽生えとは、この曲を聴く方の気が晴れる。音楽を多面的に聴くようになる。
自然のありがたさを感じる。命の尊さを知る。様々な解釈ができます。
それもこれもすべて形象。
長谷川白紙さんが草木の芽吹く季節に考えたことは「音楽による形象の具現化」だったのではないでしょうか。
あるいは、草木の芽吹く季節なら、泡のリズムを感じることができるはず。
そんな長谷川白紙さんの願いも伝わってきます。
さて、この曲を聴いたあなたにはどのような草木が芽生えたでしょうか。