なぜ満たされない?
DECO*27の代表作として知られる「妄想感傷代償連盟」。2017年4月3日に公開された楽曲です。
中毒性のあるリズムとキャッチーなメロディは、DECO*27の真骨頂ともいえます。
そして、サウンドだけでなく言葉も洗練されているのがその特徴です。
主人公は何かを求めていますが、一向に満たされることはありません。
もどかしい歌詞にはどんな意味が込められているのでしょうか?
また、独特な言葉遣いは何を表現しているのでしょうか?
徹底解説していきます。
MVの描写に込められた意味
主人公の内面を描写
こちらは「妄想感傷代償連盟」のMVです。
主人公と男の子との関わりが描かれていますね。
一見すると「赤ちゃん・ぬいぐるみ・動物」などの美しいイラストですが…。
時折、「ナイフ・首を吊る縄」といった狂気を感じさせるアイテムも登場します。
女の子の心に潜む光と闇、二面性を表現しているのではないでしょうか?
最後には文字が画面を埋め尽くして終わります。
これは、彼女の心のざわめきの大きさを意味しているのかもしれません。
食事が意味するのは?
そして、何度も登場する「食べ物」の意味も重要です。食事は「愛着」と密接しています。
愛情不足を補うために過食に走ったり、愛情を拒絶するあまり拒食になると考えられているのです。
食事シーンからMVが始まるのは、女の子が愛に飢えていることの象徴だと思われます。
それでは、歌詞からも紐解いていきましょう。
積み重なる不安
まずはDECO*27らしい韻を踏んだ言葉遣いで、主人公の胸の内が語られます。
感じ取れるのは、吐き出すことなく積み重なった不安。
主人公はどんな葛藤を抱えているのでしょうか?
息苦しい原因は…
言っちゃった
もう一時ちょっとだけ隣に居たい
いやいやまさか 延長は鬱雑い
御免なさい 帰ってね
二酸化の炭素 きみの濃度
浸ってたいよ 泥沼の夢に
身勝手だって言われてもペロリ
不安じゃない 未来はない
その顔に生まれ変わりたいな
出典: 妄想感傷代償連盟/作詞:DECO*27 作曲:DECO*27
主人公は素直に胸の内を表現できない性格のようです。
思い切って「離れたくない」と本心を伝えるも、願いは届かず気まずい雰囲気に…。
愛情が欲しいのに手に入らないもどかしさが歌われています。
そして、今の状況を「二酸化炭素」と表現していますね。
空気中の「二酸化炭素」が濃くなれば、息苦しさを覚えるでしょう。
彼女は今、酸欠状態のような苦しさを味わっているのです。
そして後半では、さらに苦しい恋の沼に溺れることを望んでいます。
最後の行ではなぜ生まれ変わりたいと言っているのでしょうか?
おそらく、今の自分のルックスに自信がないのだと思われます。
彼好みの顔に生まれたかった。今の自分の顔を好きになれない。
彼に愛されないのは、自分に魅力がないからだと悩んでいます。
相手の理想の顔立ちで理想の性格になっていれば、もっと愛情を貰えるのかもしれない。
そんな妄想で寂しさを紛らわそうとしているようです。
理想の自分が強くなってしまうと、現実とのギャップが生まれてしまいます。
ギャップの差が開けば開くほど、自信はどんどんなくなっていってしまうでしょう。
自己嫌悪が強くなってしまって、死んでしまいたい…と思う事もあったのかもしれません。
そんな気持ちをもってしまってごめんなさい、という意味で歌詞7行目の言葉が出てきたのかもしれません。
最後の言葉が「食事」の擬音とかけて、可愛らしい感じになっています。
この擬音のおかげで、そこまで深刻には考えていないというイメージ。
軽い感じで死にたいな、と思っていたと予想できます。
少しずつ狂っていく
知っちゃった
大嫌いを裏返したとて
そこに大好きは隠れてないと
叶えたい この想い
甘え過ぎ太る心回り
“ファット想い→スリム”を掲げよう
出逢った頃と同じ様に成ろう
思い笑描く理想狂
血走る願いはやがて安堵
出典: 妄想感傷代償連盟/作詞:DECO*27 作曲:DECO*27
主人公は君に嫌われてしまったようです。
しかも、ただの「嫌い」ではなく「大嫌い」と表現しており、2人の間に大きな溝があると推測できます。
「憎しみは愛情の裏返し」という言葉があります。
単純にこの原理に当てはめれば、「嫌いが大嫌いになる」と同時に「好きが大好きになる」はず。
でも実際に主人公から見た2人の関係は、「大好き」とはほど遠いようです。
君に愛されたいという願望はどんどん大きくなります。
過食でお腹周りが太ったかのように、「心回り」と表現しているのでしょう。
そして、前述したように過食は愛情不足を意味します。
後半で歌われているのは、女の子の不安定な情緒。
嫌われる前に戻りたい。やり直したい。理想を思い描くほどに狂っていく様子が読み取れます。
最後の行の歌詞からも主人公の愛に飢えて必死な様子が想像できます。
どうして愛してもらえないのか。
初めて会った頃はそんなことなかったのに…。
愛に飢えて暴走気味の主人公は君との出会いを思い返します。
おそらく最初の出会いの時は相手も優しく接してくれていたでしょう。
しかし主人公の異常なまでの愛情表現に冷めてしまった。
そんな想像もできそうです。
だんだんと離れていく君との距離に主人公は狂ってしまいそうなほど恐怖を感じています。
しかし内向的な性格のため正面から相手に自分の気持ちを伝えることはできません。
では、どうするのか。
妄想の中に逃げ込んでいるのでしょう。
歌詞の下から2行目の漢字の使い方からしても、何やら異常な雰囲気が読み取れます。
妄想の中だけでも自分が満足できるようにしたい。
ここまで狂気じみてくると、そのうち妄想と現実の判断がつかなくなりそうです。