行かないでひとこと
ひざまづいても
心の奥のさびしさ
いやせはしないのね

出典: さよならだけは言わないで/作詞:五輪真弓 作曲:五輪真弓

主人公の女性の愛は、男性にとって重すぎたのでしょうか?

愛する人を思うが故に、時に愛は暴走します。

好きな人を離したくない。他の誰にも渡したくない。

それはこの世にたった1人だけの愛すべき男性だから。

独占欲というものが愛を違う方向に持っていくからでしょうか?

別れの予感におののく女性は、必死の思いで男性にしがみつこうとします。

悪い所があるのなら、全て男性の気に入るままにしてみせます。

女性はそこまで懇願して男性にすがったのです。

しかし、その努力も報われませんでした。

やればやるだけ、男性が遠くへ行ってしまうのが分かったのです。

女性の思いがもはや片道通行になっていることを嫌というほど気付かされたのです。

尽くすことがいけないの?

歌詞中には、別れの予感を思わせる箇所はありません。

よって、この曲は歌詞からそのことを想像することになります。

女性が心底、男性のことを好きだったのは間違いありません。

そうでなければ、すがりつくほどの哀願のポーズも取れないはずだからです。

恐らく、女性は男性に尽くして尽くし切ったのでしょう。

それが愛の裏返しだと、疑うことなく行っていたのです。

ところが、男性の気持ちを察することまでは出来なかったようです。

女性の純粋で一途な思いが、男性の本心を見破る勇気を出現させなかったのかもしれません。

女性の一途な思いは、男性から見たら重い愛に受け取られてしまったのでしょう。

愛するが故にとり続けてきた行為が、逆に男性にとったら重荷になっていた。

尽くすことの辛さを知ってしまい、女性の心はどんどん深く悲しい世界へ落ちてゆくのです。

残酷な現実

思い直してほしい

今さよならだけは言わないで
そんな言葉を
幸せおきざりにたったひとつ
そんな言葉を

出典: さよならだけは言わないで/作詞:五輪真弓 作曲:五輪真弓

女性の瞳には、みるみるがあふれてきます。

好きだった男性が、今にも別れの言葉を投げかけそうだからです。

あんなに楽しかった生活を、いまさら簡単に捨てられるはずがない。

それなのに、どうしてこんなに冷めた瞳になってしまったのか?

女性は、すきま風が吹き始めた原因について思い当たる節は感じていました。

しかし、それを思い返すことはこの愛を終わらせることになってしまう。

女性の心は、本能的にそう悟りそんな思いを遮断したのです。

そんな努力も、これから起こり得そうな残酷な現実に女性の心は張り裂けそうになるだけでした。

女性の切なる思い!

ふたりの愛の思い出にしたくない
今さよならだけは言わないで

出典: さよならだけは言わないで/作詞:五輪真弓 作曲:五輪真弓

「今ここで別れてしまったら、これまでの暮らしは何だったの?」。

女性の心は張り裂けばんばかりにそうつぶやきます。

女性にとって、男性の気持ちが自分から離れてゆくことがどうにも受け入れられないのです。

あんなにお互い、好きあっていたはずなのに。

誕生日には、お互いバースデイケーキにロウソクを灯したり。

記念日には、2人で仲良く遊びにも出かけたし。

どちらかが風邪で寝込んだ日は、一生懸命看病もしたはずなのに。

そんなかけがえのない日々のことを、思い出にして生きてゆくなどできるはずがない。

女性は、心の底から男性の宣告に対して抗ってみせるのでした。

そして、曲は1番のサビの歌詞を歌い上げて終わってゆくのです。

愛はまぼろし

あの楽しい日々は愛のかげぼうし
夢だというの
この街の角に春が来ても
明日からはひとり歩くわたしの前に
うしろすがたのあなたが見えるだけ

出典: さよならだけは言わないで/作詞:五輪真弓 作曲:五輪真弓

最後のサビの部分を歌い上げることによって、この曲の演奏は終了します。

もし、ここで男性の口から別れを告げられたら、これから生きてゆくことに何の幸せも見いだせくなるでしょう。

季節が冬から春に変わっても、女性の心は冷たい北風が吹きすさぶだけでしょう。

何を話しかけても、誰も返事をしてくれない。

孤独な毎日が待つだけなのです。

女性はそう悟りながらも、男性からの宣告におびえる今を過ごすのです。

美しいピアノのメロディにのって、この曲は静かに終わってゆきます。

愛の終焉を歌う