「君」を失ったことを信じたくない想い。それでも「君」をわざと突き放すかのようについた嘘。
1番の歌詞には、そんな切ない「僕」の姿が描かれていました。
「君への嘘」の2番の歌詞にも、涙を流さずにはいられない「僕」の気持ちが詰まっています。
泣くことしかできない
この悲しみと向き合うことは
誰のためにもならない
いっそ憎んでしまえたのなら
救われていたのかな
真実味の無い歌が胸を打ち
涙流しているだけ
出典: 君への嘘/作詞:VALSHE 作曲:doriko、minato
1行目の歌詞にある「悲しみ」とは、「君」を失ったことを指しているのでしょう。
「君はもういない」という現実と向き合わなければならない「僕」。
「どうしていなくなってしまったんだ」と「君」を憎むことができたら楽になれるのかもしれません。
しかし「僕」は想像するだけで、実際に「君」を憎むことなんてできないのです。
「僕」はやり場のない感情を落ち着かせるために音楽を聴いているのでしょう。
しかしどんな曲を聴いても、どんな歌詞を見ても、その言葉は自分を救ってはくれません。
今の「僕」の気持ちを本当に表した曲なんて、どこにもないのです。
「僕」は音楽を聴きながら、ただ泣くことしかできません。
もう帰ってこないとわかっているけれど
いまから過去にするよ
君が願ったその通りに
「待っていなくていいよ」
もう戻らないどこにもいない
わかってるから
出典: 君への嘘/作詞:VALSHE 作曲:doriko、minato
「君」は自分がいつか「僕」の前からいなくなることをわかっていたのでしょう。
「僕」に対して「早く自分のことを忘れてほしい」と願っていた「君」。
「僕」はその願いを叶えようと、1行目の歌詞にあるような宣言をしています。
「君」と過ごした日々を思い出の中にしまおうとしている「僕」。
しかし簡単に忘れられるはずもありません。
頭では現実を理解しているのに、心はまだ現実を受け入れられない。
そんな「僕」のやるせない気持ちが、このパートの歌詞に表れています。
別れの言葉は自分への嘘
「君」を失ったことを受け入れきれない「僕」は、自分に対していくつも嘘をついていました。
「君への嘘」のラストでは、涙を隠して笑顔で嘘をつく「僕」の姿が目に浮かぶはずです。
思い出す「君」の口癖
自分なんていなくなっても大丈夫だろうって
口癖のように言っていたけど
まるで何も無かったように笑顔崩さなければ
満足してくれる?
出典: 君への嘘/作詞:VALSHE 作曲:doriko、minato
「君」は昔、「僕」に対して1行目の歌詞にある言葉をよく言っていたようです。
「君」は自分のことを価値のない人間だと思っていたのでしょう。
「僕」がどれほど「君」を大切に想っていたかも知らずに。
3行目と4行目の歌詞には、「僕」からの皮肉のような言葉が書かれています。
実際に「君」に言うことができたら、きっと「君」は困ったような表情をしていたことでしょう。
しかしそれを確かめることは、もうできません。
「僕」が悲しみを笑顔の裏に隠そうとしている様子が、このパートの歌詞から想像できます。
その手は二度と届かない
何かを隠すように庇い続けて生きることで
守っていた弱さも見抜けなかった
触れることも叶わない
出典: 君への嘘/作詞:VALSHE 作曲:doriko、minato
ここまでの歌詞から、「君」はいつも笑顔を浮かべていて、本音を言わない人だったと考えられます。
「君」が本心を口にしなかった理由が、1行目と2行目の歌詞につづられているのではないでしょうか。
「君」は気丈にふるまうことで、心の底にある弱い自分を見せないようにしていたのです。
弱みを見せて「僕」を失望させたくなかったのでしょう。
もちろん「僕」は「君」のどんな一面を見ても、がっかりすることなんてなかったと思います。
それでも「君」は「僕」に見放されたくなくて、必死に「強い自分」という嘘をついていたのでしょう。
失ってから始めて、「僕」は本当の「君」の姿に気づきます。
「気にしなくていいよ」と言ってあげられたら。手を差し伸べてあげられたらどんなによかったか。
後悔しても、もう「僕」の手が「君」に届くことはないのです。