透明な水がどんどん濁っていく
息ができない 苦しくって泳げないわ
出典: LOUD!~憂鬱をぶっとばせ~/作詞:miwa 作曲:miwa Naoki-T
人々が自身の主体性を大きな権威や他者、もしくは学園・職場などに預けてしまうと自由な空気は澱みます。
自分の心を売り渡すことは自身の人生を他人に明け渡すだけではありません。
時代の空気感までも不自由に汚染してしまい、やがて社会における自由の窒息を招きます。
2013年の楽曲ですが、あれから数年経て今こそ身近な問題として考えられるようになってしまいました。
ただそうした時事的な問題以外にもこの曲は触れているのです。
普段の学園や職場で自分の個性を押し殺して過ごしてしまううちに私たちは苦い思いをしています。
息苦しいというのは生きるのが苦しいことです。
窒息する想いに息を殺して過ごす毎日。
そんな日々は誰だって望んでいません。
miwaはラウドに叫びます。
あなたを揺らすラウドロック
miwaの「時代は変わる」
憂鬱なんかぶっとばして 窮屈な場所抜け出して
響かせてもっと愛の言葉 最大音量にしてよ
あなたの住む世界を 塗り替えてみせるから
ここにはもういられない
Let's get loud let's get out
I'm going to live my life
How about you 先に
行かせてもらうわ
出典: LOUD!~憂鬱をぶっとばせ~/作詞:miwa 作曲:miwa Naoki-T
miwaの言葉のひとつひとつに生命の火が灯ります。
ラウドロックの真髄に触れているような爽快感で感激するでしょう。
彼女は自分ひとりで恍惚感に浸っているのではありません。
あなたというリスナーひとりひとりを窮屈な暮らしから救い出そうと勇むのです。
そのために興奮するほどのラウドロックを響かせます。
ロック・ミュージックの真価は日常のささくれだった想いを爆発力で吹き飛ばしてくれる痛快さ。
「LOUD!~憂鬱をぶっとばせ~」は正にロック・ミュージックの真髄に迫ります。
不満を抱えながらも生活を変えるほどの勇気はない。
そんなあなたの背中を押してくれます。
音楽家としてリスナーの生活を明るく彩ることを約束してくれるのです。
ラウドロックの中で愛の言葉を叫ぶことを煽るmiwa。
デビュー当時の爽やかな透明感がある印象とはかなり違った魅力を表現します。
いつまでもアコースティック・ギターを抱えていて欲しいと願うリスナーもいたはず。
その中でこれほどガラリと変身することはよっぽどの勇気が伴うはずです。
その勇気を言葉に変えたのがこの箇所でしょう。
自分の人生を生きたいから私は先に行くと歌います。
彼女に変わらないことを願うリスナーに向けた言葉だとしたらかなり衝撃的なフレーズでしょう。
エレキ・ギターを初めて抱えたボブ・ディラン。
客席からのブーイングに「君は嘘つきだ。僕は君を信じないね」と応えた伝説があります。
エレキ・ギターを抱えてタッピング奏法までライブで披露したmiwaに客席は声援で応えていました。
時代は変わるとは正にこのドラマのことでしょう。
miwaの「変身」
準備は大丈夫?
例えば足をつかんで 引きずり降ろそうとしても
No one can stop! 簡単には捕まえられないわ
発想転換 コンセント差し替えて
イメージはできるか? プラスに変えてみせる
出典: LOUD!~憂鬱をぶっとばせ~/作詞:miwa 作曲:miwa Naoki-T
ロック色の濃いアーティストへの成長という命題を突き進めていく際に躊躇いを感じないと歌うmiwa。
制作陣の誰かが難色を示したときに、この歌詞をぶつけたかったのもしれません。
実際には非常にスムーズに「変身」を遂げました。
先に見たようにライブでもブーイングに曝されるような事件は起こりません。
それでもデビュー当時から彼女を知るファンとしては驚きが先にあったでしょう。
ロックにも色々ありますが、miwaが選んだのはラウドロックですから。
アコースティック・ギターというコンセントやプラグを必要としない楽器からの移行。
エレキ・ギターを抱えてギター・アンプのコンセントを電源タップに刺します。
誰に止められないのだと歌い切る彼女。
コンセントとプラグを差し替える描写があります。
ギター・アンプの電源コードにももちろんプラスとマイナスがあるのです。
巨大な電力を使う大型のギター・アンプの場合、刺し口のプラスとマイナスを間違えると痛い目にあいます。
ボーカル・マイクが電流を拾って軽い感電をしてしまうのです。
日頃、通っているライブでもこのプラスとマイナスに関しては毎日神経質に確認しています。
より大きなギター・アンプを使用するホール公演ではなおさらです。
彼女はこのロックあるあるネタを歌詞に忍ばせます。
自分の意識をプラスに持ち上げるというラインの中でリハーサル風景をなぞっているのです。
意識の準備は大丈夫? と呼び掛けます。
すべてをプラスの方向に振り切ってしまえと叫んでいるのです。
自分の限界を超えよう
歪みを上げてクライマックスへ
現実なんかぶっ壊して 限界なんて吹き飛ばせ
かき鳴らせもっと愛のメロディー ゲイン上げて歪ませてよ
斜めに見るんじゃなくて あえて真正面から
すべては自分次第だわ
Let's get loud let's get out
I'm going to live my life
How about you ダメね
ハキダシてごらん
出典: LOUD!~憂鬱をぶっとばせ~/作詞:miwa 作曲:miwa Naoki-T
また勢いのあるサビの箇所です。
あなたであるリスナーを精一杯煽ります。
縛られた日常生活を打破しよう。
自分で自身の限界を決め込まないで先を目指そう。
そして愛の表現をメロディーに乗せてと歌います。
歌詞中のゲイン(GAIN)とはギター・アンプのツマミの種類です。
このツマミを上げることでギター・アンプは激しく歪みます。
ラウドロックですからエレキ・ギターはクリーントーンではなく歪みが大事です。
社会に対して自身をきちんと対峙させるためには正面から立ち向かうことが必要。
この先の人生をよくするのもだめにするのもあなたに掛かっています。
あなたがあなたの人生を背負うことをmiwaは望んでいるのです。
大きな音で飛び出せ。
私は自分の人生を歩むから。
どうかあなたも自分の鬱屈した想いを吐き出そうと歌います。
miwaが先頭を行くので私たちはついて行くだけです。
いよいよクライマックスに向けてヒートアップします。