【時をかける少女/原田知世】時を超えて愛される一曲がセルフ・リメイクで再び注目が集まる？！歌詞を解釈

まず大前提として、オリジナル発売当時と後年のカバー版発売時とでは、原田知世の歌い方が変わっています。何がどう変わったのか？

1. 歌が上手くなっている
2. キーが低くなっている

この2点は、各々がバラバラではなく、各々がシンクロしています。

つまり、

• 原田知世は自分に合ったキーを見つけた。

その結果、

• 歌唱力が向上した。

原曲キーを下げることは、ともすれば衰えであり退歩とされがちですけれども、そんなことはありません。

その人に合ったキーを見つけることは、プロであろうとアマであろうと大事なことです。ぼくたちも心がけたいものです。 

2017年最新版の「時かけ」を聴いてみましょう。

原曲よりキーは下がっていますが、以前はさらに低いキーでしたから、その時々のリメイクに合わせて、最適なキーを選んで歌っていると思います。

周りがよく見えていて、自分もよく見えていて、適切な判断を下せる。そういう意味では賢い人です。

そして最新版のアレンジは、ストリングス（弦楽器）が主人公。弦の音色で聴かせてくれます。生音重視の傾向がより強まったアレンジですね。

さあ、ユーミンの歌詞を読んでみましょう。

歌詞だけ読むと、男を欲しがる独女みたいで怖いですが、さわやかなメロディに包まれてまるで気になりません。

それより気になって仕方ないのは、ちょっと古風な「さまよい人」という表現。これが後ろにどうつながるのか？

OH！Romantic！メルヘンの世界！

そうかそうか。「さまよい人」は「時をかける少女」になるのか。

知世ちゃんは甘い甘い夢を見ている。あるいは白日夢なのかもしれない。夢うつつというやつですな。

夢見心地な乙女を想起させる詞世界は、映画本編で繰り返し描かれる時間旅行（タイムトラベル）とも連動しており、原田知世の神秘性を高めることに成功しました。

普通の女性のように見えて、謎めいても見える原田知世のキャラクターは、この大ヒット曲によって準備されたものだったのです。今の彼女が歌っても違和感がないはず。まさに「時をかける少女」だ！

脱皮しようと代表曲やヒット曲を封印する歌手も少なくない中、原田知世はむしろセルフリメイクを重ねながら、原田知世像の再構築を図ってきました。

まるで基礎の出来上がった焼き物の生地に、釉（うわぐすり）を丁寧にかけていくように。

彼女の音楽制作は質の高い手仕事です。彼女の歌は聴きこめば聴きこむほど深みを増します。それでいてミステリアスさは損なわれず、いくら聴いても飽きがきません。

謎めいたナチュラルメイクの原田知世。来たるべき次のセルフカバーでは、どんな顔を見せてくれるでしょうか？